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□古井由吉『杳子』

古井由吉
『杳子(ようこ)』
新潮文庫

気がつくと、
ボタンを掛け違えている。
はて、
ボタンを取り違えたのか、
穴をとばしたのか。
無意識に、等間隔を想像する。
違和感をおぼえ、調整する。
ボタンを穴に合わせようと、
穴をボタンに合わせようと。
一つを見て、
全体を見る。
違和感があるけど、
調整したいけど、
どうしたら良いのだろう。
なんとかしたいと思いつつ、
うまくいかない。
それでもボタンをとめて、
服を着なければならない。
自分でも気づいているよ、
その違和感。
だから、
必死にもがいているの。
あ、それから、
ボタンと穴の位置がバラバラでも、
違和感のない心がほしいな。

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