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とりちがえ事件②/事件が起きたら目的論で考える
昨日は、利用者同士の靴のとりちがえ事件について書きました。今日のとりちがえ事件は洋服です。旅行で温泉から出たら洋服が一式なくなっていました。これはレアケースです。また、このころの私は目的論を知らなかったためにまちがえた本人を責めていました。
法人の成り立ちと課題
私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。私の法人の成り立ちは少し変わっていて、まったく別々の小さな無認可事業所が集まってできた法人です。そのため設立後しばらくは、同じ法人の中でも知らない人がたくさんいました。そのころの課題は、法人内の連携を強めることでした。
そこで、法人内の連携を強めるために1泊2日の法人全体を実施しました。行き先は、1日目が箱根園、2日目が富士急ハイランドでした。また、参加者は、利用者が50人弱、支援者が20人の大旅行でした。その旅行で、悲劇が起きました。
法人全体旅行の温泉で…
旅行では、支援の体制を考えてホテルの部屋割を、常に支援が必要な人、一部支援が必要な人、支援がほとんど必要がない人で組み、そこに支援者が入り、一部屋が5~6人のかたまりになりました。ただし、その中にはあまり面識のない利用者と支援者が一緒になっていました。
この部屋単位で温泉に入りました。しかし、部屋単位とはいえ温泉に入るタイミングはみんな一緒です。さらに、そのときは他にも障がいのある人達の団体が温泉に入っていました。そのため大浴場は大混雑でした。同じ法人の中でも知らない人ばかりです。そこにまったく別の団体が混ざってしまい、いったい誰が同じ部屋の利用者で、誰が同じ法人の利用者なのか区別がつかなくなりました。
やがて、支援の必要がほとんどない人たちは、どんどん温泉からあがり、自分たちで時間をすごし始めました。大浴場に残ったのは、支援がたくさん必要な人と支援者です。そのとき、脱衣所で待機していた支援者が浴室にいた私を呼びました。私が脱衣所に行くと、別の支援者が腰にタオルを巻いただけで困り顔で立っていました。その支援者の服が一式なくなっていました。
洋服をとりちがえる
幸いそのころには、私の法人も、もう一つの団体も人数が半分ぐらいになっていました。そこでもう一つの団体にも協力いただいて、脱衣所に残った服と入浴をしている人の照らし合わせをしました。その結果、私の法人の利用者の服が一式、かごの中に残っていました。
服が一式なくなった支援者は、細身のMサイズでした。残っていた服一式は、LLサイズでした。
目的論で考える
洋服を間違えてしまった利用者は、ふだんは全部自分で管理できていました。しかし、温泉があまりの大人数で混乱してしまったのだと思います。
利用者の中には、支援の受け方を知らない人がいます。ふだんは支援が必要なく生活できます。それが大きく崩れるたとき、自分で何とかしなくてはいけないと思います。その結果、騒ぎになることがあります。
そのころの私は、目的論を知りませんでした。そのため「なんでそんなことしたの、なんでおかしいと思わなかったの」そんな注意をしていました。しかし、利用者からしたら誰に助けを求めたらいいかわからず自分で解決した結果です。そこに注目をしなければいけませんでした。
また、私たち支援者は、誰もが上手にSOSを出せるわけではなく、多くの場合、困ったときは自分なりに最善の対処をしているということを知る必要があります。ゆえに、ちょっと困っているかもしれない、その表情、そのサインを見逃さないようにしなければいけません。