みしま遼子

長らく大半の記事を非公開としてきましたが、徐々に再公開始めました。 新作も少しずつ買いています。 美しいもの、おいしいもの、ディープなものが好き。 どうぞよろしくお願いします。

みしま遼子

長らく大半の記事を非公開としてきましたが、徐々に再公開始めました。 新作も少しずつ買いています。 美しいもの、おいしいもの、ディープなものが好き。 どうぞよろしくお願いします。

最近の記事

【短編小説】トモダチ タクサン アタシハニンキモノ

 とある女は、友達が多いことを何よりの誇りとしていた。言い換えれば、友達の多さをステータスとしているようなところがあった。  女は、世間様の役には立つがけして楽ではない職についていた。毎日がため息と辛苦の連続であったが、女がその仕事…正確にいえば職種…から離れられないのは、単に適性の問題であった。  平たくいえば、その職種以外に就くことは極めて困難なのである。  そうなると「友達」の存在というものは実に有り難いと思うのは至極真っ当なことである。  女は、きつい仕事が終わ

    • 【雑記】異世界の車窓から

       昨夜は一睡も出来なかった。  いつものように22時過ぎに床に就いたが、ウトウトしはじめた0時少し前、隣室からの騒音により完全に目を覚ましてしまった。  隣人には、先日も午前2時頃に騒音にて起こされ、そこから30分ほど眠れず、元来睡眠の質がけして良くはないが睡眠に幸せを感じる私は、当然ながら腹を立てた、ということがあったばかりだった。  昨夜も、腹を立てるところまでで止めておけばよかったのだが、よりによって、私の元ルームメイトを廃人に追い込んだ配信サイトなど開いてしまった

      • 【短編小説】3時間の水音

         これは、私が実際に体験した背筋も凍るような話である。  とある休日に、友人と食事に出かける約束をしていた。  ありがたいことに友人は私をクルマで拾いに来てくれるという。  しかし、私の自宅付近はクルマの出入りがしにくく、申し訳ないので、近くのコンビニで落ち合うことにしてもらった。  また、そのコンビニは立地的に目的地へ向かう道すがらでもあり、好都合だったので、友人も快諾してくれた。  私は、約束の時間に間に合うように余裕を持って準備をし、戸締りや火の元を確認、最後にお手

        • 【雑記】過去からの魔物

           だめだ。書けなくなった。  少し前まで、文章を書いていると文字通り寝食も時間も忘れるほどに夢中になって止まらなかったというのに、突然、書けなくなった。  創れなくなった、という方が正しいかもしれない。現に、いまの自分の状況の説明であればこの通り書けている。  忘れかけていた、過去からの魔物が再び現れた。  その魔物は、私の意欲ばかりか、夢も希望も、体力も…思考力さえも赤子の手を捻るかのごとく、容易に粉々に打ち砕く、底知れぬ破壊力を持つ。  このところ体調不良が続いて

          【エッセイ】あなたが生きていること、それだけで。

           近年「承認欲求」という文言が、ネガティブな文脈中で使われ出して久しい。  やれ、それはただ承認欲求を満たしたいがための行動だ、やれ、あいつは承認欲求の塊だ、等。  SNSでちょっと良いことがあった報告をした程度でも、そんなリプライが付くことがある。  そういった書き込みや文章を見かける度、私は首を傾げざるを得ない。  そもそも、現代社会において、承認欲求が全くない人間なんていないのではないか…私はそう考えるからである。  誰しもが認められて嬉しくないはずはないし、

          【エッセイ】あなたが生きていること、それだけで。

          【エッセイ】「シンプル」の良さと難しさの狭間で

          はじめに  昨日は、またしても突然の休載、大変申し訳ありませんでした。  先週の突っ走り過ぎの余波がまだあるのかもわかりませんが、或いは、このところ気がつくと激しい眠気に襲われるという、夏バテか熱中症手前かという症状に悩まされており、そうなるともう、とにかく休養を取ること以外に術がありません。  作品を完成させたい気持ちや、職務上の心残り等から一旦すべて離れ、ひたすら体と心、そして頭を休ませる…すると翌日には意のままに全てが動き出す、という具合でございます。  猛暑日

          【エッセイ】「シンプル」の良さと難しさの狭間で

          【小説】五月のそよ風の中へ旅立つ

          労咳末期も心穏やかに  昭和15年冬、旅先での無理が祟り、ついに江古田の療養所へ入ったあの人。  私は泊まり込みで看病を続けているも、病状は思わしくない。  しかし今はあの人の心持ちひとつ穏やかでいられたらと私は思い、今日も早朝からあの人の友人にお願いして届けてもらった花や果物や書物、そして描きかけの設計図を手に、病室へ戻る。  もうあの人との遠い将来を夢見ることは終りにしたが、その代わり"一生に添い遂げる"私はそう心に決めた。  そしてまた、自らの中のあの人への気持ち

