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PID制御の作法 Part3

前の3回で伝達関数について紹介してしまい、PID制御について間が空いてしまいました。

またPIDについてです。今回はチューニング方法についてです。

PID制御のゲインチューニングは試行錯誤的に行うというふうに教科書や先生からは聞いたことがあると思います。

しかし、伝達関数の基本形を使うと周波数から適切なゲインチューニングが可能です。

Part2で考えた車の速度制御について考えてみましょう。


$${\frac{v}{v_t}=\frac{K_i}{(m+K_d)s^2+K_ps+K_i}}$$

上記の式を少し変更して
$${\frac{v}{v_t}=\frac{\frac{K_i}{m+K_d}}{s^2+\frac{K_p}{m+K_d}s+\frac{K_i}{m+K_d}}}$$

伝達関数の2次系は

$${\frac{y}{u}=\frac{\omega_n^2}{s^2+2\omega_ns+\omega_n^2}}$$

2次系の特性のように目標車速を入力したとき出力の実車速がある周波数まで0[dB]でその後オーバーシュートすることなく出力ゲインが下がることが制御的には望ましいです。

$${\frac{v}{v_t}=\frac{\frac{K_i}{m+K_d}}{s^2+\frac{K_p}{m+K_d}s+\frac{K_i}{m+K_d}}=\frac{\omega_n^2}{s^2+2\omega_ns+\omega_n^2}}$$

となれば良さそうです。

分母、分子の各項の係数比較することで以下の式が導出できます。

$${\frac{K_p}{m+K_d}=2\omega_n}$$

$${\frac{K_i}{m+K_d}=\omega_n^2}$$

したがって、$${K_p}$$、$${K_i}$$は

$${K_p=2\omega_n(m+K_d)}$$

$${K_i=\omega_n^2(m+K_d)}$$

この場合、$${K_d}$$は必要なさそうなので、$${K_d=0}$$とすると

$${K_p=2\omega_nm}$$

$${K_i=\omega_n^2m}$$

$${\omega_n=2\pi{f_c}}$$ですので
PID制御のゲインが要求周波数のパラメータ一つで全部決定できます。

例えば目標速度の周波数が最大で3[Hz]までしか入力されないシステムの場合、$${f_c=3[Hz]}$$より大きい値で設定すれば良いことになります。

$${K_p=4\pi{f_c}{m}}$$

$${K_i=4\pi^2{f_c}^2m}$$

$${K_d=0}$$

今回のように微分項が必要ないケースもあるため、上記制御は結果的にPI制御でOKということになります。

一つずつエンジニアの感でチューニングするのではなく、要求周波数という1パラメータ安定した、PID制御のパラメータが決定できます。

次回はシステム伝達関数が3次系になってしまう場合の、チューニング手法を紹介します。






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