【記事抜粋】排泄について(山際寿一(2006),日本経済新聞/夕刊「あすへの話題」2006年12月21日)

「人間の子どもにとって、ひとり立ちする前に経験する難行が二つある。 食卓とトイレの作法である。 これは、人間が霊長類の一員であって、その遺産を色濃く身体に持ち続けていることからくる問題である。昼行性のサルの多くは甘いフルーツを食べて暮らすように進化してきた。 これは植物との共進化の産物である。 サルたちの故郷にあたる熱帯雨林では樹冠が日光をさえぎり、林床まで光が届かない。 そのため種子がそのまま地面に落ちても、なかなか成長できない。 そこで、食物は甘い果肉を用意し、動物に食べてもらって、種子を運んでもらうように進化したのだ。… 人間の体はつい最近まで、おいしい物があれば迷わず手を出し、勝手気ままに排便するように進化してきた。 子どもたちはその習性を受け継いでいる。 だから、食卓の作法を守り、トイレで排便する都市文化のルールを覚えるのは至難の業なのだ。 … それは、生まれつき決まった場所で便の処理ができる猫たちとは違う、霊長類の習性なのだと理解してあげたほうがいい。 … 」

ブログ「生活と人間行動」の記事(2006年12月24日)再記。

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