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あいうえおもいで 【い】

【い】石(いし)

祖父は、祖父だけの目を持っている。

小学3年生の頃だったか、夏休みに祖父母のいる田舎に遊びに行った時のこと。
両親と祖父母、そして叔父一家のみんなで近くの川原へバーベキューをしに出かけた。

火起こしや食材の用意をする父たちをよそに、祖父(上はランニング、下はステテコという典型的な昭和の夏のおじいちゃんスタイル)はふらりとその場を離れるとしばらくひとりで川原を歩き回り、綺麗な石をいくつか拾って戻ってきた。

少し紫がかった色の石、白い縞模様が入った石、表と裏で色の違うツートーンの石、驚くほど手のひらに気持ちよく収まる滑らかな形の石…。

子どもだった自分にとってはまるで宝石のような石たちに驚いた。自分でも見つけてみたいと探してみたものの、何の変哲もない灰色の石が転がっているばかりで特別な石などちっとも見つけられない。その間にも、また祖父は次々と綺麗な石を見つけてくるのだ。今度は青色がかった石、また違う縞模様の入ったつるりとした石…。

それらの石を持ち帰ったのかどうかまでは覚えていない。家にある風景がまったく記憶にないので、持ち帰ってはいけないと大人に言われたのかもしれない。

祖父だけが持つ石発見能力に驚き、憧れた話。




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