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経済で読み解く日本史②<安土桃山時代>

今回は、上念司『経済で読み解く日本史<安土桃山時代>』(飛鳥新社 2019)を独断と偏見でまとめます。

信長、秀吉の実績と経済政策

室町時代、貨幣不足により深刻化したデフレ。
支那から輸入される物品や銅銭を支配し、全国各所に関所を作って物流網を掌握、荘園と寺内町を運営し、権門政治を行う寺社勢力。

このような利権だらけの巨大勢力と対立し、経済の安定化を図ろうとしたのが、織田信長です。
信長が行った改革のおかげで、経済活動の主体が、寺社から武家、一般庶民へと移りました。

残念ながら、信長は最後までその仕事を遂行することはできませんでしたが、豊臣秀吉がその仕事を引き継ぎます。

二人が生きた16世紀後半は、国際的な貨幣制度の変容と、石見銀山の銀を求めてポルトガル、スペインが日本に渡来するなど、世界がグローバル化した時代でもありました。

だからこそ、信長と秀吉は、国内の基盤をいち早く整え、経済を安定させ、外国勢力の動向を注視しなければいけませんでした。

では、具体的に信長が着手した改革はどういったものがあったのでしょうか。
その前に、大前提として、信長は商人として感覚が研ぎ澄まされていました。そのため、経済的に合理性がある政策を積極的に行っています。また上手くいっている既存の仕組みを改良しながらその制度を取り入れています。

それでは信長が行った様々な改革を見ていきます。

①検地をおこなって所有の関係を整理する。
検地によって領地を石高にし、領地のデジタル化を図りました。
検地を実施する際に、「指出」という形で荘園主に自己申告させ、年貢をごまかせないようにしました。
また、農民に直接課税することで荘園主の中間搾取を防ぎ、中央政府の税収を増やそうとしました。

②城下町の建設と兵農分離を行う。
寺内町で繫栄していた仕組みを上手く活用します。

③楽市楽座を推進する。
城下に住む人は誰でも、経済活動に参加できるようになりました。

④関所を廃止し、道路、橋などの交通網を整備する。
これにより物流が円滑化し、流通革命が起きます。
また近江から京都、岐阜を結ぶ「シーレーン」の安全性を確保されました。
道路網の安全が保障され、インフラの充実がやがて商業活動に大いに利用されます。

⑤堺などの自治都市を掌握して統制下に置く。
これはむしろ現状維持を約束する代わりに利用したと言えます。

⑥撰銭令によって貨幣の流通の円滑化を進める。
貨幣不足によりデフレ経済を招いたこと、ローカルごとに交換レートが異なっていた事、私鋳銭の普及により悪銭が流通したことなどがあり、貨幣制度を整えようとしました。

しかし、信長の撰銭令は失敗します。撰銭ごときでは爆発的に増加する貨幣需要には応えられませんでした。もっと根本的な貨幣改革、独自通貨の発行などが必要でした。

⑦城割を行う。
敵対勢力の武装解除と治安維持を目的として実行しました。

⑧宗教勢力を統制する。
教科書では、上記のように言われていますが、
むしろ信長は、信教の自由は認めていました。また寺社勢力と必ずしも敵対していたわけではありませんでした。
しかし、政治的、軍事的、地政学的な理由で自分と敵対勢力には容赦がなかったみたいです。

⑨これまでの常識を覆す預治思想。
これは、伝統的な主従関係のあり方を否定し、大名クラスの家臣個人の実力を査定し、能力に応じて領地、領民、城郭を与える考え方です。
秀吉も農民出身でありながら、実力が評価され、信長の家臣になっています。

このように信長は様々な改革を行いました。

しかしながら、
著者の上念氏は、「信長の本当の凄さは、ゼロから1を作る出したこと」であると強調します。

当時、日本の権力、経済、軍隊を牛耳っていた寺社勢力と戦い、様々な改革を実行し、天下統一寸前までいった、このゼロ1を作り出す能力こそが信長の真の凄さなのです。

そして信長の功績を受け継ぎ、1を10、100にしたのが秀吉でした。

秀吉は、信長が行った検地を引き継ぎ、土地のデジタル化を進めます。
更には、刀狩令、賊船禁令、瀬戸内海の海上覇権を握り、
比叡山延暦寺、臨済宗、本願寺などの寺社勢力などの既得権益を打破します。そして秀吉は、念願の天下統一を成し遂げました。

このように、中世の既得権を破壊するような信長の0から1を作り出す改革は、しっかりと受け継がれ、1を10、100にした秀吉は、最終的に天下を統一するのでした。

まとめ

今回は、上念司『経済で読み解く日本史<安土桃山時代>』(飛鳥新社 2019)を独断と偏見でまとめました。

「経済で日本史を読む解く」のが、本書の醍醐味なのですが、私のまとめ方が悪くて、明と日本の金融政策について詳しく書けていないなと思いました。この点、次回から改善したいと思います。


この時代、お金の量が増えれば、生産が増えるという、いわゆるリフレ派の理論がまさに当てはまる時代だと思います。
私は、まだ金融政策のことを完全には理解していないですが、上念さんも解説も非常に分かりやすく、とても面白いかったです。

天下統一後、国内に迫りくるキリスト勢力との攻防、朝鮮出兵の失敗の本質など、
今回は、まとめきれていないですが、非常に興味深い内容ばかりです。ぜひ一度読んでみてください。




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