映画『ジョーカー』を見たからといってお前の人生は変わらない
ジョーカー、めちゃくちゃ面白かったです。
ある意味バンドマンとかが見ちゃうと悪い意味で食らっちゃう気もします。もちろん自戒込みで。笑
ただ、評論家大絶賛の雰囲気に押されて見に来たはいいけど、思ってたのと違う…よく分かんない…って人が僕の周りに結構いるので少しだけ僕なりの線引きをしようと思って今回書いてみました。
今作では分かりやすく虚構(幻想)と現実、がテーマとして度々登場するんですが、その前に大前提としてどうしても海の向こうの人に比べて日本人には馴染みの薄い
『神』的な考え方
について、少しだけ僕なりの解釈で話したいなと思います。
もうネット上には死ぬほどしっかりした評論がたくさん上がってるので、そういうのよりちょっと敷居を下げた話をしてみます。
もちろんこんな駄文を読むよりジョン・ミルトンの失楽園読んだ方が早いわ!って話なんですが、"ジョン・ミルトン"とか言い出した瞬間に拒絶反応を起こす人たちがいっぱいいるはずなので笑 少々お付き合いください。
まず最初に書いた『神』的な考えって、聖書の教えとかそういった小難しい話じゃなくて、もっと現実に落とし込めば
"法律とか道徳、それに基づく秩序" って話です。もっと噛み砕くと"人間は本質的に良いもん持ってる!"みたいな感じ。笑
それとは逆に"人間は道徳とかそういったものに縛られずに、自分で考えてどこまでも自由に生きられる、むしろそれこそが人間である"っていう考え方があって
この後者の考え方をより追求する役割が
クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』のジョーカーでした。
後者の考え方をより深く進めていくと
"むしろ法律や道徳(西洋文明において揺るぎない不変のモノ=神の論理)に従って生きるのは神の家畜である事と違わない"とより過激な形になるわけですが、すごく説得力のある論理でもあるわけです。
ダークナイトにおけるジョーカーは、ここを徹底追求して、人間の一皮剥いた後の野蛮で自己中心的な姿を暴き出す事のみが目的という、ある意味抽象的なキャラでした。鋭い人なら分かると思いますが、聖書的に言うと"サタン"がモチーフです。サタンの話は長くなるので今日はやめます。笑
ただ、今回のジョーカーがより根が深いなと思うのは、"人間、アーサー・フレック"というもう一つの側面がある事です。
ダークナイトのジョーカーはある種、人間を超越したキャラとして描かれてましたが、アーサーは社会的に追い込まれた末の、自警団的行動とも言い難い、フラストレーションを発散させる為だけの殺人鬼(引いてはただの精神を病んだ狂人)にも関わらずどんどん反体制派の象徴として祭り上げられてしまう様は本気で恐ろしいし、具体的な例をあげるのは避けますが、現実にアメリカで起きてる色んな状況と重なります。
虚構(幻想)と現実。
感想としてツイッターに流れてくるものに
"誰もがジョーカーになる可能性を秘めてる"とか
"実際の貧困層に見せてはいけない"
とか書かれているものがバズっていたりしてたんですが、
今回の映画は単純に
"誰もがジョーカーになる可能性"
を示唆する話とは少しだけ違う気がします。
この映画は
"ジョーカーにどこか憧れ、陶酔してしまう人間の怖さ"
を炙り出す話なんじゃないかなと。
そして映画のラストカットで、そんな観客の気持ちを逆撫でするように、より鮮鋭に研ぎ澄ませて終わります。
要は『お前ら(観客)の話をしてんだよ‼︎』
って事です。
謂わば、僕らが昔ダークナイトを見て
『いやー悔しいけどジョーカーかっこいいわ…』
となっていた"あれ"の本質を突いてるとも言えます。
現実にダークナイトライジング公開時にジョーカーの影響を受けたとされる男が映画館で銃乱射事件を起こした事を考えると、かなり居心地の悪い事実を突きつけてきます。
そしてあのラストカットから僕は
『てかおめーらはジョーカーじゃねぇから』と監督から言われたような、そんな気もしてます。
このラストがくるおかげで、一気に物語が俯瞰視点になって、ジョーカーというキャラも含めた愚かな人間の寓話です、とめちゃくちゃシニカルな形で全体を締めくくっているのは、コメディー畑出身の監督が為せる技でしょうか。ホントめちゃくちゃカッコいいな…って思いました(アホ面)
現にトッド・フィリップス監督がインタビューでしきりに
『僕が作るタイプのコメディーはもう作れないから(ポリティカルコレクトネス的に)、コメディー以外のやり方を選んだ』
と言っているので監督が意図したものなんでしょう。
めちゃくちゃ長文になりましたが、僕個人の考えですし、もっと色んな要素を多分に含んでる映画でもあると思います。
これは違うだろ!とかあったらいっぱいぶつけてください。そういう人と語り合いたい。
影響下にある映画の話とかもしたいけど終わりそうにないのでやめます。笑
例えばよくキングオブコメディのオマージュが〜とかタクシードライバーの影響が〜とかアメリカンニューシネマが〜とか言われてるので、そのラインナップなら
ランボーも仲間に入れてよ!
とか考えちゃいますね。
違うとこは最後、
ジョーカーは笑いながら踊りますけど
ランボーは泣きながら逮捕されるってとこでしょうか。
あとトッド・フィリップス監督よ〜こんな映画撮られちゃったら
俺らもうハングオーバーで無邪気に笑えねぇーよ。
とは思いました。
おしまい。
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