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箱根駅伝で感じたテクノロジーの進化とスポーツの関係
2020年、令和最初の箱根駅伝は青山学院大学の優勝で幕を閉じた。今年の箱根駅伝 (というか一昨年頃からずっとだけど) はナイキのヴェイパーフライというシューズがレースを支配していた。青山学院大学の選手だけでなく、実に全体の9割近い選手がこのシューズを着用していたようだ。トラックの10,000mのタイムを見ると、それほどスーパースターと呼ばれるような選手はいなかったようだが、それでもほとんどの区間で区間新記録が出ていた。
優勝した青山学院大学はアディダスとスポンサー契約を結んでいるようで、以前はアディダスの独自クッション素材であるBOOSTフォームを使ったAdizeroというシューズで箱根路を圧巻していた。そんな彼らもナイキの新しいテクノロジーの波からは逃れることができず、走者全員がナイキを着用して好記録を出したにも関わらず優勝会見はアディダスのシューズで臨むという珍事も発生していた。
コートからウェア、シューズまで 用具一式に関して Adidasからオフィシャルサプライを受けている #青山学院大学 が、今年は全員が Nike ピンクのヴェイパーフライで走り切って往路優勝か。と思っていたら優勝インタビューでは全員がAdidasに履き替えていました。大人の事情を感じた瞬間です。#箱根駅伝 pic.twitter.com/gXet1dVvhS
— ひぞっこ (@musicapiccolino) January 2, 2020
箱根駅伝ファンとして感じたこと
箱根駅伝のファンとしてはやはり複雑な気持ちはある。記録は破るためにあるのはその通りだが、今回に限っては選手の自力で記録を破ったというよりはテクノロジーの進化によってシューズの力で出た記録であることに異論のある人は少ないだろう。マラソンの日本記録を出した設楽選手や大迫選手も同じくこのシューズで日本記録を出し、賞金1億円を獲得したことに複雑な思いを感じる人もいるだろう。(もちろん各選手の凄まじい努力あっての記録であることには間違いないけれども。)
ただ、本来はこういったテクノロジーの進化は歓迎すべき事象のはずだ。僕の職業はソフトウェアエンジニアであり、普段はクラウドコンピューティングまわりを中心にテクノロジーの進化を追い求めている。IT業界の古株の方々 (悪く言うと老害) が最新のテクノロジーに疎くなり、変化を嫌うさまを心の底から毛嫌いしているような人種である。
なのになぜかスポーツに関して言うと、テクノロジーの進化がスポーツマンシップを邪魔しているような感覚に陥ってしまい、変化を嫌う気持ちが芽生えていた。
スポーツを娯楽として観戦するとなると、我々が期待しているのは正々堂々とした勝負であり、大っぴらな経済活動のニオイがしたり、道具に頼るような状況が見え隠れすると、期待が裏切られたような感覚に陥ってしまうのかもしれない。実際、往年の名ランナーの区間記録がこれほどまでに蹂躙され、ほとんどが区間新記録で塗り替えられるのは見るに耐え難かった。
もちろんナイキはルールの範囲内でシューズを開発しているのだろうし、規制強化などというくだらない方向に進んで欲しくはない。今回のナイキの発明によってランニングシューズのテクノロジーに非連続な変化が起きているのは間違いなく、アディダスを始めとする各メーカーの今後の動向も気になるところだ。アディダスはどのように自らの技術であるBOOSTフォームを超え、どうやってナイキに勝負を挑むのか。アディダスは自らのBOOSTフォームというイノベーションのジレンマをどう壊してくるのか。今後の戦略に非常に興味がわいた。
...余談だが、IT業界で変化を恐れる方々も、きっと同じような感覚なのかもしれないな、と。彼らがクラウドコンピューティングの技術を有効活用できないのは、いわゆる黒船的な従来と全く異なるテクノロジーが突然やってきて、これまで彼らが戦ってきた土俵ではない場所での戦いを余儀なくされ、正々堂々と勝負していないような感覚に陥っているのだろうか。結果、何かと理由を付けて新しいテクノロジーを回避するような思考に陥っているのかもしれない。
こんなことを悶々と考えさせられる箱根駅伝だった。