二宮教会 主日礼拝説教メモ ロマ書12:9-12「泣く人とともに」
12:09愛には偽りがあってはなりません。悪を憎み、善から離れず、 12:10兄弟愛をもって互いに愛し、尊敬をもって互いに相手を優れた者と思いなさい。 12:11怠らず励み、霊に燃えて、主に仕えなさい。 12:12希望をもって喜び、苦難を耐え忍び、たゆまず祈りなさい。12:13聖なる者たちの貧しさを自分のものとして彼らを助け、旅人をもてなすよう努めなさい。 12:14あなたがたを迫害する者のために祝福を祈りなさい。祝福を祈るのであって、呪ってはなりません。 12:15喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣きなさい。 12:16互いに思いを一つにし、高ぶらず、身分の低い人々と交わりなさい。自分を賢い者とうぬぼれてはなりません。 12:17だれに対しても悪に悪を返さず、すべての人の前で善を行うように心がけなさい。 12:18できれば、せめてあなたがたは、すべての人と平和に暮らしなさい。 12:19愛する人たち、自分で復讐せず、神の怒りに任せなさい。「『復讐はわたしのすること、わたしが報復する』と主は言われる」と書いてあります。 12:20「あなたの敵が飢えていたら食べさせ、渇いていたら飲ませよ。そうすれば、燃える炭火を彼の頭に積むことになる。」 12:21悪に負けることなく、善をもって悪に勝ちなさい。
ロマ人への書 第12章
12:9 愛には虚僞あらざれ、惡はにくみ、善はしたしみ、10 兄弟の愛をもて互に愛しみ、禮儀をもて相讓り、11 勤めて怠らず、心を熱くし、主につかへ、12 望みて喜び、患難にたへ、祈を恆にし、13 聖徒の缺乏を賑し、旅人を懇ろに待せ、14 汝らを責むる者を祝し、これを祝して詛ふな。15 喜ぶ者と共によろこび、泣く者と共になけ。16 相互に心を同じうし、高ぶりたる思をなさず、反つて卑きに附け。なんぢら己を聰しとすな。17 惡をもて惡に報いず、凡ての人のまへに善からんことを圖り、18 汝らの爲し得るかぎり力めて凡ての人と相和げ。19 愛する者よ、自ら復讐すな、ただ神の怒に任せまつれ。録して『主いひ給ふ、復讐するは我にあり、我これに報いん』とあり。20 『もし汝の仇飢ゑなば之に食はせ、渇かば之に飮ませよ、なんぢ斯するは熱き火を彼の頭に積むなり』21 惡に勝たるることなく、善をもて惡に勝て。
12:09愛には偽りがあってはなりません。悪を憎み、善から離れず、
ここでパウロの言う愛はどこに向けられているのだろうか。
悪を憎み、善から離れないように愛するならば、罪ある人間を憎み善なるキリストとその父を愛するのか?そうではあるまい。
とすると、兄弟姉妹を愛するときも、その中にある悪しき性格を憎み、あくまでも自分が善から離れないように愛すべし、ということになるだろうか。
12:10兄弟愛をもって互いに愛し、尊敬をもって互いに相手を優れた者と思いなさい。
兄弟愛はフィラデルフィア(Φιλαδέλφεια、フィロス=愛、アデルフォス=兄弟)友愛フィロスをさらに兄弟に向ける意となる。
新共同訳を離れて10節を私訳する。
12:10(01) τη テェィ
それを 定冠詞・与格・単数・女性
(02) φιλαδελφια フィラデルフィア
兄弟愛を(持ちなさい) 名詞・与格・単数・女性
(03) εις エイス
~[に] 前置詞
(04) αλληλους アッレィルース
互い[の者たち]に 相互代名詞・対格・複数・男性
(05) φιλοστοργοι フィロストルゴイ
優しい愛の[者たちは] 形容詞・主格・複数・男性
(06) τη テェィ
それを 定冠詞・与格・単数・女性
(07) τιμη ティメィ
尊敬を(持ちなさい) 名詞・与格・単数・女性
(08) αλληλους アッレィルース
互い[の者たち]に 相互代名詞・対格・複数・男性
(09) προηγουμενοι プロエィグーメノイ
優先する[者たちは] 動詞・現在・中間受動デポネント・分詞・主格・複数・男性
