相手の心に寄り添うためのフレーズ&スタンス集〜傾聴力を上げたいあなたに〜
「誰かに話を聞いてほしい」という感情は普遍的です。
パンデミックの影響で人との会話が減り、「聞いてほしい」という願いがより顕在化し始めているのを感じます。
ただ、悩みや思いをじっくり受け止めて傾聴するには、技術も覚悟も人間力も必要です。
そこで本記事では、その簡単ではない”傾聴”をするためのフレーズやスタンスを書いてみました。
背景:傾聴のプロ達との出会い
傾聴をプロとしてする人がいます。
カウンセラーやコーチ。一部のリーダー/マネージャーの方などです。
そのような方とお話をすると、共通点に気づきました。それは、
「あ、この人には安心して話せるな」
「この人には、心を開いても大丈夫だな」
「この人に話を聞いてほしいな」
と話し手に思わせる、印象的なフレーズやスタンスを持ってることです。
印象的だったので、自分が1on1をやるときに取り入れてますが、日々その有効性を感じます。
面談をした学生さんからのレビューでも、話しやすいとおっしゃってくださる方(https://matcher.jp/obogs/8e8c6318e9eb のレビュー)も多くありがたい限り。
そんなわけで、カウンセラーやコーチの方々から傾聴を勉強させていただいて感謝すると同時に、今後傾聴力をあげたい人&自分のためメモを残したいと思いました。
以下、自分が接したカウンセラー/コーチ/マネージャーによく見られ、印象に残っているスタンスやフレーズを書いていきます。
忙しい人は、ぜひ最後のフレーズ集だけでも見ていただけると、幸いです。
なお想定しているのは、話し手が悩みや内面について話す場面です。
程よく表情を作る
適宜うなずく&目を見るのは基本として、
ポジティブな話題に対して、ポジティブな表情を。
ネガティブな話題に対しては、ネガティブな表情を。
オーバーリアクションする必要は全く無いですが、感情のベクトルは共有できたほうが、話し手は感情を吐き出しやすいです。
アドバイスの前に、相手を理解する。
「この人は自分のことを理解してくれている」と思われるまでは安易なアドバイスをしたり、善悪を判断して伝えたり(例:「そのマインドセットはイケてないね」など)は禁物です。
アドバイスする際に、「あ、この人アドバイスして気持ちよくなろうとしてるな」というのがにじみ出ると、その後が厳しくなるかもです。
要約しすぎず、程よくオウム返し&言い換え
小学生が深刻そうな顔で相談してきたとします。
生徒:「最近、ま、周りに無視されたり、、、物をかくされたり、、、変な噂たてr、、、」
聞き手:「つまるところ、いじめ?」
もしこれがカウンセラーなら、多分クビです。
これは極端な要約をしすぎな例ではありますが、どこがいけないかを羅列すると、
・相手に辛さを吐き出させるチャンスを奪っている
・一般化することで、本人の辛さをありきたりで些細なものにしようとしている。
・相手が話すことに抵抗を覚え、問題解決に必要な情報を聞き出しにくくなる
などかなと思われます。「つまるところ、、、」「要は、、、」「いってしまえば、、、」を使いがちな方は、注意です。ビジネス的な議題に素早く結論を出す必要があるときはいいですが、相手にまずは心理的に寄り添いたい場合はご法度だと思います。
要約せずに、オウム返しor相手の言葉をわかりやすくして返すのがおそらく基本。感情の乗ってそうな単語は、オウム返しのしどころな気がします。
話し手「○○が、とても辛くて・・・」
聞き手「そうですか。とても辛いですね・・・。」
といった感じ。
相手の心境を聞く
『それを思い出すと、どういう気持ちがわいてきますか?』
『それをイメージすると、どういう気持になりますか?』
『ぜひ小学生みたいな単語で、今の気持ちを教えて下さい。うれしいとか、楽しいとか、悲しいとか。辛いだとか、不安だとか、怖いだとか。』
このフレーズは、使い方をマスターすれば、大変に効果的です。
