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薬を飲んでいることを知られたくないという権利

ある利用者から「みんなの前で薬を飲みたくない」と言われ、配慮に欠けていたことに気がつきました。支援者の仕事の一つに「投薬管理」があります。「管理」と呼ばれるところから、支援者目線になっていたことを反省したできごとがあります。

薬を飲む人の気持ち

私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。法人内の日中活動事業所でのできごとです。支援者の一人が「ここ使ってもいいですか?」と私に聞いてきました。ある利用者が薬を飲むのに会議室を使わせて欲しいとのことでした。

今、事務室の密を避けるために私は会議室で仕事をしています。そのため私に会議室を使っていいかどうか聞いてきました。薬を飲むのに会議室を使いたいと言う利用者は、みんなの前で薬を飲みたくないと言っています。それを言われて、私は今まで薬の支援をするときに薬を飲む人の気持ちを考えて来なかったということに気づきました。

薬の支援

私たち支援者の仕事の一つに「投薬管理」があります。ほとんどの利用者が薬を飲んでいます。支援者の中では「利用者は薬を飲む」というのがあたりまえなっています。のため、感覚がマヒをしていました。

薬の支援はまちがえがあったら大変です。安定剤を飲むタイミングを間違えると活動に支障がでます。またてんかん薬を飲み忘れると大きな発作につながります。生命の危機に直結する薬があります。薬の飲み間違えは絶対に避けなければいけません。そのため事業所では、あらゆる工夫をして薬の飲み間違え事故がないようにしています。

たとえば、薬を準備する人と支援をする人を分けています。そうすることで二重のチェックができます。また、利用者に渡すタイミングもだいじです。テーブルに置くと他の利用者が飲んでしまうことがあります。薬の袋を手に持たせて安心していると、口に入れるときに失敗して薬がどこかに行ってしまうこともあります。最後の最後まで目を離したり、気を抜くことができません。

支援者は、細心の注意をはらって薬の支援をしています。そのため、支援者の対応もピリピリして余裕がなくなり管理的になります。場合によっては、「〇〇さん、はい、薬ね、しっかり飲んでくださいね。」としつこく声をかけます。また、全体に向かって「〇〇さん薬飲みましたか?」「ハイ、飲みました」と確認タイムを設けたりしています。薬を飲む人の気持ちに配慮していません。

負担なく薬を飲んでいただく

薬を飲むということは、病を抱えているということです。病を隠したい人もいます。一般的には知られたくない人の方が多いはずです。しかし、福祉サービスの中では、おかまいなしです。

利用者の薬の支援について話し合うと「うちの事業所には気にする利用者はいません」という支援者がいます。これが大きな間違いです。本当は気にしているかもしれません。それを言い出せない、もしくはあきらめているのかもしれません。

薬の支援はだいじな支援です。正しく飲んでいただくことと負担なく飲んでいただくことがだいじだということを意識するようになったできごとです。

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