人材派遣の職場見学という名の面接に反対する理由
こんにちはー!
今日は「人材派遣の職場見学という名の面接に反対する理由」というお話です。
16年ずっと反対してきた
一般的な人材派遣において、職場見学と言う名目で面接的な選考を行うことは一般化しています。
そして、僕はそれに16年間、ずっと反対してきました。
今日は派遣事業から離れた今だからこそ言える、僕の本音をお話しします。
たぶん、派遣先企業にとっても気づきの多い内容になるのではないかと思います。
ひとつ目の理由とふたつ目の理由は今までも大声で言ってきたこと。
3つめ以降は今までは小声で言ってきたことで、note初出しです。
そもそも違法
まず、日本の人材派遣において、事前に面接で派遣労働者を選考するのは違法です。
そもそも違法なんだから賛成も反対もないですw
推進している人材派遣営業がいるとしたら・・・ですよね。
(後で書きますが、無期雇用派遣とかハイスキル人材の派遣は事前の打ち合わせも肝要だと考えます)
そもそもダサくない?
そして、ふたつ目です。
何というか、面接とか採用活動ってダサくないですか?
みんなスーツ着て、労働者は良く見せるための努力をし、当たり障りなく、かつ良さげな回答をする。
企業側はどこかで形式的な回答だと知りつつ、「志望動機は?」「あなたの強みは?」とか質問する。
で、その雰囲気で何となく決める・・・
ウチの会社はそんなんじゃねー!って言う方もいると思いますが、ほとんどの面接は同じような質問を繰り返し、なんとなく行われていると思いませんか?
経験が浅かったり、若い方の採用では特に。
未経験の方はスキルがない方を採用して育成することが多いから仕方ないのかもしれませんが、人柄やポテンシャルを見極めるという名目で金太郎あめ的な面接(しかもあんまり素敵じゃない)が繰り広げられていることが、僕はすごく嫌だし、疑問でした。
で、せっかく人材派遣はプロである人材派遣会社が採用した人材がやってきて、面接をする必要がない(と言うか禁止)わけです。
専門家である派遣労働者がプロジェクトごとにやってきて、そして解散し、また他の現場へ行く。カッコイイじゃないですか。
何をわざわざ法律を冒してまで面接をする必要があるのでしょうか。
特に意味がない
とはいえ、僕も長年人材派遣の現場にいましたから、派遣先が面接をしたい気持ちもわかります。
だって、現実は専門家がプロジェクトごとに集まってくるわけじゃないですもん。
現実には、採用が難しくなった企業がやむなく派遣を利用したり、コストの観点で正社員で採用できないポジションで派遣を利用したりすることが多くなっています。
かつ派遣労働者も確保が難しくなっている(少子高齢化で)ので、未経験を受け入れることも増えてきています。
派遣の性質と矛盾するようですが、教育・育成をして長く勤めてもらうことを前提として派遣受け入れを行うことも多いです。
そうなってくると、長く一緒に過ごすのは派遣先の皆さんです。
人柄ややる気を事前に確認して受け入れたくなる気持ちもわかります。
ただ・・・そこで面接と言う違法行為に及んだとしても・・・
実は意味がないのです。
職場見学という名の面接では、その性質上、正社員の面接ほどの質疑応答はできません。
「志望動機は?」なんて聞いちゃったらモロに面接ですし、そもそも派遣会社に言われて来てるんですが?という話です。(そうじゃないことも多いけど形式的にはそうです)
さらに言えば、派遣先も色々な事情で数カ月の更新の形をとっており、場合によっては契約終了もあり得るため、長期的な展望を聞くなんてこともやりにくいです。
結果として、質問の受け答えや今までの職歴などのうすーい情報の中で判断することになります。
しかも、派遣会社が見栄えが良いように指導したり、派遣労働者も十分に対策を練った情報の中で・・・
そう。この面接、あまり意味がないんです。
むしろ逆効果
さて、職場見学と言う名の面接にほとんど意味がないとお伝えしましたが、この職場見学と言う行為、場合によっては逆効果になることがあります。
派遣労働者に逃げられる
まず、逆効果のひとつ目は、派遣労働者に逃げられるということです。