聞くタイミングとしては、新しい出来事や気付きが話し手によって出されたときですかね。なので、そこそこの頻度になります。
気持ち語(感情を表す単語)を引き出せると特に良いですね。
気持ち語とは、うれしい、楽しい、悲しい、辛い、不安、怖い、怒り、寂しい、苦しい、などです。
ただ、多くの人が感情を言い慣れてないので、気持ち語を言ってくれません。大概、「Aしていきたい気持ちです」とか言われます。それだと説明っぽくなってしまい、相手がより根っこの感情に自分で気づけません。なので上にあるように感情の具体例もセットで伝えるとよいかと。
なお、自分の感情を言葉にし、誰かに聞いてもらうという体験は実は年齢を重ねるほど、どんどん減っていきます。
「感情に左右される奴は無能」的な認識が広がってると、感情って言い出しにくいんですよね。
なので感情を言うだけでちょっとしたカタルシスになり、自己理解にもつながります。
話し手が気持ちを言ってくれたら、聞き手はそれを繰り返しましょう。
そうすると、話し手は、「この人は自分の気持ちを理解しようとしてくれる」と思って、より話しやすくなる効果もあると思います。
多様な感情に対応できるように、気持ち語は色々知ってると、便利ですね。
相手の根っこの感情や問題を探りに行く
表出している言動や悩みは、あくまで氷山の一角であり、その人のより奥深いところに原因が在るケースが多いです。
典型的な例でいえば、
「聞き役になるのが苦手です。つい自分が一方的に話してしまいます。どうすればいいでしょう?」
という相談を受けたとしても、その問題の本当に根っこには、
「相手の能力を低いと思っており、それが自分の評価に波及するのが怖いため、話して命令しようとしてしまう→相手の話を聞かなくなる」
とか
「相手に自分の欠点を指摘されるのが怖いので、自分が話すことでそれを防ごうとしている」
とかの原因が潜んでいることは、あるあるです。
メンタルモデルという考え方があるので。参考にしてみてください。
以下の画像のように、相手の感情や言動を氷山に見立て、その一角だけに惑われず、奥深くにある感情を探りに行くイメージです。
伝わってくる印象や価値観、を伝える
傾聴する過程で、相手の価値観/大事にしていること/感情が伝わってくるときがあります。その時はそれを伝えて、相手の反応を伺ってみましょう。
・『どこか、「納得感」を大事にさてそうな印象がありますね』
・『何か、少し焦っているように感じますね』
・『○○のようなことをするのが好きなんだな、というのがとても伝わってきます』
沈黙と間を許容しつつ、程よく話の続きを促す
話し手が言葉に詰まることもよくあります。
聞き手はその際、相手を急き立ててはいけません。
村上が聞き手の場合は、以下はよく話し手に伝えます。
・「ゆっくり、自分のペースでいいですよ。」
・「喉まで来たことは、言っちゃっていいですよ。」
それでもあまりに長く相手の言葉が止まった場合、相手をじっくり観察し、直感的に相手の気持を予想し、質問していきます。
・「何か不安や恐れを感じてますか?」
・「少し、頭で考えすぎてるように見えますが、いかがでしょう?」
と言った感じです。
「はい」と答えられたら、「どんな不安ですか?」「どんなことを感じてますか?」と聞きます。
話し手の過剰な自責を止める
悩みを相談する人のなかでは、自責傾向が強い人がいます。
自分のしてしまったことを強く悔いていて、内心では、誰かに許してほしいと思っているケースですね。(自分はよくあります。)
そういうときは、このフレーズ。
『人間として、とても自然な気持ちだと思いますよ。』
これがとても効果的に作用することがあります。
自分はこれを初めて聞いたとき、だいぶ救われた感覚があります。
話し手に「もうひとりの自分」と対話させる
『経験したことの在る、最も理想的な自分の状態を思い出してください。』
『そのときの○○さんなら、今の○○さんに、なんて声をかけますか』
