よろず相談/遠回りをさせないように
「相談」という仕事をするうえで、注意しなければいけないことは、相談したいと思っている人を、遠回りさせないことです。近年、社会の多様化に伴い、福祉サービス、福祉制度は専門的になり、より専門分化されました。上手に使えば便利です。しかし、そこまでは遠い道のりです。
制度が整った反面複雑になったサービス
私は、障害福祉サービスという分野で事業所の経営をしています。制度が整ったおかげで、私が働き始めたころ、善意で対応していたことが、福祉サービスとして提供できるようになりました。つまり対価がもらえるということです。
しかし、制度が複雑になり、専門分化されたため、その使い方は、私たち専門職ですら戸惑うことがあります。また同じ福祉でも高齢福祉サービスになったらまったくわかりません。
制度を使うための窓口でのできごと
私のお袋は、特別養護老人ホームで暮らしています。ほとんどのことはホームの職員が対応してくれます。おかげで大変助かっています。しかし、家族がしなければいけない行政手続きがあります。
以前、2つの手続きをするために行政窓口に行きました。幸い、待合に人はなく、私が次の番であることはすぐにわかりました。それでも番号札をとって待っていました。ほどなくして呼ばれ、カウンターで説明を受けて手続きを済ませました。最後に、もう一つの手続きについて相談をすると、さっきとは別の機械を指差し、その番号札を取るように言われました。
私は言われたとおりに番号札を取りに行きました。その瞬間、ピンポーンという音とともに、その番号が呼ばれました。カウンターに目をやると、今さっき、対応をしてくれた担当者が、隣の席に移って私に言いました。「こちらにどうぞ」
使うサービスの数だけ、行政機関の担当窓口が分化されて増えました。サービスが充実した結果、複雑になっています。
福祉サービスを利用しよう、相談しようと思っている人は、その分野の素人です。どこで何を相談したらよいのか、どう手続きをふんだらよいかわかりません。サービスを提供する側は、その状況を踏まえた素人目線の案内や対応が必要です。
必要なのは「よろず相談」
専門分野が増えて専門家が増え、それに応じた相談窓口が増えました。そこで対応をする人は、その道のスペシャリティです。行政は、相談窓口が増えるということについて、より専門的な対応と、困っている人を取りこぼさないと説明します。しかし、素人が相談するには、数あるうちのどこの誰に相談をしてよいかわかりません。
私の法人の事業所は、住宅街にある小さな事業所です。専門家がそろった総合的な施設を百貨店に例えるならば、私の法人の事業所は、町のスーパーです。幅広い品ぞろえで、速やかなお取り寄せや、出張もします。
また、相談を受けていると、まったく場違いな相談を受けることがあります。そういうときは、私たちに相談をしてくれたことに感謝して、解決の糸口を探します。何か相談をして、その相談窓口の人に他の窓口を紹介されると、一気に気分が消沈してどうでもよくなります。
必要なのは、何でも相談できるよろず相談の窓口です。
多職種連携
福祉も医療も、多職種連携がだいじだと言われます。私たちのような町なかの事業所は、業界間の連携だけでなく、電気屋さんや植木屋さん、飲食店などとも連携します。
今年の春に町内会長さんが新しくなりました。あいさつに行こうと思いながら、後回しになっていました。やっとお会いできました。また新しいお付き合いが始まり、新しい情報が集まります。
私たちの役割は、町内会の役割と一緒です。困っている人が遠回りしなくてすむように、それを第一に考えます。