PENTAX K-3 Mark III Monochrome テスト撮影終了
K-3ⅢM購入から3週間弱が経過した。熟考しながらテスト撮影を繰り返して今日ようやく完了した。予想はしていたがやはり難航した。このカメラはモノクロのベテランほど迷ってしまい難しいと思う。その辺の話を書いてみたい。
前回の投稿にも書いたが、最初はカメラの特徴をつかむべく出来るだけデフォルトのJpegで撮影してみた。基本は単焦点レンズでマニュアルフォーカスなので、まずは邪魔なものを省いていく。AF合焦音などのサウンド。ファインダー内照明や電子水準器やその他表示で目障りなものなどだ。ファインダーは方眼表示にした。
カメラでもPCでも縦位置画像の表示が小さくなるのが大っ嫌いなので、画像の自動回転はオフ。後から出来るものは撮影時にする必要がないため、ノイズリダクション的なものも全てオフ。いつもそうだが、いろいろオフにする方向で設定していった。
操作面ではメインダイヤルとサブダイヤル。ペンタックスでは「前電子ダイヤル」と「後電子ダイヤル」と呼ぶらしいが、この初期設定がニコンと逆なので全て「絞りが前」「シャッタースピードが後ろ」に変更した。その方が動作的に合っていると思う。
それから露出モードの登録。カメラ任せのAUTOがかなり優秀なので、このAUTOと絞り優先オート(AV)で使うことに決定。ダイヤルでAUTOの隣にあるU1にAVを登録し、ワンクリックで変更できるようにした。撮影がメインでないときや移動中はAUTOにしておく。しかしAUTOは絞りを開けたがるので、ピーカンの屋外ではAVでf/8~f/11にしておき、室内で像を安定させたいときにはAVでf/4〜f/5.6にしておく。高感度が使えるのでISOオートが有効である。
基本の設定はスタンダードで露出補正マイナス1/3にした。これについて述べていく。
前回の投稿の最後に少し書いたように、このカメラのデフォルトは調子がかなり眠くて浅い。良く言えば「階調が豊富」であり破綻がない。素材として優秀ということだ。しかしモニターで見たりPCに取り込んだときに、どうしても物足りない感じがしてしまう。
何十年もフィルムカメラで撮影して暗室で現像プリントをしてきた。もうずいぶん前にプリントは止めてしまったが、たとえスキャンしたデータであってもフィルムの調子は再現できた。今回、このカメラを手にして撮ってみて感じたのは、「デジタルは隙間がないんだな」という事である。
アナログの隙間はそれが強さや情になる。と思う。それを知っているベテランほど、このカメラの優秀さは分かるが使いこなしに苦労している。とある写真家の人がSNSで、私と同じようなことを書いていた。その方はスタンダードでなくハードを基準にした設定を公開していたので試してみた。
本日2023年5月17日。正午前。散歩がてら腰のリハビリに向かう道だ。予想最高気温30℃以上。上手い具合に「隙間」を作っている。しかしシャドーが潰れて空もトビ気味だ。そしてシーンによっては予想外の写りとなった。私の撮り方には向いていない。
これは私の設定。と言ってもデフォルトのスタンダードからマイナス1/3の補正のみだ。諧調は豊富だが眠くて浅いのが分かるだろう。
そこでソフトで思い切った後処理をする。後処理は本来ほどほどが良いのだが、これは素材が密なので存分に出来る。露出を好みの方向にし、トーンカーブやコントラストをいじり、空を焼き込む。印画紙の号数を選び、露光秒数や焼き込みの具合を変えて何枚もプリントした暗室作業と同じである。
この方が私には向いているな。最初から設定を追い込んで失敗を含むJpegを量産するよりも、Rawをネガと考えて、セレクトして仕上げたJpegだけを作品として残せばよい。フィルムのネガはいつでもスキャンできるが、現在のRaw規格が未来永劫ソフトで開けるかどうかは分からない。でもそこまで考えてもしょうがないだろう。
これで撮り方は決まった。
明日から本番だ。
ここまではソフトの話。
