賞味期限は切れていた


2年周期で連絡してくる男友達がいる。
正確には男友達とは呼べないかもしれない。


私は過去に彼に振られている。


10年以上前に職場で出会った別の部署の人で、電話の取り次ぎをしたのがきっかけで少しずつ話すようになった。

読んだ本の感想、繰り返し見てしまう映画、美味しかったトムヤンクンの話…

連絡先を交換して仕事が終わってから寝るまでメッセージのやり取りをした。

私も彼もそんなに喋る方じゃないけれど、話は尽きなかったし、言葉の選び方が好きだった。

お互いに人として以上の好意を抱いていることはなんとなくわかっていたけれど、彼には彼女がいたので、それを越えないように気をつけていた。

仲のいい友達でいたいと思っていた。


その後、彼が転職し引っ越しをすることになり、気軽に会えなくなることがわかって一度だけデートした。

待ち合わをして、テーマパークで遊んで、一緒にごはんを食べて。


楽しい思い出ができてしまった。

もうすぐ会えなくなる切なさも相まって、私たちはお互いの好意を確かめあってしまった。

悩んで悩んで、彼は彼女を選んだ。

私のことが好きだけれど、一緒に過ごした時間の長さと出会った順番なのだ、と彼は言った。

好きという気持ちだけで決めることができないこともあるんだなって、

納得できないなりにも、自分のなかでは落としどころを見つけたつもりだった。


だって彼女を傷つけても何としても別れてくれ、って言えるほどの彼への強い気持ちは、私も持ち合わせていなかったから。


もう会うこともないだろう
彼は遠い街へ引っ越していった。


2年後、彼から連絡があった。
連絡先は削除していたので、登録していないアドレスからのメール。


無視するか少し悩んで、でもまだ引き摺っていると思われるのも癪だったから当たり障りのない返信をした。

それから少しずつやり取りをするようになって
初めは近況や当たり障りのない内容だったメールが少しずつ私に対する恋文へと変化していった。

「今でも本当に好きなのは」

私への未練と彼女の愚痴の入り混じった文章。
私が喜ぶとでも思ったのだろうか。


とんでもない。

自分を振った男からそんなこと聞きたくはなかった。


会わない時間がそうさせたのか、現実以上に私を美化していて、女神のように作りあげてしまっていることも気になった。

私ならそんなことしない
私ならこう言ってくれる
私といたらすごく楽しいのに

その時思った
彼は私のことが好きなわけじゃないんだ。


気分の浮き沈みの激しい彼女に疲れたとき
逃げる場所、慰めてくれる存在が欲しいだけなんだ。

たまたま過去にすこし恋愛感情を抱いた私にそれを重ねようとしている。


「自分が振った女にそういうこと言うの無神経だと思うし、彼女にも失礼だよ」
「友達としてならいいと思うけど、友達以上に思うなら連絡はもうしないでほしい」

メールでのやりとりだから、伝わらない部分も多く何度かやり取りをして最終的には
「冷たくなったね」とキレられて終了してしまった。

キレたいのはこっちの方なんだけどなw

まあ後味は悪いけれど、私にいつまでもこだわっているから
彼は満たされないんだと思う。
私という幻想がなくなればちゃんと彼女とうまくやっていけるよ。



目の前にいる人を愛せよ!!
愛する努力をしろよ!!



私よりも彼女を選んだんでしょう?
出会った順番が大切だって、付き合ってきた時間が大切だって

もしも私を選んでくれたら大切にするし、幸せにしたいって言った私よりも彼女のことを選んだのは君。



心の中でだけど、彼が幸せになってくれることを祈った。


それから2年、果たしてまた彼からの連絡が!


これはさ、もう彼にタイマーが仕掛けられてるってことでいいかな?笑
2年経つとアラームが鳴るのだ。




人間関係にも賞味期限はある、と私は思っている。

それまで親しくしていた人との関係がすこしずつ変化して、以前はシンパシーを感じることが多かったのに
噛み合わなくなることってあると思う。

まして彼と私のようにお互いに求めているものが変わってしまえばこれまでと同じようには付き合っていくのは難しい。
そこを無理して同じ距離感で付き合う必要はない。


距離を置いて、それでも縁があればまたいつか巡り会えるものだと思う。


私はそっと彼のアカウントをブロックした。


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りょう
物書きの端くれとして精進してまいります。 気が向いたらよろしくお願いいたします。