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1.3心残りと覚悟/ハッピーエンダー
ども、松谷リョー(松了レギオン)です。
突然ですが皆さん好きな人っていますか?
私はいるんですよ、中学校の頃からずっと好きな人が。ですが1回告白して振られてるんです。
それでその後ずっと好きでいるのも相手に悪いかなと思いつつも、好きだっていう気持ちが消えてくれないんですねこれが。女々しいなんて言わないでくださいよ?
そんなこんなで心の内でとんでもない葛藤があったんです。そんな時に私はこの曲に出会いまして。それで「自分はこの人以外に恋愛感情を抱くことはできない。もし結ばれないとするなら、私は生涯独り身でも構わない。」そんな覚悟を持ちました。まあこの覚悟も一時的なものなのでどんだけ続くかはたかが知れてますけどね。一途で惚れっぽいので。
さて、前置きが長くなりましたが、今回紹介するのはそんな何らかの形で心に沁み入って、えも言われぬ叙情を持たせてくれるような、夢や願望それを追い求める気持ちを想起させてくれる。クリーンなギターサウンドによるAyaseさんの隠れた名曲、否、最高の曲。
「ハッピーエンダー」
楽曲
クリーンギターのサウンドから始まり前の二曲に比べると少し落ち着いたロックテイスト。コード進行やハモリの取り方がどこか心の奥の切なさを引き出してくれるような、そんな曲になっています。特にサビ終わりの「まだ痛いけど」の部分のハモリはAyaseさんのファンからの人気が高いです。
間奏ではシンセサイザーが主旋律を取り、一種のバンド感をより強く醸し出しています。
この曲からAyaseさんのピアノの主張が激しくなってきます。「ハッピーエンダー」ではまだまだギターサウンドがイニシアティブを取っているものの、裏でコード進行を支えたり、対旋律により華やかさを持たせる、アクセントに使われるなど様々な役割を買っています。
初音ミクの調声も徐々にAyaseさんの個性を作っており、今後紹介する「ラストリゾート」や「フィクションブルー」といった、Ayaseさんの前期のミクの調声はもうこの「ハッピーエンダー」の時点でかなり形作られているように思えます。
また、Ayaseさんの1stアルバム「幽霊東京」に収録される際に、この曲は伴奏と調声が共にリマスターされており、伴奏はよりAyaseさんの、否、Ayaseさんがコンポーザーを務める代表曲「夜に駆ける」に近いサウンドになっており、聞き比べてみるとまた違った良さが聞き受けられます。
タイトルや歌詞
この曲の最大の魅力はメッセージ性のとても強い歌詞にあると自分は考えます。そのため今回はフレーズごとにそれぞれの歌詞を吟味していこうと、そんな形態になっております。
(以下歌詞は本人動画説明欄より引用)
精々こんなもんだよって
捨てる様にそっと
吐き出す度に虚しくもなるけど
もうどうしようもないの
偽物ですらないの
もう好きにして
どうだっていいよ
ある人はとある夢を持っていました。しかし何らかの事情でそれがかなわない状況に陥ってしまったのでしょう。
「精々こんなもんだ」と吐き捨てても夢を追っていた以上虚しさを感じる。でももう「どうしようもない」
自分の力では「偽物」にすら届かない。
だから何と言おうと「好きにしてどうだっていいよ」と。
ほらまた其処で見下しているんでしょ
故に絡まり合っているんでしょ
此処に正解とかないからほらまた
奪り合って殴っているんでしょ
其れが言葉を抱いてしまうなら
其れで全てが帳尻合うなら
笑われてるのは
僕か君かはたまた
「何処かの誰ですか?」
この部分はその人の内面の心情を表しているのではないかと私は考えます。周りの人から言われた言葉が絡まり合ってどうしようもない葛藤をしている。夢をあきらめて笑われてるのは自分なのか「何処かの誰か」なのか
最底辺掠める晩成の解
其処に全部を賭してきましたか?
心残り一粒もありませんか?
ならその目から一つずつ零れ落ちたのは
何を誰を想い落ちたのですか?
最低だって不安定だってさ
其処に愛が溢れて仕方ないから
まだ手放せず握り締めているんでしょ?
