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逃げ方を教える(教える技術 3回目より③)

01月09日(木)から早稲田大学のエクステンションセンター中野校で向後千春先生の「教える技術」が始まりました。今回もそこで学んだことを障がいのある方への支援場面で活用すること、また支援者の働き方改革への活かし方考えて書いていきます。

3回目は、態度技能の教え方でした。講義では、前回の講義についての質問に答えたあと、OECDが報告した21世紀スキル社会・情動的スキルについての説明がありました。その後、グループでそのトレーニングについて話し合いました。

グループの発表では、社会・情動的スキルのトレーニングとして「逃げる」という提案がありました。前回は、障がいのある人の支援場面における「逃げる」について書きました。その続きです。

私は、仕事でイベントを企画したり、他の事業所を訪問することが多く、そこで出会った障がいのある利用者から相談を受けることがあります。ある方から相談を受けました。

その方は、下請け仕事を中心とした福祉サービスを提供する事業所を利用しています。

障がいのある人が利用する福祉サービスでは、利用者の工賃の低さが課題となっています。その利用者も毎日、7、8時間、部品の組み立てや袋詰め等の作業に従事して、工賃は月に2万円ぐらいです。

その方の相談は、平日に日中活動を休み、自分の部屋(グループホーム)でゆっくりしたいと言うものです。日中活動を休むと工賃が減額されてしまいます。それでも休みたいと言います。日中活動の担当職員に相談をしたら、休日にどこにも行かず休みなさい、と言われたそうです。

福祉サービスを提供する事業所で働く(利用する)利用者には、有給休暇のようなものはありません。また事業所は、利用者が休むと報酬単価が入りません。利用者には休まず来てもらいというのが本音です。

この方の話を聴くと、休日のグループホームは他の入居者がいて、のんびりできない、部屋で昼寝をしていると、扉を叩いて呼ばれる、うるさくてイライラしてくる、だから平日に休んでゆっくりしたいと言います。

この方が疲れていて、一人でのんびりしたいのに周りはガヤガヤ、いろいろな人に話かけられて、それでイライラして粗暴な態度に出てしまい、支援者に注意されてしまうことがあるそうです。

社会・情動的スキルは態度技能です。私たちは、態度が悪いと、その人の性格であったり人間性を疑い、またそれを正そうとすることがあります。でも原因は、その人が置かれた環境にあり、さらにはその環境から逃げることができない状態にあるということを意識しなければいけません。

支援においては、逃げ場の重要性を認識し、上手に逃げる方法を教えることが、社会・情動的スキルを身につける一歩になります。

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