次にハード面について書く。
レンズについてだ。前回の投稿でHD DA21/3.2とA24/2.8とA28/2.8の3本で撮る。と書いた。しばらく撮ってみて焦点距離で過不足はないのだが、24mmと28mmのマニュアルフォーカスで時折り微妙なピンボケをやってしまった。屋内での開放付近はもちろん、屋外でも絞りを開け気味にしたときである。だいたい前ピンになった。
K-3ⅢMは前回書いたようにカメラとして良く出来ている。ファインダーもAPS-Cとは思えないほど優れている。しかしやはりニコンのF4やFM3Aのファインダーとスクリーンに比べると、見た目のピントのピークに若干の幅がある。それは合焦マークの点灯もそうだ。
慎重に合わせようとして時間をかけてしまうと、被写体が人物だけでなく静物でも写真の神様は逃げていく。AFレンズを導入しよう。しかし現行品には24mmと28mmはない。FAの24mmは開放f/2で大きい。そこでFA28/2.8の状態の良い中古を購入した。135フィルムで40mm前後の焦点距離が年齢とともに好きになった。
最初はFA35/2を考えた。いわゆる標準レンズだ。しかしあくまで持論だが、50mmを超えるレンズは対象に自分を投影しすぎてしまう。準広角の方が少し突き放す感じになって良い。ブツをしっかり撮るには50mm以上のレンズが歪まず良いのだが、それはまだ先でも良いなと考えた。
屋外:HD DA21/3.2・A24/2.8・A28/2.8で絞って目測MF撮影
屋内:HD DA21/3.2・FA28/2.8でAF撮影
両方撮る、あるいは絞りを開ける可能性があればAFレンズを付けて行く
基本的に交換レンズは持たない
という体制が出来た。
ここまで読んで、ペンタックスファンの賢明な読者は思った事だろう。「20-40mmですべて解決じゃないの?」と。そうなのだ。20-40mm。正しい思想のレンズである。写りも良いだろう。でもズームは使いたくないのだ。
ライカのトリ・エルマー28-35-50mmのように、20-40mmなら20・24・28・35・40で中間がなければ良い。もしくはそこに強めのクリックがあるかだ。そうでないとファインダーが視野率100%なこともあり、絶対に絶対に覗いてから微調整したくなるはずだ。当然時間がかかる。これは「シャッターチャンス」などという陳腐な話では断じてなく、撮るときの覚悟の問題なのだ。
「撮ろう」と決めてファインダーを覗いてから2秒経つごとに、最初の気持ちが10%ずつ衰退する。最初のきらめきがファインダーからどんどんこぼれ落ちるのだ。何枚同じカットを撮っても、ほぼ100%最初の1枚がベストなのと同じである。もちろんこれは「私事」の場合であり、私だって「仕事」はほとんどズームレンズだ。「覚悟を持って自由に撮る」のか「制限の中で相手の要望に応える」のかは、同じ撮影でも全然ちがうのである。
先に書いたが、便利な物は便利に使えばよいとAFレンズも導入した。しかし上記の理由で便利だがズームレンズは使いたくない。矛盾しているようだが、理由はこのように私の中では一致しているのだ。
このカメラが今後のモノクロ撮影のメインとなる。でもフィルムカメラも使い続けるだろう。それはフィルムカメラとフィルムにしかない魅力があるからだ。ここまで書いたことで分かってもらえると思う。
しかしペンタックスはよく頑張った。素晴らしい技術と思想だ。モノクロを「カッコイイもの」「知らないもの」として撮ってみたい若者はもちろんだが、私のような長年の経験のある人にこそ、ぜひ使ってもらいたい。フィルムでモノクロを続けてきたけど現在の状況で諦めそうな人。あるいは従来のデジタルカメラでモノクロの設定や変換をしている人。モノクロ表現を愛する人なら、PENTAX K-3 Mark III Monochromeは買って損はないカメラだ。
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