ハン・ガン著『ギリシャ語の時間』
今年2024年のノーベル文学賞作家の作品。
ギリシャ語は古代ギリシャ語のことで作品では語学だけでなくギリシャ哲学の話も出てくる。おそらく教える人が哲学を介してギリシャ語を学んだのであろう。
時間て、、、、アリストテレスの時間論か、、、と深読みするまもなく、(たぶん作者は既に知っているのかもと思いつつ)話は流れる。
作品では古代ギリシャ語にみられる、能動でも受動でもない中動態について触れられている。
中動態は言語を使用する主体のあり方について学術的に話題になったこともあり、作品発表当時はかなり先進的、だったかも。
翻訳者の斎藤真理子さんは、訳者あとがきで、日本における中動態の専門書をしっかり紹介されている。
古代ギリシャ語は現在日常会話で発話する人がいない。いわば死せる言語(おもに哲学では必須かも 作品ではガレノスの解剖書がでてくる。
医学でギリシャ語でのこっているのは何かあるか、、、ヒポクラテスの固有名くらいかも。
昔、所属していてた医局の野球チーム名が「めじろデュナミス」だったなぁ。あれエネルゲイアだったっけ。)
それを習得しくことと、自分の言葉として使用し思考していくこと、そのさきにあることが静かに、静かに書かれている。
文字と身体について
書かれた言葉が、相手に届くことについて
言葉と身体が、振るえるように伝わることについて
「この本は、生きていくということに対する、私の最も明るい答え」と帯にある。
当然といえば当然であるが、何か生きていくことについての見識がえられるわけではなく、
病からの回復でもなく、
主観だけで織りなされた長い長い文章 に、あわせて、だれかの、呼吸の音を聞くような、つらなりを読む体験。