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開かずの箱から出てきた手紙

年末に10年来開けていなかった段ボールを片付けた。

断捨離界では、きっと箱ごと捨てていいとされるだろう箱。

箱の中身は半分くらいしか入っておらず、すぐに片付くだろうと軽い気持ちでいた。

文具やビデオテープ、ポストカードのファイルなど、主に結婚する前に使っていた雑貨が多かった。

高校時代に使っていた便箋が出てきて、しかも書きかけの手紙が挟まっていたのを見て、懐かしさと同時に目眩がした。

1行だけ書かれた手紙。

猛烈に恥ずかしい、青い。

まだ携帯電話がなかったあの時代。

私たちは、話し足りないその思いを、授業中に便箋にしたためて友達と共有していた。

綴られた便箋の残りがあの頃にタイムスリップさせてくれた。

便箋を見ただけで、書いていただろうあれこれがふわっと浮かんでくる。

もらった手紙もいくつか出てきた。

こちらは、さすがに古いものはあまりなく、前に住んでいた家に届いた年賀状や、まだ新婚だったころの夫からのメッセージカードなど。

一つ、サイズの大きい便箋が目に止まった。

開けてみると、母からの手紙が入っていた。

手紙をもらった記憶はあるが、内容は覚えていなかった。

母が病気で殆ど喋れなくなって8年。

手紙にあるような、熱い思いや、しっかりした筆跡、
その何もかもが有難くて、涙が止まらなかった。

母がその時していた仕事のこと、その思いは
ジャンルは違えど、私が今やっていることと同じだったこと。

母から子への心配ごと。

結婚式の母への手紙の返信だった。

今はもう、直接聞けない温かい言葉が、残っていた。

確かにそこにあったとわかって、声を出して泣いた。

お母さんと、もう一度、話がしたい。

暑いね、寒いね、なんて会話じゃなくて、子育てとか、仕事の話。

この気持ちに気づいて、書きながらまた泣いた。

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