          【小説】五月のそよ風の中へ旅立つ

          【エッセイ】全ては100パーセント「今」かもね

           未来のためにできること…それが何かと問われれば、私なら「私が今、ここで、この瞬間を100パーセント生きること」だと、迷わず答える。  社会貢献の方法であったり、奉仕の心に基づく答えを出された方からは、何て身勝手な…と思われるかもしれない。  しかし、未来は不確定なもの、過去は不変なものであり、そうなると、私たち人間にとって最も重要なものは「現在」「今」なのではないだろうか。  さらにその不確定である「未来」を確定していくのは、まさに今この瞬間の在り方、生き方であり、言

          【エッセイ】全ては100パーセント「今」かもね

          【小説】雨の刃に傘の盾を・後編

           はじめに  初めて私の作品を読んで下さっている方、ありがとうございます。  今回は先に更新しました「雨の刃に傘の盾を・前編」の続編ですので、そちらを先にお読み頂くことをお薦め致しますが、こちらを先に読み、後ほど前編を読むもまた乙なものと思われます。  お好みでどうぞ…  「おはよう、朝ごはんできてるから、冷めないうちに食べて」  エプロンをかけた妻の友香の声で目覚めた私は、時計に目をやると6時30分。キッチンから食欲をそそる料理の匂いがする。  友香がこの時間に起きて朝

          【小説】雨の刃に傘の盾を・後編

          【小説】雨の刃に傘の盾を・前編

          「夏の終わりの雨は刃となり この胸深く貫く」  何度聴いても果てしなく暗い曲である。しかしそれでも何度も聴いてしまう…かつての音楽メディアとして主流だったLPレコードとやらなら、とっくに擦り切れているであろう。  西條可那子という「伝説の歌姫」の異名を持つ歌手の「雨の刃」という曲だ。  ジャケット写真には、白いワンピースに、長い艶やかな黒髪で顔の半分を隠した女性が、雨に打たれながら天を仰ぐ姿が写っている。勿論それが西條可那子その人である。  2003年発表の曲であるから

          【小説】雨の刃に傘の盾を・前編

          【エッセイ】パキラの彼との楽しい毎日

           私の彼は滅多に動かない。しかし生きている。私と出会った時からずっと。  彼は観葉植物、品種はパキラである。  あれ、今日はエッセイの日では、と首を傾げたそこのあなたには、心よりの大きな拍手をお送りさせて頂きたい次第である。  しかし、まだ完結してもいない自らの拙作をパロディとして発表するなぞ、ナンセンス極まりない…そんな気もするが、思いついてしまったものは仕方ない。走り出してしまった狂気は止められないのである…。 運命の彼はそこにいた  パキラ…観葉植物はかねてから

          【エッセイ】パキラの彼との楽しい毎日

          【エッセイ】チヨコレヰトを耽美的なものに考え出す

          はじめに  今回、本来なら先日ポカしてしまったドロドロミステリー小説を更新する予定であったが、よく読み返して確認した結果、ストーリー上にとんでもない整合性の不備を発見してしまったため、イチからとまではいかないものの、2か3あたりからは書き直して、また後日の更新とさせて頂くことを、まずお許し願いたい。  代替として本日は、先に書いておいた、金曜日更新予定であったエッセイを上げさせて頂くことにする。  ミステリーは、結末をどう変えようとも、整合性がとれていない部分があると、

          【エッセイ】チヨコレヰトを耽美的なものに考え出す

          【エッセイ】報道と心理と私の秘密

           この度、巷ではセンセーショナルな事件が起きた。松本清張先生を敬愛する身としてはここは一本「日本の黒い霧」よろしく、社会派ミステリーを書くべきなのだろうが、創作では流血事件や殺人事件を書いてはいるものの、ホンモノの、特にホットな事件のニュースを見聞きすることを、私は大の苦手としている。  起きてから時間が経った事件についての情報であれば、休みの日に一日中事件史についてのホームページを読み漁っていても平気なのだが(それはそれでどうなのよと自分でも思うし、後から怖くなるのは秘密

          【エッセイ】報道と心理と私の秘密

          【寓話】人の力の及ばぬ者、人の心を持たざる者。

           とある男が、他人に不法行為を働いた。  しかし男は、謝罪することも、贖罪の行動に出ることもなかった。  また、不法行為を取り締まるはずの組織も彼を咎めることはなかった。  結果的に男は、人として生きているにはあまりに恥ずかしい存在となった。  とはいえ、厚顔無恥な男は恥などというものを知らないため、日々のうのうと過ごしていた。  そして、嘘に嘘を重ねつつ、じわじわと深い病みの中へ身を落としていった。  男自身も気づかぬうちに。  しかし、そんな男に、司法の世界から救い

          【寓話】人の力の及ばぬ者、人の心を持たざる者。