自作レンズ「Miauor-D 85mm 1:2.8」作例集
みなさんは、最近はどんなカメラとレンズで撮影しているでしょうか?
私はというと、X(Twitter)の方でちょこちょこと写真を載せているように、自作レンズ「Miauor-D 85mm 1:2.8」をカメラに着けっぱなしにして、作例を撮っています。
作例が充実次第、こちらの記事も随時更新したいと思います。
「Miauor-D 85mm 1:2.8」の紹介
こちらが製作したレンズ「M&R Optics Miauor-D 85mm 1:2.8」です。
(写真は試作品のため、出力時の糸引きというかモヤモヤが残っています)
鏡筒部品と虹彩絞りは3Dプリント製で、安価に済ませるため既製品のノンコート平凸ガラスレンズを2枚使用しています。
マウントはKマウントで、Kマウントのペンタックス一眼レフはもちろんのこと、マウントアダプターを用意すれば他マウントのミラーレスカメラでも使用できます。実用面では、ミラーレスカメラでの撮影のほうがピントの確認等も可能で便利にご使用いただけるかと思います。
Kマウントにした理由は、「私がペンタックスのカメラを使っている」こともありますが、「できれば実際にレンズを通した光を肉眼で見てほしい」からです。
今までも3Dプリンターを活用して何本かレンズを自作していて、今回は一応「4本目」となります。
カメラに詳しい方なら、焦点距離から中望遠の単焦点レンズであることが分かるかと思います。
フルサイズならそのままの画角、APS-Cサイズであればおおよそ1.5倍の127mm相当の換算画角となります。
この画角はポートレート撮影によく使用されますが、今回のレンズは花の撮影にも使いやすいだろうと思い、近接性能に少し力を入れてみました。
さすがに「Close focus」とまではいきませんが、最短での撮影倍率は0.22倍を達成しました。(「smc PENTAX-DA* 16-50mm F2.8」の近接撮影が個人的に使いやすい範囲と感じて、同じくらいを目指していたためです)
参考までにレンズ構成図を載せておきます。
球面のガラスレンズ2枚の対称構成としているため、当然ながら収差は取り切れず、結像性能は妥協しています。
絞り開放で撮影すると、諸々の収差の影響でぼんやりとしたソフトフォーカスとなります。
もちろん、自作でも設計を突き詰めて光学系を妥協せずに専用設計とする、あるいはフィルム時代のレンズを模倣する等で結像性能を高めることはできます。
しかしながら、近年のミラーレス用サードパーティレンズ(特に中国製品)に「安くて性能の良いMFレンズ」が多いことから、あくまでもそちらには舵を切らないこととしました。
作例(PENTAX K-3 Mark III)
レンズについてはいずれ詳細記事を書こうと思いますのでこれくらいにして、作例をまとめておきたいと思います。
以下レンズに関しての余計な付け足し説明も多いので、作例だけ見たい人は適当にスクロールしてください。
まずは、普段使いの「PENTAX K-3 Mark III」、APS-Cサイズセンサーのカメラとの組み合わせです。
冬の日差しを浴びる、暖かそうな猫です。
実は数年前からの馴染みの(?)地域猫で、よく被写体になってもらっています。
この日も特段待ち合わせなどもなく、いつもの場所で被写体になってもらいました。
こちらの写真は、公園での一枚。露出をオーバー気味にしています。
射し込んだ木漏れ日が逆光気味になり、周辺の流れも相まって、ぼんやりとした幻想的な雰囲気となりました。
どちらの写真も絞りは最小(F8相当)にして撮影しましたが、今回のレンズでは絞り切ってもF8相当までしか絞られない設計にしたため、ある程度収差を残した、言い換えれば「このレンズの味」が出るようになっています。
また、私自身「円形絞り」よりも安価なレンズに多い「多角形絞り」に魅力を感じていることもあり、あえて「6枚」という少なめの絞り羽根枚数としています。
(実は、絞り羽根の枚数を少なくすると、羽根1枚あたりの遮光面積が大きい分、絞り開放時の羽根の格納面積もとい絞りユニット全体の外径が大きくなり、少ない枚数のレンズ構成では鏡筒径を切り詰めるのに工夫が必要になると思います)
こちらは、逆光で木漏れ日を背景にして色付いた葉っぱを撮影。
開放から少し絞り込んだ状態(F5.6あたり)のため、木漏れ日が絞りの六角形の形状になっているのが分かるかと思います。
これぞまさしく、私が欲しかった「安っぽい」写りです。
こちらは、最短まで近付いて、絞り込んで撮影。
近接でイメージサークルが大きくなったことで、周辺までそれなりに解像している(ように見える)ことが分かるかと思います。
以前製作したレンズでは、私の場合はあと一歩近付きたいと思うことがしばしばありました。
実際に使ってみると、自分で設計・製作しただけあり、まさしく自分の欲しかったワーキングディスタンスです。
続いては、丸ポストを2枚続けて。
手持ちなので、参考程度に見ていただければと思います。
上の開放での写真では特に玉ボケの輪郭が色付いていて、少し絞り込むと軽減されているのがわかるかと思います。(完全には消えてはいません)
凸レンズ2枚の構成のため、先ほども書いたように収差は取り切れません。
対称形のため歪曲と倍率色収差はかなり小さいのですが、反面、軸上色収差は割と目立ち、開放でのフリンジ(偽色)や玉ボケ輪郭となって表れています。
作例(PENTAX K-1 Mark II)
続いて、「PENTAX K-1 Mark II」と組み合わせた、フルサイズ画角での作例です。
まずは季節柄、紅葉の写真。
絞り込んでの撮影ですが、遠景気味でフルサイズということもあり、周辺は像面湾曲の影響でぼんやりとなっています。
サジタル方向(回転方向)よりもタンジェンシャル方向
(放射方向)のほうが収差が大きい(非点収差)ため、画面の外に向かって伸びるようになっています。
普通のレンズであれば欠点でしかないのですが、うまいこと「トンネル効果」や「集中線」的に活用することもできそうです。
続いて、最短付近での、絞り開放での様子です。
球面収差による、強烈なソフト効果が表れています。
頒布について
今回の「Miauor-D 85mm 1:2.8」についても、BOOTHでの完成品頒布を行います。
設計段階では組み立ても容易にできるようにある程度考慮したつくりにはなっているのですが、頒布作業が煩雑になること、未組み立て状態での送付で破損が生じやすいことから、今回は「完成品頒布」のみとしました。
ただし、製品の性質上、ある程度の部品の破損は避けられないため、別途交換用部品の単体での取り扱いもできるようにする予定です。
ご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひ「Miauor-D 85mm 1:2.8」を試していただければ幸いです。