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AI時代に改めて考えたい、新規事業開発の原理原則
こんにちは。IVRy(アイブリー)代表の奥西です。
IVRyのBizDevチームが新規事業開発について、ブログリレーを行うということで、先鋒として書かせていただいています。
AI FAX、Business Phone、Analytics... IVRyで続々と立ち上がる新プロダクトの裏側で活躍するBizDevは何を考え、どう向き合っているのか。
— IVRy(アイブリー)|対話型音声AI SaaS (@IVRy_jp) January 29, 2025
"新規事業開発"をテーマに、IVRyのメンバーが9週連続で綴ります。
2月5日(水)から毎週水曜日、noteにて公開予定📝 #IVRy #BizDev #BizDevリレーブログ pic.twitter.com/ZuhgzBrmhJ
最近、IVRyの事業開発からでたプレスリリースたち(毎月のように出てると思う)
実は、私の経歴は常に新規事業開発とともにありまして、大学院の時代には有志でアプリ開発をいくつか行ってサービスローンチをしたり、新卒で入ったリクルートの時代には、保険事業の新規事業立ち上げ〜グロースのPdMとして、事業戦略・計画策定〜プロダクトロードマップ策定・実行まで幅広く行ってきました。
また、起業してIVRyにたどり着くまでも毎月新規事業を1つ作り、7つ目でIVRyが出来上がったという経緯もあり、新規事業開発はたくさんの失敗とほんの少しの成功という経験があります。
そんな経験を少しでもシェアできればという気持ちでこの記事を書いて行ければと思います。
新規事業開発の定義
新規事業開発と聞いて、皆さんはなにを思い浮かべますか?
なんとなく「既存の事業に囚われず、新しい事業を作ること」みたいなイメージを持つ方が多いんじゃないかな?と思っていますが、違うと考えています。
ChatGPT o1 proに聞いてみた新規事業開発の定義↓
新規事業開発(New Business Development)とは、企業や組織が既存の事業や製品・サービスの枠組みを超えて、新たな市場や顧客セグメントに向けたビジネスを創出するための一連の活動を指します。具体的には、以下のような要素を含みます。
1. **機会の発見・探索**
- 社会や市場の変化、テクノロジーの進歩、顧客ニーズの多様化といった背景から、新たなビジネス機会を見いだす。
- 新しい市場領域や課題に対して、自社のアセット(技術、ノウハウ、リソースなど)を活用できる可能性を模索する。
2. **アイデア創出・検証**
- 発見した機会に基づき、新しい製品やサービス、ビジネスモデルのコンセプトを具体化する。
- 仮説検証(PoC:概念実証)、MVP(Minimum Viable Product)の開発などを通じて、ユーザーや市場からのフィードバックを得る。
3. **事業モデル構築**
- 収益構造や提供価値、マーケティング・販売戦略、運用方法などを整理し、持続的なビジネスモデルを設計する。
- 必要に応じてピボット(方向転換)を行い、より市場に適合した形へ修正を重ねる。
4. **実行・拡大**
- 本格的な市場投入後、顧客やパートナーからの評価を踏まえて事業を拡大・最適化していく。
- 新規事業を組織として運営するために、適切な人材配置、財務計画、社内外の連携などを整備する。
新規事業開発は、企業の持続的成長や競争優位の確立において重要な役割を担います。既存の事業領域に依存しすぎると市場や技術の変化に対応しきれなくなるため、新たな価値を創出する取り組みとして位置づけられています。
上記で書かれているように、自社アセットを活用し、新しい市場領域や事業モデルを展開していくことが「新規事業開発」なので、既存事業のアセットがあるのであれば、最大限活用することが「新規事業開発」の基本だと考えています。
新規事業を考えるときの原理原則
基本的に、新規事業開発は古から多くの賢く偉大な方々が考えてきてる分野(産業革命のあたりからかなりの歴史があります)だと思っているので、古のフレームワークを用いて考えることがなんだかんだ原理原則だと考えています。
(コンサルの方々が使うのでフレームワークを毛嫌いする方がいますが、私はとても良い思考の整理方法と捉えているので、フレームワーク好きではないですが、説明する用としてよく使っています)
↓本が得意じゃない人でも読める経営戦略やビジネスモデルの歴史
バリューチェーンから次の1手を考える
そのため、まず考えるべきは、自社事業を含む業界のバリューチェーンを明らかにすることです。
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そして、バリューチェーンが明らかになった場合、隣接するバリューチェーンを伸ばしていくことが基本だと考えています。
この方法は、「①自社で作る、②提携する、③M&Aする」があり、これらの3つの選択肢から最も効率の良い方法を選択し、バリューチェーンを伸ばしていくことが新規事業開発における初手だと考えています。
この選択は3C分析をすることで、割と整理することができると思っています。
