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当時から世間に注意喚起していた医師たち ①

私にソラナックスを処方し続けた当時の主治医は権威的精神科医。そこそこ有名。

そんな名の知れた医師がソラナックスについて、「20年、30年飲み続けて大丈夫な安全な薬」と言う。止め方について質問しても、「うつの薬は止め方に気を使うけど、これ(ソラナックス)は大丈夫。(0.8mg錠を)半分に割って減らして止めたら良い」と、ただそれだけで、一日3錠、つまり、2.4mg/dayを60日分処方されました。0.8mg錠を半分に割るということですから、事実上120日分一括処方。凄い。凄過ぎる。

薬剤師から疑義照会のあった60日分処方(事実上120日分)

権威的医師なのに、貴方の知識はその程度なのか!と当時の主治医の無知を責めたくもなりますが、むしろ、権威的精神科医の知識レベルがこの程度の日本の精神医療、精神医学界全体がやばい、と評価する方がより適切だと思います。当時の話として。

ちなみに、精神医療で深刻な被害(最悪のケースは死亡事例)を受けた当事者たちの連絡会が立ち上げられたのもアシュトンマニュアル日本語版が公開された2012年前後であったと記憶しています。その連絡会への参加者は日本全国から集まり、各地で勉強会が開催されていました。もちろん私もすぐに入会し地元で開催される勉強会に参加しました。

中毒死、処方薬の影響が疑われる自死、入院中の過酷な体験、常軌を逸した多剤(多罪?)大量処方、そして私のような処方薬の薬物依存。。。

連絡会参加者の体験は様々でしたが、どのケースもとても医療とは呼べないものばかり。

そしてみんなが口を揃えてこう言います。

「精神科医は薬について殆ど何も知らない。」

覆い隠せない規模と深刻さで被害が溢れ始め、当事者たちやその家族が日本中で声を上げ始めたのです。

アシュトンマニュアル日本語版が公開されたのはそんな時代だった訳ですが、さすがにやばいと危機感を抱き、新聞やブログなどで一般人に向けて注意喚起していた医師がいたのも事実。

そこで、主にベンゾ問題について、新聞記事などを挙げながら、当時から警鐘を鳴らしていた希少な医師たちを紹介してみます。(紹介の順番に特に意味はありません。)

その前に、日本語訳公開を報じる、とても反響の大きかった2012年6月の読売新聞記事をもう一度。

2012年6月7日 読売新聞夕刊


1、 若倉雅登さん、清澤源弘さんなどの眼科医グループ

2011年2月3日 朝日新聞
2014年6月29日 読売新聞

ベンゾジアゼピン系薬剤が深刻な眼瞼痙攣を引き起こし得るという注意喚起は、当時、紙の新聞でもネット上の記事でも比較的頻繁に目にしました。画像のふたつの記事には出ていませんが、この問題でメディアに最も頻繁に登場していたのは眼科医の若倉雅登さんではないでしょうか?清澤源弘さんはブログでもよくこの問題を発信しておられました。

若倉さん、清澤さんたち眼科医グループはこの薬剤性眼瞼痙攣のことをベンゾジアゼピン眼症と呼んでいるようです。

話は少し脱線します。思うに、このベンゾジアゼピン眼症なるものは、まさに依存形成(耐性形成)に起因した離脱症状に他ならないのではないでしょうか?

ベンゾジアゼピン眼症(眼瞼痙攣)には光の眩しさを伴うことがよくあることが知られています。それは、1枚目の清澤さんの新聞記事の通り。そして、ベンゾ離脱の典型的症状のひとつに、光の眩しさがあります。

ベンゾが持つ筋弛緩作用に耐性形成が生じた場合、その裏返しとして離脱時に全身に筋硬直症状が出現しうる。眼球周辺の筋肉はとても繊細ですから、そこに硬直症状が出やすい。ベンゾ離脱でドライアイのような眼痛がしばしば出現するのは、この硬直症状。ドライアイの検査をいくらやっても涙はジャブジャブ流れる。なのにドライアイのように酷く痛む。それは目の筋肉が硬直しているから。これが眼瞼痙攣。

そして機序は不明だと記憶していますが、なぜかこの眼瞼痙攣には、薬剤性であろうがそうでなかろうが、羞明感(光の眩しさ)を伴うことが多い。

ベンゾ服用に起因する眼瞼痙攣の場合、連用中に出現するケースと離脱時に出現するケースがあるようです。前者は、たとえ連用中であっても筋弛緩作用に関する耐性形成が目の周辺で顕著に進行したケース。

神経受容体の神経適応に起因する離脱症状とは減断薬時にのみ出現する訳ではない、というのは耐性形成の生じ得る薬剤が持つ原則だと思われる。抗精神病薬の場合の、遅発性ジスキネジアや過感受性精神病の現れ方もそうであるように。

ベンゾ離脱の光の眩しさは、聴覚や触覚の過敏性と一緒くたにされることが多い。しかし、それは適切ではないように思う。ベンゾ離脱でありがちな光の眩しさ(羞明感)は、目の筋肉の硬直(眼瞼痙攣)に付随する症状と解釈する方が筋が通るのではないでしょうか?

余談が長くなってしまいました。。では次の医師。。

2、上條吉人さん

2013年8月23日 読売新聞

記事当時は北里大学病院救命救急センター勤務。現在は埼玉医科大学病院臨床中毒センター長。救急救命医になる前は精神科医としての臨床経験も積んでいるとのこと。

この記事で特に問題視されている処方薬は、バルビツール酸系睡眠薬。「飲む拘束衣」とも呼ばれるこの強い睡眠薬は今では使用されることはまずないようですが、記事にもあるとおり、当時は特に処方が珍しいという薬剤ではありませんでした。私の知り合いの家族が、この系統の睡眠薬成分を含む合剤の影響で中毒死しています。

記事の最後の方で、ベンゾジアゼピンの問題についても注意喚起されています。

「精神科の不適切投薬が原因の自殺がある。精神科医は自覚するべきだ」

救命医ならではの、上條さんからのメッセージが持つ意味は重い。

また、上條さんが立派だと思ったのは、当時、精神科処方薬による中毒死をめぐるある医療過誤訴訟で、原告側の協力医を引き受けられていたこと。

医療過誤訴訟で原告側が協力医を見つけることは至難の業。特に精神科領域での訴訟ではその傾向が強いはず。それだけに、上條さんの正義感が伝わってきたのをよく記憶しています。

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記事が長くなりそうなので、3人目以降は次回に紹介することにします。










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