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終身のはかりごとは、人を樹うるに如くは莫し

1.三条高校理数科の設置要望

8月31日、新潟県庁を訪れ、新潟県の花角知事、佐野教育長に要望活動を行ってまいりました。

花角知事に要望書をお渡ししています

要望書の記名欄は私を含めて15名です。要望会の参加人数は、三条市選出、燕市・西蒲原郡選出、加茂市・南蒲原郡選出の県議会議員さんも含めて合計14名でした。

私自身も市長として要望を受けることがありますし、また、国や新潟県に対して要望活動を行うことも多々あります。ただ、14名で要望に来られたこと、また、私自身14名で要望にうかがったことは、おそらく一度もありません。

それくらい気合(?)の入った要望活動でして、要望会場の会議室に入って来られた花角知事は、私たちを見て「おぉ~」と驚いてらっしゃいました。

要望内容は、既に報道等にもありますとおり、三条高校への理数科設置です。

新潟県知事 花角 英世 様

要望書

新潟県立三条高等学校への理数科設置について

令和4年8月

 日頃より県央地域の教育行政の推進に、格段の御高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、自然科学分野における優れた人材の育成は、我が国の重要な課題です。世界が大きく変化する中、現代的な諸課題を解決し、未来を切り拓いていくためには、私たちの社会を支える科学的な知見を不断に革新していかなければなりません。
 そうした未踏の領域に挑戦し、自らの夢を追い求めようとする子どもは、社会のかけがえのない宝です。
 しかし、県央地域には、理科や数学に興味、関心を示す子どもの能力を最大限に伸ばす支援体制が確立されているとは言い難い状況があります。
 本年度創立120周年という長い歴史を有し、地域を代表する県内有数の進学校として、これまで有為な人材を多数輩出してきた県立三条高等学校には、理数科が設置されていません。
 県央地域の子どもがその道を志す場合、新潟市や長岡市に進学する必要がありますが、遠距離通学等に伴う様々な負担を考慮し、自らの夢を断念する苦渋の選択をせざるを得なかったケースも多いと考えられます。
 こうした状況は、社会に大きな損失を与えるだけに止まらない、個人の価値を尊重し、その能力を伸ばすという教育の役割を果たす上での重大な不備です。
 また、理数科が設置されている県内の4校からは、平成29年から令和3年までの5年間で400人近くが医学部、医学科に進学しています。しかし、この間の三条高等学校からの進学は10人にも満たない状況です。
 折しも来年度には、地域住民の長年の悲願である県央基幹病院が開院を迎えますが、医師不足の新潟県内でも特に医師が少ないという県央地域の課題を解決し、安定的な医師の確保を継続的に図っていく上でも、こうした現状は看過できません。
 さらに、我が国の競争力の源泉であるものづくりの発展には、その基となる科学技術を支える理数教育の充実が必須です。
 世界有数の高度な技術集積地である県央地域において、高い能力を有する多くの子どもが、早期にその能力を伸ばす機会を得ることは、地域の発展のみならず、我が国全体の未来にとっても極めて重要です。
 県央地域の将来を担う若者を地域が育成し、その夢の実現を支えるとともに、安全、安心な社会と我が国の持続的発展を実現するため、三条高等学校への理数科の設置及び当該学科を支える優れた教職員の配置を強く要望申し上げます。 

令和4年8月31日
三条市長 滝沢 亮
燕市長  鈴木 力
加茂市長 藤田 明美
田上町長 佐野 恒雄
弥彦村長 小林 豊彦
三条商工会議所会頭 兼古 耕一
燕商工会議所会頭  田野 隆夫
加茂商工会議所会頭 木戸 信輔
栄商工会会長    佐藤 洋一
下田商工会会長   渡辺 定一
吉田商工会会長   星野 光治
分水商工会会長   高野 文夫
田上町商工会会長  野澤 幸司
弥彦村商工会会長  菅原 健
新潟県立三条高等学校 同窓会会長 野水 重明

出席者14名の要望活動

2.理数科設置が必要な理由

(1)将来の医師をこの地域において育てる

三条高校に理数科設置をお願いする理由は大きく2つです。

ひとつは、将来の医師をこの地域において育てるためには理数科の存在が必要不可欠であることです。

要望書にもありますように、新潟県内において理数科がある4つの高校(新潟、長岡、高田、新発田高校)からは、この5年間で400人近くが医学部、医学科に進学しています。その一方で、この間の三条高校からの進学は10人にも満たない状況でした。

次年度である2023年度には、いよいよ県央基幹病院も開院します。

建設中の県央基幹病院 (2022年6月撮影)

三条高校理数科を卒業し、医学部に入って医師になり、県央基幹病院で勤めてくれる方の誕生はどんなに早くても10年以上先になるかと思います。

ただ、そのような方の存在が、県央地区における将来的な医師確保に必要不可欠であると信じています。ですので、そのような方の誕生が1年でも早くなるような機会づくりは、今この時点で行っておく必要があります。

