中井久夫先生のささやかな思い出 1
雑誌「現代思想」から中井久夫特集がでたので一読してみた。山中康裕さんの文章など「お別れの会」の模様も興味深い。
何度かお会いして、いつも緊張するので、ある臨床心理士になぜ緊張するのか問うとお返事は「中井先生と会って緊張しない人っているのですか」であった。そうなのか、当時、神戸大で学ばれた2人の医師から伺っていた話しから、さほど緊張していなそうであったので、多くの人が緊張するとは意外だった。
のちのち、自分もまた人を緊張させてしまう性癖であることに気づくことになった。
東京に中井先生がいらしていたある時、その時は確か松沢病院の近くの研究所にこられた時のことだと思う。数名が同席しての談話のとき何かの用事で何名か離席され、わたしと中井先生が机をはさんで座っていた。10分だったか緊張と沈黙のなかにいることとなった。私からお話しすることもなかったので、精神鑑定されたある事件の労にそれとなく触れると、まだ事件には謎があるとおっしゃる。それは、すでに公開されている事実ではあるが不思議そうにお話しされたのが印象的。
再び長い沈黙があり離席されていた方々が戻られた。
波長あわせ。
かつての私が変わり、緊張感の中で沈黙を保っても数分いられるようになったことを非言語的にご報告できたように思った。