連絡帳は必要か
障がいがある成人の方が利用する事業所を運営しています。その事業所を利用する方たちは、連絡帳というものを使っています。
連絡帳は、日中活動事業所とご家族、もしくはグループホームの世話人さんとの間のやりとりに使います。毎日、双方がコメントを書きます。それを利用者さんが持ち運びます。でも私はこの連絡帳が必ず必要なのか疑問を持っています。
連絡帳は、私がこの障がい福祉サービス事業にかかわった30年前からあたりまえに存在しています。私の事業所だけでなく、関係するほとんどの事業所に連絡帳は存在しています。
事業所を利用されている方の中には自分から話かけることができない方もいます。情報を正しく伝えることが出来ない方もいます。そのためには連絡帳が必要になります。でも、毎日すべての人に必要かどうかは疑問です。
連絡帳を見ると、ご家族からはご家庭での様子が細かに書かれていることがあります。しかし、事業所からはその日の日課がただ羅列されているだけのこともあります。それも毎日同じです。
また、利用者さんのマイナス面が書かれていることもあります。私はマイナス面を連絡帳に書くことを一番懸念しています。
マイナス面とは、今日はイライラしていました、今日は仕事をあまりしませんでした、○○さんをたたきました、そのようなことです。利用者さんによっては毎日書かれている方もいます。
連絡帳に書かれていることは確かに事実です。しかし、ほとんどの場合、その利用者さんがそのような行動をとることは誰もが知っています。その課題とされる行動をあらかじめ予測してそれを防ぐことが私たちの仕事です。つまり、予測できる行動を利用者さんが繰り返すということは、支援者の落ち度です。でもそれを読んだご家族はとても申し訳ない気持ちになります。また、ご本人を叱るかもしれません。
連絡帳に書かれたことは済んだことです。またそれは日中活動事業所で起きたことでご家庭とは関係のないことです。
連絡帳にマイナスなことを書いてはいけないというのではありません。支援者が予測できないようなことが起きたときは書かなければいけません。
毎日、毎日、マイナスなことが書かれた連絡帳を読むのは辛いです。
障がいのある方が問題行動と呼ばれる行動に出るのは、必ずしもご本人の障がいが原因とは限りません。原因は、所属する環境がその方に適していない場合ということも多々あります。
連絡帳、なぜ必要なのか、何を書くことが望ましいのか、もう一度考え直すことも人権を考えることにつながります。