「兄弟愛を持ちなさい。優しい愛とは、互いに敬意を持ち、相手を優先することです。」
相手を優れたものだと思って尊敬しなさいは、一見文意が通るが、優れていないものは尊敬しなくともよいのかという疑問が起きる。パウロはそう言っているわけではないだろう。敬意をもって相手に対し、自分よりも相手の事情を優先してやること、それが優しい愛というものだ、と説いていると取る。
12:11怠らず励み、霊に燃えて、主に仕えなさい。
書かれているとおりであるが、互いが主にある兄弟姉妹として「怠らず励み、霊に燃えて、主に仕え」ているからこそ、優しい愛を持てるということではある。
12:12希望をもって喜び、苦難を耐え忍び、たゆまず祈りなさい。
主が世に、死に勝利したからこそ、われらはどんなときにも希望を抱き、忍耐することができる。我等も主の勝利に与れるよう祈るべきであろう。
12:13聖なる者たちの貧しさを自分のものとして彼らを助け、旅人をもてなすよう努めなさい。
聖なる務めに奉仕するもの、すなわち使徒や聖職者の「貧しさ」を自らに引き受け、旅人をもてなすように、彼らにふるまいなさい。
書かれているとおり。
12:14あなたがたを迫害する者のために祝福を祈りなさい。祝福を祈るのであって、呪ってはなりません。
「迫害するもののために祈り、敵を愛し祝福を祈りなさい。」は、主イエスにさかのぼる言葉であるが、その「愛敵」の教えは主の教えの中でも最も実践が難しいものであると言えよう。
冒頭に「悪を憎み、善から離れず、」とある以上、悪しき敵を受け入れることではないことは自明であるが、敵を滅ぼさんと呪えば自分が善より離れることともなる。
ex.ボンヘッファーのヒトラー暗殺計画加担
わたしもボンヘッファー同様、ガンジーを愛し「無抵抗不服従」という思想に憧れた一人であって、アヒンサーのためにはGを殺すことさえやめようと決意したこともあった。但し、ヒロシマ、ナガサキ、フクシマを経た今では、無抵抗でいると敵は全世界に惨劇を及ぼしてしまうのだということを知るに至った。
それ故、敵意を向けるべきところ(すなわち悪)にはきちんと敵意を向けることも愛なのではないかと考えるようなった。敵(悪)は全世界を滅ぼし得る強大な力を持つのだとの敬意に立ち、獅子欺かざるの力を以て戦うことこそ、今のわたしの考える「愛敵」である。
12:15喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣きなさい。 12:16互いに思いを一つにし、高ぶらず、身分の低い人々と交わりなさい。自分を賢い者とうぬぼれてはなりません。
喜ぶ人泣く人に共感し、心を一つとする。それがパウロの考える究極の愛であり、それを示したのが主の十字架であると彼は説く。
しかし、わたしは泣く人を見ると「笑顔にしたい」と思うような人間である。本来的に共感力が乏しいのであろう。しかし、全世界を滅ぼし得る敵にも何か事情があるのだろうなどと共感できる人間であったなら、戦う意欲も削がれていただろうとは思う。
12:17だれに対しても悪に悪を返さず、すべての人の前で善を行うように心がけなさい。 18できれば、せめてあなたがたは、すべての人と平和に暮らしなさい。 19愛する人たち、自分で復讐せず、神の怒りに任せなさい。「『復讐はわたしのすること、わたしが報復する』と主は言われる」と書いてあります。 20「あなたの敵が飢えていたら食べさせ、渇いていたら飲ませよ。そうすれば、燃える炭火を彼の頭に積むことになる。」 21悪に負けることなく、善をもって悪に勝ちなさい。
わたしの戦いはわたしの復讐であろうか。私は違うと思う。戦うことが嫌いで、気楽に暢気に自由に生きることのみを望んだ私を、このような熱い闘志を持つ強面の牧師へと変容させたのは、ほかならぬ神であろうと思うからだ。
悪に負けることなく善を以て悪に勝つ、言葉で理解するのは容易いが、実践するためには多くの試行錯誤を要するであろう。今の私が神にまったく叶う完璧な存在であるとは思わない。但し、犂に手をかけた以上は振り返ることなく前進するのみである。アーメン。
祈ります。