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同じ話は喜んで聴こう
「何回も同じ話をしてすみません」、そう言いながら話を始める利用者がいます。きっと長い人生経験の中で、「何度も同じこと言わないの」、そういわれ続けて来たのだと思います。何回も同じ話をするということは、ご本人にとってはそれだけ重要な案件です。そう思いながら話を聴くことにしています。
私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。今は、あまり利用者の皆さんと一緒に活動をすることがありません。そのかわり、休み時間になると代わるがわる利用者が話をしに来てくれます。話をしに来る人のほとんどは毎日、同じ話の繰り返しです。昨日も一昨日も、その前の日も同じ話をしています。、中には何年も前から同じ話をしている人がいます。
「何回も同じ話をしてすみません」
ある利用者は、「何回も同じ話をしてすみません」、そう言いながら話を始めます。話の内容は、自分の欲しい物の話です。以前からその方の支援にかかわっている人に話を聴くと「前から同じことを言っています。一つひとつ聞いていたらきりがないです。」そう、言われてしまいました。きっとその利用者は「何度も同じこと言わないの」と、言われ続けて来たのだと思います。ということは、これからも同じ話が続くということです。
話の内容は自分の欲しい物です。自分が欲しい物を教えてくれます。話の内容が同じなだけに「しつこい」と言われることがあったようです。しかし、毎日繰り返されるということは、それだけその物に対する思い入れが強いということです。私は、その思い入れに関心を持ちます。
利用者「何回も同じ話をしてすみません」
私「かまわないですよ、ボクもその話好きなのでお願いします。」
利用者が、どんなに欲しい物があっても、それを私が勝手に買うことはできません。私にできることは、いつまでもこの方の欲しい物に興味を持って話を聴くことです。
話の最後は「またその話を聴かせてもらえますか?」と言います。
「明日は?金曜日。」…毎日が金曜日
また、利用者の中には、繰り返し曜日の確認をする人がいます。その利用者の言う曜日はいつも金曜日です。昔の私は、むきになってその曜日を訂正していました。
昔の私「さっきも言ったでしょう、明日は火曜日、わかった。」
利用者は「はい」
利用者は、返事をして離れていきます。しかし、またしばらくすると、「明日は?金曜日。」と言って来ます。昔の私は、イライラしながら訂正をしていました。
まず、利用者にとって曜日がどういう意味を持つのか考えなくてはいけません。訂正が必要な場合とそうでない場合があります。そのうえで、利用者が求めている返答をします。
利用者「明日は?金曜日。」
今の私「そうか、明日は金曜日かぁ。」
利用者「そうだよう」
答えて欲しいことを答える
利用者の話を聴くときのポイントは、その利用者が私に話したがっているということを理解することです。そこに興味を持ちます。そこに喜び感じます。けして、買える買えない、いるいらない、正しい正しくないで話を聴いてはいけません。相手が答えて欲しい返答をする、それがポイントだと思います。
今日から新しい、支援者が働き始めました。私は、新しい支援者に説明をしながら、あらためて自分に言い聞かせます。