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食事介助①/支援者が権力者になるとき
福祉サービスを提供する事業所では、食事介助という支援があります。しかし、なかなか食が進まない人がいます。支援者は、利用者の食事が進まないと困ります。困ったあげく、支援者は権力者になってしまうことがあります。
高齢者デイサービスの食事介助
私には、高校生と大学生の娘がいます。娘たちは、家の近所にある高齢者デイサービスでアルバイトをしています。仕事内容は、一般的な身体介助、フロア管理、記録作成、調理、清掃、多岐に渡ります。娘たちはその中でも食事介助が一番楽しいと言います。また、その反面、食事介助では、対応に困るようなこともたびたび起こるとも言います。
娘たちは、食事中に利用者と交わす会話が楽しいそうです。おかしいことやビックリする言葉が飛び出していつも笑っているといいます。しかし、ときどき応対に困ることがあるようです。
困ってしまったできごと
なかなか食が進まないおじいちゃんに声をかけていたときのことです。そのおじいちゃんが突然怒り出して言ったそうです。
「きみらは、わしに食べろ食べろというが、きみらは一口も食わんじゃないか。きみらも、一緒に食べなさい。」
また、あるおばあちゃんは、心配をして声をかけてくれると言います。
「あなたたち、ご飯を食べなくて大丈夫?体に悪いわよ。」
娘が「ありがとうございます。あとで食べるから大丈夫です。」と答えると、そのおばあちゃんは、さらにこう言いました。
「それじゃ、冷めちゃうじゃない、〇〇さーん(管理者の名前)、この子たちにきちんとご飯食べさせなきゃだめじゃない。」
また、おばあちゃんからの提案にも困ると言います。あるおばあちゃんは、こう言いました。
「私、こんなに食べられないは、あなた、ちょっと食べてくれる?」
私の娘が、まだ高校生と大学生ということで、かわいがってもらっているようです。おじいちゃん、おばちゃんが子どもたちのことを心配してくれています。
支援者が権力者になるとき
また、一番最初のおじいちゃんが言っていることは、福祉サービスを提供する者として考えなければいけない言葉です。
私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。今の私は、理事長です。しかし、以前は直接支援にかかわる支援者でした。その業務の中には食事介助がありました。食事介助は、難しい業務です。支援者は、食事介助において権力者になってしまうことがあります。
食事は、生命に直結する支援です。支援者は、食べさせなければいけない、食べさせよう、食べなさい、という意識が変化します。支援者がムキになればなるほど利用者は食べてくれません。食べてくれないと支援者はさらにはムキになり、力で食べさせようとします。こうして支援者は権力者になっていきます。
(つづく)