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2024年6月30日の短歌ってなんだったんだ歌会@東京駅の記録

全文無料で読めます。お金に余裕のある方は購入してくれると嬉しいです。地方歌会の交通費にあてます。


イントロダクション

東京駅開催の短歌ってなんだったんだ歌会が終わった。「みんなで飲みに行きたい」という気持ちを引きはがすような感覚で手を振って素早くその場を去った。「短歌ってなんだったんだ!」と最後に言うのを忘れていて、井口さんの指摘で思い出して、言い残して去った。近場のカフェに入る手はあったのだけれども、楽しさに引きずられそうな感じがあったので逃げるように交通機関に乗って、池袋まで移動して、どこも席が空いてねえ、とうろうろしながら、なんとかサンマルクカフェにおさまってこの文章を書いている。

歌会の主催・司会をしていると色々気を遣う。基本的には歌会のあとは楽しい気持ちで帰ってほしいし、歌はできるだけ良いものとして読みたい。そういう気持ちの反面、この歌はここが違うんじゃないか、この歌はここが弱いんじゃないか、そういう指摘がどうしてもしたくなってきた、というのがここ一年で歌会を再開したところに生じたもやもやだった。

ということで、今回の歌会は募集の段階で「一切の司会業を放棄して好き勝手に喋る」ということを事前に掲げての開催とした。歌会後の懇親会もなしにした(少なくとも石井は参加しない、ということを明言した)。言いたいことは短歌や短歌の評で言えばよい。歌会では静かなのに飲み会になると急に喋り出すタイプの人が苦手、という気持ちもあった。歌会の直後は短歌のことを考えたほうがいい。だからこうして歌会直後に文章を書いている。

短歌ってなんだったんだ歌会@東京駅、開始。

参加者は、石井僚一、井口可奈、小田たくみ、階田発春、越慶次郎、田中友之、海吉行平(いずれも敬称略)。小田さん、田中さん、海吉さんはそれぞれ、再開後の生きている歌会ではじめましてだった方々。順に、名古屋、高知、札幌、での参加者だったので、その面々が来るのはおもしろいな、の気持ち。階田さん、越さんはじめまして。井口は長い付き合いになってきた、という感じ。

会場着。ビルの一室。もっと狭いかな、と思っていたけれど、ちょうどいいくらいの大きさだったな。音が結構こもる感じで最初は気になったけど、歌会が始まったら別に気にならなくなりました。

歌会の開始にあたっては概ね以下のレギュレーションを提示させてもらいました。

東京でいちばん無秩序な歌会にしていきます。

○自己紹介はしません
→いちばん最初に喋るときに一応、名乗ってください。
→名前忘れたら都度ききます。

○選なしです
→選(歌を選ぶ)をしません
→最初に読む時間をつくったら雰囲気ですぐはじめていきます。
→なお石井も詠草読んでません(普段は読みこんでから来ます)。

○評の流れ
→雰囲気で喋りたい歌があれば喋りたい人からどうぞ。
→どの歌からやるか、さえも雰囲気でいきます。
→概ね一首ずつ扱いますが、やりとりの状況に応じていったりきたりしてもOKです。

〇石井の仕事
→時間の管理はやります。基本は各歌15分を目安でゆるく区切ります。
→基本的に司会業は放置します。話を振ったりしないので、喋りたければ喋ってください。
→評について深く訊きたい、この人の話が聞きたいなども、各自言ってOK。
→初心者の方は喋らなくてもOK。疑問があれば素朴につっこんでくれると嬉しい。
→話が長い人とか、話が脱線しているとかあったら、石井の裁量でつっこむかもしれません。

〇解題の時間
→20-30分残してやります。
→ここは結局どう伝わりましたか?修正する余地はありますか?などの質問可能です。
→別に歌会中に作者が自分で名乗って聞いてもいいです。

「短歌ってなんだったんだ宣言」


とにかく司会はしたくないのと、できるだけ自分を含めたみんなが好き勝手喋る、というところを重視して以上のレギュレーションを提示したところで、「かなり難しい」というリアクションが小田さんから出てきて、この歌会まじでどうなるのかわからないぞ、という感じで、とりあえず「歌会の詠草は普段意図的に並べてますが、今回は完全にランダムで並べています。競馬のハンデ戦みたいな感じで」という話をしたら、競馬のハンデ戦の感じが伝わっていなくて、詳しく説明するところから歌会がはじまった。

はじまっちゃえばなんてことなく歌会で、少なくとも今日のメンツだと上手くまわりました。なんだかんだで喋ってない人に話を振りたくなったりしてこれは司会と別に自分の性質だな、と思いつつ、ところどころ井口に司会っぽい役割を任せたりして、なんかいい感じに回りました。