要望後の囲み取材の様子

(2)ものづくりの礎となる科学技術を支える教育の充実

三条市を含む県央地域は、ものづくり産業の集積地域です。

要望書には、理数科設置をお願いする理由として、次のように記されています。

ものづくりの発展には、その基となる科学技術を支える理数教育の充実が必須です。

世界有数の高度な技術集積地である県央地域において、高い能力を有する多くの子どもが、早期にその能力を伸ばす機会を得ることは、地域の発展のみならず、我が国全体の未来にとっても極めて重要です。

2021年4月に三条市立大学が開学しました。

三条市立大学は「工学 × マネジメント × 創造性」といった要素を融合させて「創造性豊かなテクノロジスト」を輩出することを目指しています。

三条市立大学、2回目の入学式

また、今年7月24日にオープンした「まちやま」内の科学教育センターでは、三条市内の小学校3年生から中学校3年生の子どもたちが、少なくとも年1回は理科・科学に関する授業を受けます。

開始ほやほや、まちやま理科実験の様子

「ものづくり」「理科」「科学」を県央地域において子どもたち・若者たちが学ぶ機会がこのように充実してきている状況をさらに実のあるものにするためには、高校生の年代において、この地域で科学技術を支える充実した理数教育を受けられる環境を整える必要があります。

(三条高校理数科を卒業した生徒たちが最終的にはこの地域で働いてくれたり起業してくれたりしたら嬉しいですが、そのような直接的な話にならなくても)三条高校理数科を卒業してくれる子どもたちは、将来的には絶対にこの地域に対して、また、この地域の産業に対して、何らかの形で役に立ってくれると強く信じています。

この観点も医師育成の観点と同じくすぐに目に見える成果が出るわけではありませんが、1日でも早い種まきが必要と考えております。

3.2025年度の理数科開設に向けて

要望活動にうかがう前には、私自身「設置に向けた前向きな回答は頂戴できるかな」と期待していましたが、具体的なスケジュールまでお話いただけるとは想定していませんでした。

要望会において、花角知事からは「三条高校理数科設置の方向で前向きに検討準備をしていきたい」というお言葉に加えて、なんと

「よいものを作るには準備の時間も必要。来年度、再来年度と準備期間して、ひとつの目安として2025年度かな」

という具体的なスケジュールまでお話をいただきました。

これには、私も含め、出席した14名全員が大満足して要望会を終えることになりました。

仮に2025年4月から三条高校理数科が開設となりますと、ちょうど今の中学1年生の世代が高校に入学するタイミングです。

私たち三条市も、ひとりでも多くの中学生がチャレンジしてくれるよう、三条市立大学との連携や科学教育センターとの連携を考えていく必要があります。

2022年5月、ノーベル賞受賞の大村智教授が三条高校で講演を行ってくださいました。
それを記念して三条高校に植樹したブナの木です。

4.県央地域、百年の計

三条高校理数科の設置、私自身、今からワクワクしています。

設置によりすぐに実のなるメリットとしては、次のとおり、生徒・親御さんの負担が減り、勉学に励みやすくなることです。

三条市の高校生の世代は、1学年あたり約800名です。このうち毎年20名から30名程度が、新潟高校・新潟南高校・長岡高校に通っています。

彼ら・彼女たちの向上心、チャレンジ精神は、とても尊敬に値します。一方で、三条高校理数科が設置され、三条市内の高校でより高いレベルの教育が受けられるとなれば、通学の時間的負担・金銭的負担も軽減され、その分、より勉学に励むことができたり、部活動にも取り組んだりできるのかなと考えております。

そして、今回の三条高校理数科の設置によって得られる1番のメリットは、国家百年の計ならぬ「県央地域百年の計」として、人を育てることができる環境、選択肢がより充実することではないでしょうか。

これについては私が説明するよりも古典(中国の戦国時代の管子「権修」)にならった方が早いかと思いますので、最後に引用して結びとします。

一年之計、莫如樹穀
十年之計、莫如樹木
終身之計、莫如樹人

(書き下し文)
一年の計(はかりごと)は、穀を樹(う)うるに如(し)くは莫(な)し
十年の計(はかりごと)は、木を樹(う)うるに如(し)くは莫(な)し
終身の計(はかりごと)は、人を樹(う)うるに如(し)くは莫(な)し

(意味)
一年の成果を感じるには、穀物を植えるのが一番である
十年の成果を感じるには、木を植えるのが一番である
一生の成果を感じるには、人を育てるのが一番である
社会の発展にとって、人を育てることが一番重要である

一樹一穫者穀也
一樹十穫者木也
一樹百穫者人也

(書き下し文)
一樹一穫(いちじゅいっかく)なる者は穀なり
一樹十穫(いちじゅじっかく)なる者は樹なり
一樹百穫(いちじゅひゃっかく)なる者は人なり

(意味)
一を植えて一だけの収穫があるのは穀物である
一を植えて十の収穫があるのは木である
一を植えて百の収穫があるのは人材である

管子「権修」




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