Xデザイン学校第4回

今回のXDAは、個人的には神回でした。私の中では、大きく3つの事柄についての学びがあったので、その話をします。

インタビューの難しさ

事前インタビューを2人に行う中で、その難しさが具体的にどのようなポイントにあるのかを改めて考えました。

そもそも人選が難しい
インタビューの精度は、インタビュアーのスキルと、インタビュイーの引き出しという2つの側面が大きく作用します。インタビュアーのスキルは頑張って伸ばすことが出来たとして、本当にこのインタビュイーが良いのかどうかは、あとでないとわからない部分もあるのだと思いました。なので、成功失敗の要因を分析するためにも丁寧な論理づけが必要です。

ちょうどいい加減の関係が必要
インタビューの1人目は親しい人を対象に軽い気持ちで行ってみたのですが、あまりにもこちらのことを理解している人にインタビューをすると、こちら側の意図を汲んだ上での発言になるような気がしました。信頼関係をある程度築けないと良い深掘りは出来ないとはいえ、自分の中から真剣な意見を出してもらう上では、関係が深すぎることも返って支障になるかもしれないと思います。

分析の難しさ

調査の間で立った仮説は、まだ検証されていない
調査〜分析を、分割せずにやってしまいがちだというお話を聞いて、そもそもなぜそうなりがちなんだろうかを考えてみました。
私たちは(少なくとも私は)、目の前にタマネギとニンジンとジャガイモが並べられると、反射的にアレを想像します。この反射は自らの経験にひもづくものなので、簡単には引き剥がせないものです。
しかし良い観察者は「目の前にタマネギとニンジンとジャガイモがある」以上の情報へと加工しません。ここからカレーが生まれるだろうという予測は立てつつも、「目の前に何があるのか」に集中することが出来ます。
観察やインタビューの中で、閃きのようなものを得ることは、むしろ良いことなのかもしれません。しかしその閃きはまだ仮説であり、しかも検証する段階でもない、ということは、深く肝に命じておかねばならないと思いました。

気持ちや体験に目を向ける
気持ちや体験に目を向けるには、相当に積極的な態度が必要です。
私たちのチームでは、便利・早いといった価値が最終的な成果として表現されていましたが、これは気持ちや体験へのひも付きが強いものではありません。加えて、聴く前からある程度想像がついていたことでもあると思います。
これは私見ですが、嬉しいパターンを導出する工程では、出た答えが絶対的な強さをもつ正解であるほど価値はないように感じています。つまり、個人的な経験や感覚を解き放たないと、嬉しいパターンが生まれません。

飛躍と腹落ち
嬉しいパターンというのは、純粋に事実によってのみ導かれるものでもありません。推論を通して(難しい言葉を使うと、アブダクション的な考え方を通して)そのきっかけが得られるものなのだと思います。ソシオメディアの上野さんが的確にこれを表現しているので是非みてみてください。
上位下位分析や価値マップというのも、あくまで見通しを立てやすくするためのツールであり、工程に素直に従えば必ず導出されるものではありません。どこかで飛躍が必要で、その飛躍は自らの経験や感覚が大きく影響しています。
そして、仮説段階の嬉しいパターンを検証するための、最初の方法が「腹落ち」なのだとも思います。分析を通して「ほんまや!言われてみれば、これはあるわ!」みたいに腹落ちしないパターンが並んでしまった時点で、根本的な間違いを犯しているように思います。

原宿へ行く
先生から、唐突に「原宿へいけば」というお話を聞きました。一瞬戸惑いましたが、過去のXDAでの経験から、こういうことを言いたいのかな、というのはすぐに察しがつきました。
それは、「君たち、脳がおじさん化しているよ?」ということです。
安さ・速さ・便利さといった価値を結果として出してしまっているというのは、つまり当たり前の価値観や正解に縛られてしまっているということです。
人の気持ちには多分、いくつものレイヤーみたいなものがあって、一番奥底には「幸せになりたい」というのがあるのだと思います。(書いてて思ったのですが、これが上位下位分析ですね。)これは時代に関わらず普遍的な感覚です。
ただし、どう幸せなのか、何を幸せと感じるのかは、時代によって変わります。その時代の当たり前、流行、特別なもの、大切にすべきものが違うのです。
まずはこういう違いがあることを、目の当たりにしなくてはなりません。原宿へ行くとは、そういうことなのだと解釈しています。

チームビルディングの難しさ

そもそもなぜこの失敗をしたのかは、チーム5の中でも合意が取れていると思うのですが、おそらくチームビルディングがうまく行っていないことなのだと思います。
インタビューが思うように進まなかったのは、足並みを揃えることを気にしすぎていたからかもしれませんし、議論の中で思い切りが足りない(気持ちの話が出来ない)のは、相互理解がまだ出来ていないからなのかもしれません。

悶々としつつチームビルディングについて調べてみたところ、タックマンモデルという興味深い考え方と出会いました。
詳しくはリンク先を読んでいただければわかると思うのですが、足並みを気にしたり、思い切りが足りないのは「形成期」の特徴です。そして、我々の議論がもっとも活発になった最後の話し合いで、混乱期へと突入したのだと思います。

ここで求められる動きは、以下のようなものだと言われています。

- コミュニケーションと情報の「質」が重要となる
- お互いの価値観のズレが対立を生み出すことになるため、単なる飲み会やゲームでは問題が解決されない
- お互いを理解するための「対話(ダイアローグ)」が有効
- メンバーの意見を表面化させ全員が納得するまで話し合う
- 課題解決に対してトップダウンによる押し付けはせず、メンバー全員で課題解決アプローチをみつける

なるほど、飲み会は必要かもしれません。


おまけ:推論と検証のフレーム

最後に、推論と検証のフレームについて、面白い組み合わせがあったので紹介します。

https://note.mu/rtomyl/n/n67f04d3feb2d

①アブダクション:
観察を通じて、「驚くべき事実」を見つけ、『説明仮説』を作る
 ↓
②演繹法:
『説明仮説』を大前提としておき、他の事象をみて、結論が正しいかの検証を行う
 ↓
③帰納法:
検証を繰り返し経験を積み重ねることで、仮説が正しいことを証明する

これは、結構まんまで嬉しいパターン〜プロトタイプの流れなのではないかと思っています。

また、これもまた仮説なのですが、人の考え方の癖はこの3つのうちのどれかに寄っている気がしています。自分の考え方の癖が、どのあたりにありそうかを意識することで、デザインのプロセスごとに最適な動き方や考え方ができるのではないでしょうか。

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