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Photo by
daraz
真夜中の切迫
9月の中旬は夢見の悪さが半端なかった。
自分の過去に決着をつける、手放すような夢。
舞台は実家、時世は現在。
キッチンでリンゴを剥いている父が、いきなり私に包丁を突き付ける。
刺される!と思ったところで、はっと目が覚めた。
私は過去、口で失敗したことだらけ。
言ったらどうなるか?ということより、どうしても言いたかったり、条件反射的にポロっと言ってしまう。
そして、失言だったと気づいてから数日間、思い起こしては落ち込むことの繰り返し。
最近、今までのそういう話し方を変えたいな…と思っていて、私はどうしてキツイ言葉を使うようになったんだっけ?と過去を振り返っていた。
そして、一番最初は…父親に勝ちたい、という気持ちからだったことに辿り着いた。
父は昭和の頑固おやじタイプで、激情型。何か気に入らないことがあると、カーっと頭に血が上って、怒鳴ったり、物を投げたりするタイプだった。
私は長子で、兄弟でケンカしたり何かあってもすべて私が悪いことになりよく怒られた。
どうしたら、怒鳴る前に違うと気づいてもらえるのか?を必死に考えていたように思う。
激情している人を止める言葉を、さっと取り出せないのか。と。
今になって思うと、人が激情している場合には、何を言っても火に油を注ぐようなものだとわかる。
が、その頃は自分の気持ちを分かってほしくて必死だったし、殴られる前に何とかしたいという切迫感しかなかった。
そういう言葉が、きっとあるはずだと信じていたし、信じたかったのだと思う。
短くてもパンチの効いた言葉を。
正しくて、鋭い言葉を。
その人の腑に落ちる言葉を。
歳をとって丸くなった父は、今では怒鳴ることもない。
すっかり忘れていた、あの切迫感を一瞬にして呼び起こす夢。
私が使ってきた言葉と、少しの後悔を放つ無意識からのメッセージ。
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