電話にでたらいけないの?
私がグループホームを訪問すると一人の入居者が私に言いました。「髙橋さんごめんなさい、もう電話にでませんから」
私は、障がいのある人が利用する事業所を経営しています。その中の一つ、障がいのある人が支援者と一緒に共同生活をするグループホームを訪問したときのできごとです。
少し前のことです。私がグループホームを訪ねると、私の顔を見るなり入居者の一人が「髙橋さんごめんなさい、もう電話にでませんから」と繰り返し言い続けたことがありました。詳しく話を聴くと、グループホームの固定電話に電話がかかってきた際、その入居者が電話にでたら担当の支援者に怒られたというのです。
入居者は電話にでてはいけないの?
私が経営する法人のグループホームは、障がいのある方が6人入居しています。支援者は、忙しい時間帯をのぞいて1人です。入居者の話では、電話が鳴っていたけれど、誰もでないので自分がでたと言っていました。
グループホームで入居されている人の中には、電話応対ができる人がいます。しかし、電話にはでたいけれど応対ができない人もいます。そのため、支援者は電話にでないでください、電話でてはいけませんと、一様に入居者に話をしていました。
支援者は、入居者が電話にでるとトラブルになると思い込んでいます。また、利用者が電話にでて何かあったらどうするんですか、と言います。
私がグループホームの泊まり勤務をしていたときにはこんなことがありました。
「たのむ、でないでくれ…」
その日の私は、お腹の調子が悪く、何度もトイレに行っていました。グループホーム勤務でトイレに行くというのはとても勇気がいります。支援者がトイレに入っている最中に利用者が転倒したり、起きてはいけないことが起きたりします。その日は、電話がかかってきました。
リビングの電話が鳴っていたので、私はトイレの中で苦しみながら願いました。
「たのむ(電話に)でないでくれ、でないでくれ」
しかし、私の願いはかなうことなく入居者の一人が電話にでました。
「あっ、もしもしー」
「そう、でーす」
「ハイ、ハイ、ハーイ…」
私があわててトイレからでたときに電話が終わりました。私は、電話にでてくれた入居者に聞きました。「誰から?」
入居者は、言いました。「大丈夫でーす」
グループホームの電話は家の電話です
今は入居者が電話にでたからといって、それを怒るような支援者はいません。それでも以前に電話にでて怒られた入居者は、それを気にして電話にでません。電話が鳴り続けていると心配しながら我慢していると言っています。
グループホームは、入居者にとっては家に代わるものです。家の電話が鳴っていればでなくちゃいけないと思います。それを頭ごなしに「電話にでてはいけません」と言ったり、入居者が電話にでたら迷惑だと決めつけることはまちがっています。だいじなことは、入居者にどのように伝えるかということです。また、電話が鳴ったときどうしたらいいかという練習をします。
障害者差別解消法
2013年に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が制定されました。また、昨年に改正がありました。それでも障害福祉サービスの事業所では、いまだ事業所や支援者本位のルールが横行し、それらは利用者ではなく、事業所や支援者にとって合理的なルールになっています。そこで、私の法人では今年度の目標の一つに「障害者差別解消法の学び直し」を掲げました。
まずは条文の読み込みです。