惑わせるほど
まだ痛いけど
忘れてしまえばいいの
晩成の解、すなわち「最底辺で長い間考え抜いてよぎった解答」のこと。
・すべてを賭けてそれに臨んできたのか。
・心残りはないのか。
・もし心残りがないんだとしたら何のために泣いているのか。
・最低でも最底辺で不安定でも、夢を追い求める心、愛がまだあるから心残りという形で諦めきれていないのではないか。
これらの問いにその人が出した解はこれでした。
「忘れてしまえばいい」
もう大体分かってきたんだ
仕方ないよきっと
思い知らされる度に心が痛いよ
いやでも待ってそうじゃないよ
イメージしちゃってない?答えを
まだ誰にも分からないでしょ
この辺りから、この人の心情に変化の兆候が見えます。
「仕方ない」と思うたびに悲しみがこみあげてくる。
でもそうじゃない。
つまらないイメージで諦めてるんじゃないか。だって
まだ「誰にも結末はわからない」んだから
最低限で済ましてきたんじゃない?
其処に全部は割いていないんじゃない?
心の内で楽をしちゃいませんか?
またその目から一つずつ零れ落ちたのは
余白があるからじゃないんですか?
最低だって不安定だってさ
其処に愛が溢れて仕方ないから
まだ手放せず握り締めているんでしょ?
もう一度強く抱きしめてみて
ほらまだ温かいでしょ?
先ほど出した晩成の解に再び疑問の矛を向けます。
・全力を賭けず最低限で済ませてきて心の内で楽をしているのではないか。
・今涙を流しているのはまだ夢を追い求める心の余白があるからではないか。
・最低でも最底辺で不安定でも、夢を追い求める心、愛がまだあるから心残りという形で諦めきれていないのではないか。
ここでこの人は前のように「忘れてしまえばいい」と言わず、もう一度その気持ちを確かめ、熱意がまだ消え切ってないということを知ります。
最底辺掠める晩成の解
そこに全部を賭してきたんなら
心残り一粒残らなかったかな
この目から幾つも零れ落ちる様に
錆びついた心が叫ぶから
最底辺で長い間考え抜いてよぎった解答
模試全力をかけていたなら心残りはなかったのか、心残りが涙として零れ落ちるように、諦めてさび付いてしまった夢を追い求める心が、「まだやれる」と叫ぶ。
一度は「忘れてしまえばいい」と答えを出したけれども、諦めずにずっと藻掻いてきた結果、その晩成の解は一変を遂げます。
最高だって笑ってたかったな
其処に愛を注いでたかったな
そのまま手放せず握り締めていたってさ
終わらせるには
まだ早いでしょ?
もう一度あの頃の様に
ほら今結末は変わる
本心では「最高だって笑ってたかった」「愛を注いでたかった」と思い続けていたのです。それ故に手放すことができず、ずっと持ち続けていた夢を追い続ける心。
「終わらせるには、まだ早い」
「もう一度あの頃の」夢を追い続けていたあの頃のように、前に向かって進んでいくんです。
その結果、結末が変わる。
タイトルである「ハッピーエンダー」
英訳すれば「Happy Ender」ですね。
つまりは
「ハッピーエンドをもたらす者」
歌詞をひとしきり堪能した後にこのタイトルを見るとどこまでも最高な曲であることがわかりませんか?
自分はこの曲を自分の恋愛人生に重ねて聞きましたが。みなさんはどのような風景を思ってこの曲を聞くのでしょうか。非常に興味深いです。
MV
MVのイラスト並びにムービー制作はどちらもAyaseさん本人によるものです。
私はこのMVのモチーフである両手や風船、ビル群などが何を意味しているのか皆目見当がついておりません()
ですがMVの色調構成は独特で、サムネのピンク色は温かみと切なさを感じさせ、上画像のような青緑色、「先天性アサルトガール」で使われていたような青緑色もAyaseさんの曲らしさをさらに醸し出しています。
最後に
ボカロ曲紹介第三回「ハッピーエンダー」いかがでしたでしょうか。
どうしても私の語彙力が足りないせいか、文章に起こしてもこの曲の魅力を伝えきれている気が全くしません。
ですので取り敢えず一度聞いてみてください。
百聞は一見に如かずならぬ、百視は一聴に如かず、です。
この曲は私がAyaseさんの曲の中でも1,2番目に好きな曲なので途中自分語りも多く入ってしまいました。すみません。
今後、このように自分語りが多く出てしまってもそれは曲への愛情故に多くの自分に関することを投影してしまっている結果なのでお許しください。
さて次回はAyaseさんの曲の中でもかなりの人気を誇るあの曲を紹介しようと思います。あの赤から皆さんはどんな感情を引き起こすのか、知ってみたいものです。ぜひ教えてもらえれば嬉しいです。
また、今まで紹介した曲を聞いてみての感想などありましたら教えていただけると、こちらとしても紹介した甲斐がありますし、ボカロをちゃんと聞いてくれる人が増えたということで私自身とても嬉しく思います。是非ともお願い致します。
では。
P.S 皆さんは絶望ってなんだと思いますか?