日々のこと秋

ジーンズは青春のシンボル

お袋が入居する老人ホームでのことです。お袋に会いに行った帰り際、私の後ろ姿を見て、お袋が言いました。
「あんた、ズボンのポケット破けているわよ、新しいの買いなさい」
たしかに、ズボンの後ろのポケットの角が破けています。しかし、私の中ではまだ許容範囲です。

私が中学生の頃のことです。あの頃の私にとってジーンズは青春のシンボルのような物でした。自分は大人になっても絶対にジーンズを脱がない、そう心に誓っていました。

ある日、ジーンズのひざのあたりがちょうどよい具合いに擦れてきました。嬉しかったです。ひざの擦れ具合をちょうどよく作ることは難しいことです。ひざが擦れる前にジーパンの内腿あたりが擦れてきます。これは悲しい結果です。

ところが、お袋に洗濯をしてもらったジーンズは、内側からあて布をしてあり、きれいにひざが縫われていました。ショックでした。さらに後ろを見るとポケットが一つありません。お袋は、ポケットの一つをはずしてあて布にしていました。お袋は言いました。
「ポケット、二つ、使わないでしょ」

私は、それからしばらく、お袋と、口をききませんでした。お袋は今でもそのときのことを覚えていて、あの頃のおまえは、反抗期ですぐに怒ってたと言います。

たぶん、この状況では、反抗期でなくて怒ると思います。

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