職場見学という名前からも分かると思いますが、本来は面接ではなく、職場の見学として派遣労働者を派遣会社が連れてくるという位置付けです。
「この〇〇さんにお願いしようと思っています。事前に一度職場の見学だけさせてくださいね」ということですね。
それのタイミングを無理やり面接に使っているものですから、本来はその時点で採用前提での見学になるはずが、「念のため正式に採用になるのは職場見学が終わってからになります。」という(謎の)案内になります。
更には、派遣労働者の方もそのあたりのニュアンスを理解していて、職場見学までは並行していくつもの派遣先を訪問することが多くなっています。
・・・もはやカオス。
派遣先でこの経験がない人の方が少ないと思いますが、職場を見学した後で、「よそで決まったので・・・」なんて言う辞退が発生したりします。
当然ですが、法律通りに運用していれば職場見学の前に派遣会社が派遣労働者に内定を出せますので、辞退の可能性は大きく減ります。
つまり、あまり意味のない面接行為によって、派遣労働者の辞退の可能性を高めているのです。
派遣会社の人選のクオリティが下がる
そして、さらに大きなデメリットが、派遣会社の人選のクオリティが下がる(可能性が高い)ことです。
どういうことか?
面接行為をなくすことで人材の定着率が上がるとでもいうのか?
・・・実は、その通りなんです。
面接をしたい派遣先企業は複数の派遣会社に声をかけることが多いですよね?
仮に複数の派遣会社に声かけてなくても同じではあるのですが、面接をされることによって、派遣会社の人選の優先順位が変わります。
具体的には、以下のような違いが出てきます。
【面接がない場合】
面接がない場合、派遣会社の優先順位は、その派遣先での定着と活躍になります。
しっかり、依頼を貰える期間を満了できる派遣労働者を派遣できれば、利益につながるからです。
当然ですね。
【面接がある場合】
面接がある場合は、とにもかくにも面接を突破出来ることが最優先になります。
どれだけ定着や活躍をする派遣労働者を人選しても、他社の派遣労働者に面接で負けてしまえば、契約がスタートしないからです。
極端に言えば、
①入社後、1日で辞めるけど面接では勝てる派遣労働者
②入社後、大活躍するけど面接では負ける派遣労働者
の2名がいたら、①を人選することになります。
・・・無茶苦茶ですよね。
この無茶苦茶は、実は面接行為に意味がないことから派生します。
あまり意味のない面接は「何となく見栄えや人柄がよさそうな方を採用したくなる」という結果を引き起こすからです。
派遣会社の中の人は分かると思うのですが、人選には本来、ちょうどよいバランスと言うものがあります。お互い、Win-Winじゃないと長続きしないわけです。
なので、本来はその職場に来るような方ではない派遣労働者(🟰派遣労働者側にメリットがない)を採用してしますと、早い段階で他の職場へ転職されてしまったりします。
「事情があって16時に帰りたい」とか「〇〇の専門性を活かしたい」とか、その派遣労働者にとってもメリットがないと続きにくいのです。
ところが、派遣先企業が面接してしまうと、誰からも良いと思われそうな方を採用したくなる誘惑に勝つことは100%できなくなります。
これは、プロである派遣会社でも難しいくらいですから仕方ないことですが、普通だったら来てくれないくらいの素敵な方にあえて内定を出さない判断はかなり難しいですよね?誰が見てもよさそうな方(良し悪しの話ではなく相性の話です)を断ってそうではない方を採用するのは難しいのです。
そのような派遣先の判断が入ることによって、活躍するかどうかは置いておいて、とにかく面接に合格する派遣労働者を人選することになります。
しかも、面接をしているために、(少なくとも僕は)人選に責任を負う気概もほとんど持ってませんでした。
すぐに辞めちゃったりしたら、もちろん謝罪はしますが、心の底では「いや、あなたも選んだでしょう?と言うか、プロの人選でサービス提供されたければ、違法面接はやめて欲しい・・・」と思っていました。(すみません!!)