「自社のアセットで①ができるのか?」「競合の速度を考えると①を待てるのか?」「②③の現実的なパートナーは存在するのか?」など、3C分析の中で自ずと情報は揃いますし、観点としても基本的に考えるべきポイントは抑えられていると思います。
※参考:3C分析とは(ChatGPT o3 mini作)
3C分析とは、企業が市場で成功するための戦略を立てる際に、以下の3つの「C」を軸に環境や状況を分析するフレームワークです。
1. **Customer(顧客)**
- 顧客のニーズ、嗜好、購買行動、市場規模などを分析します。顧客が求める価値や問題点を明らかにすることで、どのような商品・サービスが支持されるかを見極めます。
2. **Competitor(競合)**
- 同業他社や市場で競争する企業の動向、強み・弱み、戦略、ポジショニングなどを調査します。これにより、自社がどのように差別化できるか、競争優位性をどのように築くかのヒントを得ます。
3. **Company(自社)**
- 自社の内部資源、技術、組織力、ブランド力、強み・弱みを把握し、どのような戦略が実現可能かを検討します。自社の能力と市場のニーズ、競合の状況との整合性を考慮することが重要です。
この3Cの視点から市場環境を包括的に把握することで、企業は自社の戦略をより明確に定め、競争に勝つための効果的なアプローチを構築することができます。3C分析は、マーケティング戦略の策定や新規事業の立ち上げ、事業再編など、様々な経営課題に対して有効な手法とされています。
PEST分析で市場構造の変化を見定める
また、新規事業開発において、特に大事にしないといけない点はPEST分析だと思っています。
参考:PEST分析
PEST分析は、企業や組織が事業戦略を策定する際に、外部環境のマクロ要因を体系的に整理し、理解するためのフレームワークです。PESTは以下の4つの視点から構成されます。
1. **Political(政治的要因)**
- 政府の政策、法律、規制、政治の安定性、税制、貿易制限、労働政策など、企業活動に影響を与える政治的な側面を分析します。これにより、どのような政策リスクやチャンスが存在するかを把握できます。
2. **Economic(経済的要因)**
- 経済成長率、為替レート、インフレーション、失業率、消費者の購買力、景気循環など、経済全体の状況や動向を評価します。企業の収益や市場需要に直接的な影響を及ぼすため、重要な分析対象となります。
3. **Social(社会的要因)**
- 人口動態、文化、価値観、ライフスタイル、教育水準、消費者の嗜好や行動パターンなど、社会的な側面を検討します。これらの要因は、製品やサービスの需要、マーケティング戦略に影響を与えます。
4. **Technological(技術的要因)**
- 技術革新、研究開発(R&D)、情報通信技術、インフラの整備状況、技術の普及度など、技術面からの影響を評価します。新たな技術の登場や技術革新は、市場環境を大きく変える可能性があるため、先を見据えた戦略が求められます。
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このように、PEST分析を実施することで、企業は自社に影響を与える外部環境の大きなトレンドや変化を把握でき、リスク管理や戦略立案に活用することが可能になります。たとえば、新市場への進出や新規事業の検討、既存事業の見直しなど、さまざまな経営判断の基盤として役立ちます。
新規事業開発において、市場が伸びる場所にポジションを取ることは最も大事と言っても過言ではないほどに大切です。
市場が伸びる場所とは、古から決まっていて、PEST分析で大きな変革が起こる場所です。
直近だと、コロナ禍でSocialの大きな変化(全員が外出できないという歴史上でも起きたことのない変化)があったり、過度な円安や金利の変化によるEconomicの大きな変化も起きています。
そういった場所では、ビジネス構造が大きく変化していることが多く、営業活動はリモートメインになりましたし、EC比率も大きく増加しました。
一方で、Political, Economic, Socialな市場構造の変化は、急速に市場が伸びますが、一時的であることが多いなという印象で、Technologicalな市場構造の変化は産業全体への市場変革と、10-20年かけた大きな変化へとつながっていることが多いです。
※例えば、インターネットの普及やスマートフォンの普及、クラウド技術の進化などをイメージしていただければ、徐々にだけど大きく変わっていったことがわかると思います。
そのため、Technologicalな変化のタイミングでは、市場参入の機会がたくさん存在するため、AIの大きな進化のタイミングである今はとても良い機会がたくさん転がっていると思います。
4Pで圧倒的な価値を整理する
場所と機会が明確になれば、あとは「どんな価値を提供するか?」です。
新規事業開発で最も難易度が高いポイントはここだと思っていて、顧客から圧倒的に求められ、かつ、競合が真似しづらいポイントを貫く必要があります。
※参考:4Pとは
4Pとは、マーケティング戦略を策定する際の基本的な要素を表すフレームワークで、以下の4つの要素から構成されています。
1. **Product(製品)**
- 顧客に提供する商品やサービスそのものを指します。製品の品質、デザイン、機能、ブランド、パッケージング、バリエーションなどが含まれます。顧客のニーズに応えるために、どのような特徴を持たせるかが重要です。
