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上司に恥をかかせない機転の効く部下を持つということ。森蘭丸の逸話
こんにちは、両兵衛です。
ここでは現代の私たちにも通じる戦国逸話を取り上げています。
今回は誰の逸話を取り上げようか、といろいろ見ていて目に留まったのが森成利(なりとし)です。「モリナリトシ」って誰だと思われることが多いですが、一般的には織田信長の小姓『森蘭丸』として知られています。
蘭丸の父である森可成(よしなり)は美濃出身ながら早くから信長に仕えていたようです。また、蘭丸の兄・森長可(ながよし)は「鬼武蔵」という異名で武勇に優れた武将として知られていました。
蘭丸の残された資料は多くないようで、江戸時代以降に増幅されたイメージや逸話が多いようですが、映画やドラマでは本能寺の変で信長に殉じる美少年として描かれます。
あるとき、森蘭丸が台に蜜柑を一杯に積んで、その場にいる者たちに見せて回っていた。
それを見ていた信長が言った。
「その方の力では危ない倒れるぞ」
すると、蘭丸は台ごと倒れて蜜柑があたりに散らばった。
信長は、
「それ見たことか。わしの言ったとおりになったではないか」
と言った。
後日、ある者がこの転倒について蘭丸に言った。
「殿の面前で、あのような無様な転倒をするとは恥ずかしいと思わぬか」
しかし、蘭丸はこう答えた。
「どうして恥ずかしいことがありましょう。あのとき、殿が『危ない倒れるぞ』とご注意くださいましたのに、蜜柑の台を持ちこたえていたら殿のおめがね違いということになります。そのため、私はわざと倒れました。座敷で倒れたからといって、武道の傷にはなりませぬ」
信長といえば、羽柴秀吉、明智光秀、柴田勝家、丹羽長秀、滝川一益、前田利家など名だたる優秀な武将たちを家臣に抱えていました。
そんな家臣の一人として、主君に恥をかかせないために機転を効かせた蘭丸の優秀さを伝えたい逸話なのでしょうね。
ただ、上司の立場としては、これは自分が優秀な部下に支えられている自覚がないと勘違いしてしまうなと。それを自覚していないと「ほ~ら、やっぱ俺の言ったとおりコケただろ?」っていう自分スゲエという勘違い上司になりますね。
勘違いしたままであれば、その上司自身がいずれコケることになりそうです。部下が優秀すぎて上司が勘違いしたから、本能寺の変が起きたかどうかはわかりませんが。