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5年社会科 暖かい土地•寒い土地 〜思考ツールを使った主体的な学びとは〜

はじめに
今回は、5年社会科[暖かい土地•寒い土地]の実践例について書いていきたいと思います。
今回は、子どもたちに取って初めてのジグソー学習を展開した。また、ジグソー学習を行う際に思考ツールを用いて実践してみた。
結論としては、ジグソー学習における思考ツールの活用は大変有効的であり、昨今求められている「主体的な学び」•「思考力、判断力、表現力」の実践するには大変展開がしやすいと感じた。また、一方通行になりがちな社会科の学習の定番として活用することも可能なのではないかと感じた。
それでは、以下授業の展開と今回用いた思考ツールについて詳しく書いていきたいと思う。



1.単元の流れ

(1)5年社会科の学習をはじめて

 今年度5年社会科の授業を展開していく中で、どうしても講義型の授業時間が長くなってしまっていた。すると子どもたちの様子を見ていると、徐々に子ども達の社会への学習意欲が離れていくのが感じ取れた。
そこで、何かのきっかけになればと思い、[暖かい土地•寒い土地]の単元を子どもたちの自由進度学習に任せつつ、足並みを揃えるためにジグソー学習を展開した。

(2)実施単元の流れ

実際に実施した単元の流れは以下の通りである。

1次:本単元の目的説明&暖かい土地と寒い土地の気候について全体で確認
2次:ジグソー学習①〜エキスパート会議〜
3次:ジグソー学習②〜班会議〜
4次:PRポスターづくり
5次:PRポスターのシェア
暖かい土地•寒い土地の特徴&共通項まとめ

上記の単元の流れの中で特に今回注力した、ジグソー学習①②とその際に用いたオリジナル思考ツールについて[2.本単元のキーポイント]でより詳しく記述する。


2.本単元のキーポイント

(1)オリジナル思考ツール〜目玉焼きチャート〜

 思考ツールを用いて、グループワークをさせることでより、思考が深まり、議論も有益になると考えた。しかし、既存の思考ツールの中では今回の私の実践で十分に活躍させることができないと思っていた。そこでオリジナル思考ツールを作ることとした。
 どのような思考ツールを作りたかったかというと、
①個人が調べたことをとにかく付箋に書き出す
②グルーピングし、重要度が高いものとそうではないものの仕分け
③重要度の高いものを比較し、共通事項を見つける
 この三段階を一枚の紙の中で集約し、その時間にやったことが視覚的にわかりやすいものにしたかった。

そこで、既存のXチャートを応用させ、下の画像のようなチャート「目玉焼きチャート」とした。

目玉焼きチャート(白身)の部分
※Xチャートです。
目玉焼きチャートの(黄身)の部分
※これを白身の上にのせます

 使い方は、初めはXチャート状態からスタートし、たくさんの自分の考えを出す。
 その次にグルーピングし、最終的に中心の黄色の部分に重要度の高いものを貼り、共通事項を言葉でまとめさせた。
 子どもたちへの指示としては、初めは白身の部分に自分の考えをとにかく出してみよう、次は黄身の部分に考えをまとめてみよう。と目玉焼きということに言葉を絞る指示が通りやすかった。

(2)ジグソー学習①〜エキスパート会議〜

 今回は教師側が班を指定した上で、人間関係など教科学習とか関係のないトラブルが起きる可能性を極力排除した形で行った。
 まず、班の中で4項目のエキスパートを決めてから学習をスタートした。4項目は、[家や暮らし]、[農業]、[観光]、[文化]である。
 子どもたちは各々の観点から、自分の担当の調べ学習を行った。
 今回、“個”でできるもの=調べ学習は宿題とした。つまり、学校の授業で行ったのは学校に来なくてはできないこと=集団で行うこと=グループワークのみである。
 エキスパート会議では、宿題で調べてきたことをそれぞれの項目ごとに集まり、目玉焼きチャートを用いて議論した。
 そうすると、例えば北海道の観光のグループは、雪まつりやスキーなどメンバー全員が書いてる事柄などが浮かんでくる。そうすると、目玉焼きの黄身の部分には雪まつり、スキーなどの言葉が入り、雪を用いた観光が盛んなどという共通事項を見つけることができていた。
 この際、教師の言葉がけとして、雪・台風・温暖・すずしさ、などの「気候」につながるような言葉を意識的に声がけをすると次時の活動につながりやすい。