小田さんの一声で最初に扱う歌が決まったのだけれども、自分の歌なので普通に喋りにくいな、というところからスタート。自分の歌に対して「喩えの表現の仕方があざとい」とか言ったりして、井口に「そうでもないんじゃない」と返されるなどのやりとりをした。

自由に喋る、というところを重要視していたので、その後も気にせず喋りつづけた。「ここのところは自分だったらひらがなにするけど」「この歌の提示の仕方をされるとこれ以上、こちらからは入っていけない」「この人は魂が陽キャすぎるから、少し距離を置いてしまう」「こっちの人の葛藤だったらわかる」「短歌的にはこの葛藤の人のほうが親しみを感じるけれど、一緒にいるならさっきの陽キャの方が絶対に楽しそう」「なんでこの人はこんな歌をつくるんだ」「一見、ポジティブな人に見えたけれど、読むほどに現実ではしんどそうな人のような気がしてきた」等々、作品評とは言いがたいこちらの気持ちをぶつけまくりつつ、「ここの“明るい”は表現としてはゆるくないか」「賞の連作にこういう歌が入っていたらそれだけでちょっと減点する」「ここのら抜き言葉や句跨りは意識が足りないんじゃないか」「この歌はそもそも意味をとるのが難しい」みたいな、ちょっと野暮かもしれないことも言いまくった。

詠草のなかではおそらくいちばんポジティブそうなものを提示していた小田さんが、詠草のなかではおそらくいちばんネガティブそうな階田さんの歌に対して、「そんなことないよ」と励ましの言葉をおくっていたのに対して、階田さんは小田さんの歌の名詞に対してネガティブな要素を見出していた、という対比が面白かった。お互いに徹底していた。この二人が歌を並べて、何かを言い合うのは歌会ならではだと思う。

明らかに井口っぽい井口の歌に井口が喋っているときとか、田中さんの歌の評のタイミングて田中さんが明らかにアドバイスを受け取るモードで相槌を打っているのとかは、なんとなく歌の作者を把握している側から愉快に見ていました。

全体的な振り返り

改めてだけれども、歌会としてめちゃくちゃやりやすかったのは、困ったら、井口か田中さんが喋ってくれる、という前提があって、そのうえで小田さんも何か言ってくれる感じがあって、気楽だった。全体のバランスとしては、階田さん、越さん、海吉さんにもっと話を振るべきだった、ということにはなるんだけれども、そういう配慮はしないという歌会です。今後もしゃべる人だけがたくさん喋る歌会になるんだろうな。
まぁ、越さんもふったらふったでちゃんと喋るし、海吉さんは自分からは喋らないけれど、最後のほうで話をふると、それまでにはなかった新しいアングルで歌を語ってくれるのでよかった。繰り返すけれど、階田さんのネガティブは最初から最後まで通底していてよかったが、この変に明るい歌会を最後まで心から楽しんでくれたのか、についてはちょっと不安が残ります。階田さんの歌の、概念的なところをもうちょっと具体的なものとして受け取るべきだったかもな、と反省してます。楽しかったらまたぜひ来てください。

短歌ってなんだったんだ本質情報

今回の歌会をやるにあたって頭にパッと出てきたキーワードが「本質と賛美」でした。歌会中にいくつか本質らしきイベント・情報があったので以下に箇条書きで提示します(いずれも各人に記事に書くことの許可をとっています)。

・歌会開始時、会場に間違って配達物が届く。宛名が田中だった。
・小田さんは今日は名古屋からの参加だったが、たまたま名古屋で東京に向かう友達と会ったので、その人と食事をしてから歌会に来た。
・井口が沼を飲んでいる(愛用の胃薬を井口が「沼」と呼んでいる)
・井口可奈の初恋の人はタカハシナオヤくん。
・田中友之の初恋の人はツチダノゾミちゃん。
・越さんの着ていたTシャツのイラストが坂本慎太郎デザイン(→たぶんこれ)。

本質

終わりに

会場費2970円に対して、石井を除く参加者6名で6000円。3030円のプラス収支です。このプラス収支で生きている歌会のゲストの懇親会費を払うことができます。次回の生きている歌会のゲストは井口寿則さんなので、この3030円は井口寿則さんに届くと思ってください。

参加者各位、長文の感想等ブログに書いた場合は報告くださるとありがたいです。この記事からリンクを貼らせていただきます。

改めて自分勝手に歌会させていただいて参加者のみなさんありがとうございました。こんなに自由にやってるとたぶん駄目になっちゃうんだろうな、と思いつつ、どこかでまた開催します。めちゃくちゃ人を選ぶ歌会だとは思いますが、楽しめた方はまた参加どうぞ。石井のノリで土日祝にまた急に開催されると思います。次回は神田開催です。山手線を回ります。短歌がなんだったのか、は未だわかりません。

あと、noteの記事買ってくれてありがとうございます、を言い忘れたので、今度会ったときに言います。

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