2. **Price(価格)**
- 製品やサービスに対して顧客が支払う価格設定を意味します。価格戦略、割引、支払い条件、価格弾力性など、収益性と市場競争力を考慮した戦略が求められます。
3. **Place(流通)**
- 製品が顧客に届くまでの流通経路や販売チャネルを指します。販売店、オンラインチャネル、物流、在庫管理など、どのようにして製品を効率的に提供するかが焦点となります。
4. **Promotion(プロモーション)**
- 製品やサービスを顧客に認知してもらい、購買意欲を喚起するための広告、広報、セールスプロモーション、パーソナルセリング、デジタルマーケティングなどの活動を含みます。
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この4Pは、製品やサービスを市場に効果的に提供し、競争優位性を築くためのマーケティング戦略の骨組みとして広く活用されています。企業はこれらの要素をバランス良く組み合わせることで、ターゲット市場に対して魅力的な提案が可能となります。
資金力があれば、勝者の戦略として、PayPayみたいな「圧倒的なPromotionで殴る」という手法が活用できるのですが、これが実現できるスタートアップを見たことはありません。
また、特にソフトウェア産業においては、真似ができないProductを作るということはほとんど困難であり、いずれ真似される前提でいかに複数の要素で真似しづらいポイントを作るか?そして、ビジネスモデル上真似できない構造を作るか?がポイントになると考えています。
例えば、Priceではバリューチェーンの組み合わせにより、クロスセルを見越して、ある商品をフリーミアムで提供することや、獲得CACを他社よりも踏める状況を作る等も存在します。
また、オペレーションの磨き込みや組織構造の作り方によって、営業効率や生産性の効率を高めることで、TOYOTAのように他社よりも優位性を持つことも可能です。
また、AI時代には、技術者不足によりProductがすぐには真似できないため、瞬間的に市場が空いているタイミングがあります。
このタイミングがスタートアップにとっては、数十年に1度の大きなチャンスなんだと思います。
そして、我々スタートアップにできることはなにか?と聞かれると、他社よりも早く顧客ニーズに気づき、他社よりも早く実現し、他社よりも早くブランドを確立することを常に焦りながらやることが大事なんだと考えています。
「Fast is better than slow.〜遅いより早いほうが良い〜」が原理原則です。
リーンにやるのみ
最後に、事業開発のPMFプロセスはリーンが原則です。
リーンでやろう!という人の中に、仮説なきアクションをたくさん行う人たちがたまにいますが、これは間違っていると思います。
「仮説があるから、結果の差分がわかり、振り返ることができる」だと思っているので、常に仮説を持ち、常に期限を切り、その前提でアクションを行ったときの差分から、自分たちのプロダクトやチームの改善点を振り返り続ける。
テキストで見ると簡単そうに見える、この凡事がなかなか難しいですが、この凡事を徹底的に実行できるチームは100あって5つぐらいしかないかもしれません。
実はこの時点で競合の95%を倒せていると考えると、凡事徹底を行うことの意味がわかってくるのかな?と思います。
そして、なによりも(まだ見ぬ顧客も含め)顧客は我々の革新的なサービスを待っています。
顧客を1秒でも待たせないために、日々の仮説と実行をどこまで追求できるのか?が大事なんだと思っています。
余談ですが、根を詰めすぎて2-3ヶ月でエンジン切れすることもあってはいけないので、適宜余白を作って、長距離走だと思って走ることが大事だと思っています。
なぜならば、新規事業の打率は高くても1割なので、新規事業開発において、たくさんの失敗が生まれます。
ひとつひとつの失敗に一喜一憂していると、リアルにメンタルがやられるので、常に半年後・1年後の明るい未来を楽観的に想像し、そして、悲観的に実行する。というマインドセットで挑むことをおすすめします。
※私は過去20弱ぐらいの大小新規事業に関わってきましたが、うまくいってるのは2個しかないです笑
最後に
IVRyは新規事業を常に5-10個ほど回し続けている会社です。
それは、新規事業の成功確率と成功するまでにかかる時間を知っているからです。
事業が踊り場に来てから、新規事業をはじめてもうまくいかないのは確率論とスケジュール論として当たり前で、踊り場にくる5年前からは仕込んでおかないといけないと思っています。
IVRy自体はまだまだ10年以上伸び続ける事業セグメントだと思っていますが、より大きな成長を考えながら、一方で悲観シナリオが起こっても大丈夫なように新規事業を開発し続けているのです。
そして、なにより奥西個人は新規事業が大好きです。
新規事業によって、世の中になかった価値が生まれる瞬間と、そのサービスを顧客に届け、感動していただける瞬間が大好きです。
そんな瞬間を一緒に感じ、一緒に喜んでくれる仲間を募集しています!
事業開発経験は問いません。誰でもウェルカムです!
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