この構造を突き詰めて考えれば、派遣会社からしたら、複数の派遣会社に声を掛けられたときは、とにかく見栄えや雰囲気が良い派遣スタッフを連れていき、その方が辞めることになったら改めて何とか自社単独で交代依頼を貰えるように工夫して、そこで長く続くスタッフを派遣するという動きが最適になってしまいます。
実際に狙っているか否かは別にして、そのような流れになることは多いのではないでしょうか。
プロに任せるのはいかがでしょう?
と言うことで・・・
人材派遣会社を引退したからこそ言えることかもしれませんが、派遣を利用いただける企業様にはこういいたいです。
「人選はプロに任せてみるのはいかがでしょうか?」と。
もちろん、人選を任せたいような人材派遣会社や人材派遣営業に出会うのも大変だとは思います。
なので、僕が思う任せるに値する派遣会社&派遣営業の特徴をお伝えしておきます。
①無期雇用型派遣に特化している
→これは、派遣スタッフを社員として雇用している会社が多いので、面接行為があったとしても、人選の質が変わりません。
なぜなら、一般的な派遣のように、もし決まらなくてもそこで派遣労働者との縁が終わるのではなく、その先も関係が続くからです。(定年まで雇ってるから)
真剣に、先に繋がる人選をせざるを得ない構造になっています。
②直接雇用を前提としている
→これは、直接雇用する方法の一環として、人材派遣を利用しているタイプの派遣形態です。
今はまだ、そんなに見かけないですが、紹介予定派遣もしくは直接雇用化を前提とした派遣のみを扱う会社があれば、その会社は派遣だけではなく、正社員の面接や採用の仕方についても社会課題を感じている可能性が高いです。
(ちなみに僕は、いつかこの仕組みの人材派遣サービスを立ち上げたいと思っています。)
この場合、「面接をしない代わりに派遣をうまく使って採用しましょう」という提案であり、面接の考え方が根本的に変わってきます。
この①②はあくまで、特化していることが大切です。
色々な派遣形態の一環として、紹介予定派遣をやっているとか、無期雇用派遣をやっているという会社はありますが、そういう会社は何か意図や思想があってやっているわけではないので人選を100%任せるのは難しいと思います。(あくまで今のところです。本来は任せられるはずのものです。)
②はあまり見かけませんが、今後出てくると思います。
①はすでに複数の派遣会社が存在しますので、無期雇用に特化した派遣会社を探してみるのも良いかもしれません。
(ちなみに逆説的ですがこの①②は面接行為のデメリットが少ないとも言えるため、納得のためにしっかり顔合わせするのはむしろ良いかもしれません。)
最後に
・・・すごくマニアックな話を熱弁してしまいました。
そして、派遣会社に所属している間は言いにくかった、派遣での面接行為は逆効果であるという話をnoteに書けて良かったです。
もちろん、対面では今までも顧客である派遣先企業様に伝えてきましたし、理解していただける(時に感謝していただける)ことも多かったのですが、テキストのみで伝えるには誤解されてしまう可能性が高いと思ってこれまで避けてきた話題です。
決して、面接的なことをしたいという想いや考えを理解できないと言いたいわけではないです。派遣会社側がそれを推進したり、積極的な黙認をしている現実も知っています。
なので、派遣先企業が悪いなんて1%も思っていません。(推進する派遣会社は結構ダメだなーって思ってます)
そこは伝わって欲しいです・・・!そして、この内容が何かの気づきや派遣サービスの運用のヒントになると嬉しいです。
では、また!
転職エージェントや人材派遣会社へ就職してお悩みがある方、これから転職を考えている方、派遣スタッフとして働いていて困っている方、どれでもない方、ご質問やご相談はこちら↓へお願いします。
※メールのやり取りは無料です。全力でなんでも答えます。
僕のキャリアやビジョンをインタビューしてくださった記事↓
オープンチャット「人材派遣営業の駆け込み寺」を始めました↓(無料&匿名です!)
↓公式LINEからは定期的に情報提供をしています。また、メッセージをいただくことも可能です。