「PERFECT DAYS」を観た
「PERFECT DAYS」という映画を観ました。役所広司さんが「平山」という東京渋谷区の公衆トイレの清掃員の日々を追った映画です。「平山」を演じる役所広司さんの演技が素敵で、とくに涙目で微笑む顔が忘れられません。また、日常の生活音や時には雑音に聞こえる音、たとえば救急車のサイレンなどすべてがきれいに聞こえる映画でした。さらにその合間に「平山」が運転するミニバンのカーステレオからカセットテープの音楽が流れます。その音楽が夜明けの東京に沁みます。それらをヴィム・ヴェンダース監督が上手に調和させています。パンフレットをすみずみまで読むともう一度観たくなる映画です。
映画のパンフレットにこんな解説がある。
帰りの車の中「なつかしい」の一言では片づけられない大切な思い出がいくつもよみがえってきました。その一つがカセットテープにまつわる思い出です。
ドライブの必需品・カセットテープ
車のBGMにカセットテープを使っていたのはいつまでだろう、そんなことを考えました。ドライブにカセットテープはなくてはならないものでした。カセットテープが車の必需品だったころ、レコードを貸してくれるレンタルレコードと呼ばれるものがありました。休みの日の私は、レンタルレコード店の開店に入店してLPレコードを3枚ぐらい借りては急いで家に帰り、そのレコードを46分とか54分のカセットテープに録音しました。音楽をゆっくり聴くのはそのあとです。録音をしたらレコードをすぐに返しに行かなければいけません。お小遣いを節約するためには当日返却が絶対でした。
私は、働き始めたときから車通勤をしています。だから通勤途中で録音したカセットテープを聴きました。またそのあとでその中から気に入った曲だけを抜き出して別のカセットテープにダビングします。そのときに活躍するのがWデッキのカセットテープレコーダーでした。上面がレコードプレーヤーでその下にカセットテープのデッキが二つ並び、左のカセットテープから右のカセットテープにダビングできる優れものでした。
カセットテープ作りに命がけだったころ
カセットテープからカセットテープにダビングをするときは、あらかじめ曲の分数を計り、カセットテープの片面に収まるように曲を組み合わせなければいけません。これが意外と難し作業でした。計算上は録音できるはずなのに最後の数秒が収まりきらずもう一度やり直し、ということが何度もありました。また、夢中になりすぎて作業が夜中になることもありました。すると、静まり返った家の中にカセットデッキを操作する「ガチャッ」っという音が大きく響き、親に嫌がられたものでした。それでも女の子とドライブする前の日は絶対に仕上げなければならず、カセットデッキのボタンにタオルをかぶせて音が響かないようにして操作をしていました。
しかし、苦心して編集したカセットテープが本番では機能しないことがほとんどでした。この曲をあのあたりを走っているときに流したい、夕暮れはこの曲にしたい、そんなことを考えながら編集をしました。ただし、それがタイミング良くいくことはありません。また、途中でカセットテープを入れ替えるのはカッコ悪いと勝手に思い込み120分テープにしました。するとテープがからまってどうにもならなくなりました。それでも女の子とドライブに行く前の日は懲りずにカセットテープの編集をしていました。
セットリスト「PERFECT DAYS」
「PERFECT DAYS」を観た帰り道、車の中で平山さんと同じ音楽を聞きたいと思いました。しかし、平山さんのカセットテープを都合よくセットリストにした商品は売っていません。そこでひさしぶりに自分で編集することにしました。そこでパンフレットに書かれた曲名をYoutubeで検索し、ダウンロードをしてファイルにまとめた。
01.Sunny Afternoon
02.House Of The Rising Sun
03.Pale Blue Eyes
04.The Dock of the Bay
05.Perfect Day
06.Redondo Beach
07.[Walkin' Thru The] Sleepy City
08.青い魚
09.Brown Eyed Girl
10.Feeling Good
私の車で聞く音楽は、CDからUSBの中に入ったフォルダの再生に変わりました。時間を気にしなくていい分、作るのが楽でした。明日は平山さんになって仕事に行こう。ただ実直に仕事に向き合おう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?