これは、簡単に真似はできないですが、話し手に「もうひとりの自分」と対話させるカウンセラーの方がいました。
話し手が過剰に焦っていたり、「通常時の判断ができてない」とみたとき、相手を落ち着いた状態にして、現状認識を促す効果があると思われます。
自分がお世話になっているカウンセラーの方曰く、「話し手がリソースフル(内的資源が豊富)だと思ったら、積極的に使えるようにする。」とのこと。
気持ちと課題が言語化されたら、今後どうしたいか聞く
十分に話し手の気持ちが吐き出され、課題も言語化されたら、
「今後こうしていきたい、とかありますか?」
「話し始める前と比べて、どういう気持ちになりましたか?」
とか聞くことが多いです。
うまくやらないと誘導っぽくなるので、それを避けたければ、相手の気持を聞くにとどめます。
フレーズの使い所を見極める
これまでに紹介したフレーズは、乱発しても意味がありません。用法用量が大事です。とりあえず使ってるだけだと話し手に思われたらその後が厳しくなると思われます。
ただ、定型文だとばれていても、問題ないケースがあります。
それは話し手に「この人は、自分が今の課題を乗り越えるために、あえて聞いてくれている」と思ってもらえる信頼関係を構築しているケースです。
なのでいざ傾聴するときは、事前の関係構築はある程度大事と思われます。
定番フレーズまとめ
これまでスタンスを中心に書きまいした。
次は、相手が悩んでいる or 心を痛めている状況で、心に寄り添うような傾聴をする際に、よく使われるであろう定番フレーズも羅列しておきます。
相手の痛みや気持ちを理解するフレーズ
「それは、すごく大変そうですね・・・」
「それは、○○な気持ちになりますよね・・・」
「想像するだけでも、ずしんときますね・・・」
「簡単ではない状況に、いらっしゃるんですね・・・」
「本当ですか?なんと返したらよいか・・・」
「聞く限り、私の想像超えた辛さかもしれませんね・・・」
悩みや痛みを打ち明けてくれたことに感謝するフレーズ
「まずは打ち明けてくれて、ありがとうございます」
「伝えてくれて、嬉しいです」
「勇気が必要でしたよね。言ってくれてありがとうございます」
「信じて言ってくれてありがとうございます。」
相手の状態や気持ちに関心を示すフレーズ
「今まで話してみて、どんな気持ちになりましたか?」
「どんな感じ、どんな感覚になりましたか?」
「○○という印象を受けますが、合ってますか?」
「他に話されたいことはありますか?」
「頭で考えすぎず、なんというか、首より下で感じたことを話せますか?首より上で考えたことではなくて。」
「自分の気持ちを出し切ることは出来ましたか?」
相手を勇気づけるフレーズ
「とても価値在ることをされていると思いますよ」
「とても勇気あることを、○○さんはしてるのだと思いますよ。」
「私には、○○さんがそんなに風には見えませんよ」
「とても人間として自然な気持ちや感覚だと思いますよ」
「私は○○さんが前を向けると、信じてますよ」
「応援してますね。」
助けたい思いを伝えるフレーズ
「また話したくなったら、いつでもおっしゃってください」
「こちらはいつでも聞く準備できているので」
イメージが湧きやすいように羅列しましたが、実際は本音でこれらを言えるかが重要です。
参考文献:
おわりに
カウンセリングやコーチングを受けて、印象的だった聞き手のスタンスやフレーズをまとめてみました。
今後新たなフレーズを聞いたら、追記していきます!
ですので、参考なったと思われたら、メモ代わりに「いいね」やシェアしてくださると幸いです。
書きながら感じたのは、カウンセラーを始めとする傾聴のプロの方々は、小手先のスタンスやフレーズを使っているだけでなく、根本的に相手を支えたい思いを持った方が多く、素敵だなということです。
そのような方から学びつつ、人の話をじっくり聞けて、その人の心に寄り添える人でありたいなと、思うこの頃です。