刺激的に溶け合うVirtual Silenceの手応え
ミュージシャンとして、フレットレスベース奏者として活動を続けて歳を重ねるごとに、いかに自分の努力が足らないか、いかに音楽的であるということが美しく、その獲得がいかに困難なことか、身に染みるわけです。
いつも身近なミュージシャンが輝かしく演奏するのを観て、羨ましく思ったりします。
単に才能、センス、という観点に陥りがちですが、彼らは音楽そのものに没入して取り組んできた蓄積を楽器や声を通して高いレベルで発散させたり、センスを発露するために感覚を研ぎ澄まして生活をしたりと、努めているのと同時に日常に落とし込んでいるように見えます。
そんなミュージシャン達と一緒に活動していけることは本当に誇らしいです。
が、自分は、といえばいろいろ足らないことが多いなと思います。
若い頃は自分には凄いところがある、とか、なにかを変えてやる、とか、浅はかな認知で高慢で厚顔、実際とはかけ離れた理想と実力との差に気づくのに時間がかかりました。
同時にその無謀のお陰で盲目的にフレットレスベースという一つの楽器に専念できた、とも言えるかもしれません。
その盲目的な無謀はジャコ・パストリアスの死してなお放つ魅力のお陰だと思います。
ジャコ・パストリアスを研究したり、奏法や譜面の書き方を真似したり、自分なりに時間を費やしてきましたが、先日、ミュージシャンとしてのアウトプットが明らかに織原良次のものである、と確信できるライブがありました。
2020年10月2日に六本木サテンドールで開催した「Virtual Silence Quartet/刺激的に溶け合う」のライブです。
10月2日(金)
Virtual Silence Quartet
刺激的に溶け合う
@六本木Satin Doll
西村知恵(vo)
井上銘(gt)
本田珠也(ds)
織原良次(flb/音楽監督)
このライブは年に一度、六本木サテンドールでやっている西村知恵さんとのデュオ"Virtual Silence"に井上銘くんが観に来てくれたことがきっかけでした。
この‘Virtual Silence‘と活動休止中の私のカルテット'miD'の音楽と、 私の活動の中でも中核だと言っていいであろう BGA(BackGroundAmbient)『透明な家具』とを渾然一体としたもの...
西村知恵さんとのデュオをリリースしたばかりの旧知の井上銘くん、そして、自分の"miD"というカルテットや"不穏な空気の中に淀むヘドロまたはヘドロとダビデ"で共演させていただいている本田珠也さんを加えたカルテット編成でライブをしてみたい…
ということで実現したのがこの日のライブでした。
一見、西村知恵さんのリーダーセッションのようですが実は私、 織原良次がパッケージしたライブでした。
10曲中7曲は私の曲。
セットリストを作成してライブ前日に各種SNSにアップロードしましたが、当日お配りしたセットリストの裏には自作曲の簡単な解説を添えさせていただきました。
もちろん、ブッキングを思いついた時点でイメージは確固たるものでした。
当日お配りしたセットリスト
ですが…
私がこの日のライブが始まって進んで行った先にあったものは、想定以上の何かでした。
この後記を書き上げた今日はライブが終わって5日目ですが、まだドキドキしています。
当日は事象の真っ只中にいて、鳥肌や口渇を感じながらも、むしろどこか冷静な自分がいるような感覚でした。
浮動する自分がお店の天井からライブを眺めているような…
ライブが終わって、このバンドを次にどういう展開をさせるべきなのか、イメージがたくさんあって逆に動き出さないでいます。
特別に新しいアプローチでもないですし、
かといってなにか特定のジャンルを想起させるわけでもない、
ただ、信頼する人達に"自分で在るというだけでいいです"というだけの有り触れたディレクション。
結果、意図する側の私が静かで大きな渦に呑み込まれてしまいました。
当日は佐山雅弘さんのB'Ridgeのジャケットや録音風景、MVを撮っていただいたはらまいこさんに写真を撮っていただくことができました。
はらさんによる撮影「しなやかな指をもちなさい」MV/佐山雅弘B’Ridge
はらさんには
10/2のこの「刺激的に溶け合う/Virtual Silence」@六本木サテンドール、
10/3の本田珠也さんの「不穏な空気の中に淀むヘドロまたはヘドロとダビデ」@新宿ピットイン、
10/4の林正樹「間を奏でる」@原美術館、
3日間撮影をしていただきました。
不穏な空気の中に淀むヘドロまたはヘドロとダビデ@新宿ピットイン
間を奏でる@原美術館(配信ライブ)
ピットインの入り口には佐山雅弘さんのB'Ridgeのポスターが貼ってあります。
2018年にご自身が撮影されて今の活動のきっかけになった作品のポスターと再会したはらさんを見て、なんとも言えない感慨に耽ていました。
はらさん@Pit Inn
いろいろな思いを携えて臨んだ数日でしたが、
10/2のライブの未知の手応えに惑乱し続ける今日です。
ぜひサポートをお願いいたします。貴方のサポートは確実に私の活動の貴重な一片として有効に使わせていただきます。引き続きフレットレスベース奏者織原良次の応援をよろしくお願いします。