「○○さん」と呼ぶ
私は、自分の子どもの名前を呼ぶときに「○○さん」と呼びます。たとえば、子どもの名前が「髙橋花子」であれば、「花子さん、ご飯だよー」という具合です。最初のころは子どもたちもくすぐったい、と笑っていました。
きっかけは、職場でのやりとりです。障害福祉サービスにおいては、利用者のことを「○○さん」と呼びましょうと指導されています。以前は、○○ちゃんや、あだ名、よびすてというのがたくさんありました。
2012年10月に「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」が施行されたとき、権利擁護の観点から利用者の呼び方にも意識を向けるようになりました。
しかし、支援の現場ではなかなか受け入れられず、いまだに「ちゃん」で呼んでいる場面があります。私の職場でもなかなか改善されません。
今までに支援者間で利用者の呼び方について勉強会を開催し、議論をしてきました。そのとき、支援者から出た意見は、
外国ではニックネームで呼ぶ
友だち同士ではよびすてにしている
「ちゃん」やあだ名、よびすての方が親近感ある
「さん」はよそよそしい
と、いうものでした。
本当にそうでしょうか。まず、私の職場は日本だし、利用者と支援者は友達ではありません。また、そのときをきっかけに私は、自分の子どもを呼ぶとき「○○さん」と呼ぶようにしました。しかし、どこにもよそよそしさはありません。反対に利点があります。
「○○さん」と呼ぶと、そのあとの言葉が乱暴になりません。さらに、よびすてにするより「○○さん」と呼ぶと相手のことを尊重しているという実感があります。
アドラー心理学を基本とする子育てにおける親の育成プログラムパセージの中には、「子どもを尊敬しよう」という一節があります。障がいのある人の支援場面においても同じです。相手を、福祉サービスの利用者として見るのではなく、ひとりの人として尊敬し、お付き合いをしていくことが大切です。そのためには相手の呼び方にも意識を向けることが大切であるということを伝えていかなければいけません。