(3)ジグソー学習②〜班会議〜

 ここでは、前時のエキスパート会議で出てきた各項目ごとの意見をそれぞれの班に持ち帰り、[家や暮らし]、[農業]、[観光]、[文化]それぞれに共通していることはないかを見つけさせ、その共通事項からその土地のキャッチコピーを考えさせた。
 ここでも目玉焼きチャートを用いて、まずは白身を埋めさせ、次に黄身中にどんな共通事項があるかを考えさせた。そうすると、例えば沖縄のグループは、一年中暖かい、台風が来ると言った言葉が出てきた。
 次にこの黄身の中のことを短いキャッチコピーにまとめる活動を行った。
 すると、[あたたかい土地 沖縄に めんそーれ]、[一年中寒い土地]などといった気候に的を絞ったキャッチコピーが出てきた。


3.振り返りと考察

(1)ふりかえり

 今単元のふりかえりとしては、2点ある。
 一点目は、思考ツールを用いたことで、子どもたちの思考が明確になったということである。特に
  ①Xチャート(白身)での単語出しから
→②(黄身)への共通項の言葉出し
→③キャッチコピーの作成
この3つのステップが子どもにとっては乗り越えるには適当なハードルの高さであったと感じた。子どもたちに投げて子ども自身が興味のあるトピックについて調べ、まとめるといった初めての授業スタイルであったが、このような流れが自由進度学習、ゆくゆくは高校生の「総合的な探究の時間」などへと繋がっていくのではないかと感じた。そのため今後も単元を選びつつもなるべく子どもが考え、調べ、まとめるような単元の進め方を研究していきたいと思う。
 2点目は、教師がかなり気候にフォーカスした言葉がけをしたことである。これには一朝一夕あることも承知しているが、今回の学習のキーポイントはあくまでも「気候の特徴を活かしてそれぞれの地域では生活をしている」といくことである。そのため本来であれば、子どもが(白身)で言葉出しをした時点で、共通項が「暖かい」、「寒い」と言った気候に関する言葉に気づいてほしいのだが、なかなか厳しいところがあった。そのため、教師から「どうしてプロ野球のキャンプ地になってるのかな?」、「どうしてスキーや雪まつりなどを行って観光客を集めることができるのかな?」と言った言葉がけを各班にした。そのことにより、子どもたちは共通項は[気候]であることに気がつき、キャッチコピーまで上手に学習を進めた。今後はなるべく教師側から言葉がけをしなくても上手く進めることができるように子どもたちへアプローチを模索していきたい。
 以上2点が主なふりかえりとなるが、全体を通してみると子どもたちが主体的に学習を進めていく、良い単元になり、流れとしても非常にスムーズにいったのではないかと感じている。そのため今後も継続してこのような授業スタイルを実施していきたいと考えている。

(2)考察

 昨今、求められている[主体的な学び]を本格的に授業で実施しようとすると、教師側の入念な準備と計画する力、そして授業中はファシリテーションする力この二つが必要であると感じた。
 まずはどのように学習のキーポイントまで導くかの準備とそのために子どもたちを学習させる計画が求められる。これは従来の授業準備でも求められていたが、大きく違うのは、[教科書教える]のか[教科書教える]である。主体的な学習の時間を取るためには教師は教科書で教えていかなければならない。
 次に授業中のファシリテーション力である。子どもたちの学び合い中の声掛けはもちろん、その時間にどこまで学習を進めることができるのか時間と学びの様子から逆算をしながらファシリテートすることが必要となる。これは今までの授業スタイルではなかなか求められるものではなかっため、今後教師が身に付けていく必要がある。

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