見出し画像

13-20.第9回会談(2月8日)その2

開港期日

次は具体の開港期日についてとなりました。ハリスは「堺・大坂は1861年7月4日」としたいと言います。神奈川の開港から2年後、この時点から3年後です。

日本側は「堺は神奈川を開いてから1年後の1860年7月から、大坂は江戸を開いてから(1862年)1年後(1863年)としたい」と返答します。「堺と大坂はわずか3里ほどの距離なので、同時に開いて欲しい」とハリスは返します。大坂は江戸より1年後でなければ困難であると日本側は応じません。

ハリスは「それならば江戸を1861年として、大坂を1863年としてほしい、堺の開港が大坂と同時でなければ不都合なので、是非とも同時に開いて欲しい」と述べました。大坂開港で日本側の要望をのみ、江戸開港では譲歩を迫ったのです

しかし日本側は応じず、わずか1年のことではないか、聞き入れてほしいとハリスに言われます。これに対し、「大坂を江戸同様に開き候は、実にむづかしき儀の処、過刻かこくも申し入れ候通り、両人とも格別力を尽し、種々評論を重ね、やや其方の申し条も相立て候儀故、右等の辺得と遂考斟酌すいこうしんしゃくこれ有り度く候」(「近世日本国民史/堀田正睦(四)/徳富蘇峰」Kindle版P425)と、決して譲歩しませんでした。これは日本側の本音だったでしょう。断固とした主張の中に懇願も入っているように感じられます。

結局開港期日は、江戸は1862年第1月1日、大坂・堺は1863年第1月1日と合意を得ました。堺・大坂の別々の開港を避け、2カ所同時として当初の期日よりも2年後をハリスがのんだ形となります。

会談を重ねるにつれ、日米ともに相手への信頼感、または相手の決意を慮っての交渉ができるようになっていたのではないでしょうか。わたしはそんな風に感じています。当初あったハリスの居丈高な要求は影を潜めるようになったとも思います。

新潟開港

次に、日本側から開港地として提案された新潟が、アメリカにとって不都合だった場合、日本海側に代替港を取り決めることを条約に載せたいとハリスから提案されました。

それに応じ、代替港が諸藩の領内では不都合なので、それは別途評議の上取り決めると、日本側も同意しました。

しかし、ハリスはここに異議を唱えます。ペリーにより開かれた箱館は、日本政府の土地ではなかったものが政府の土地となったではないかと述べ、そのように、諸藩の領地であっても日本政府の土地とすれば、不都合はないはずであると言うのです。

日本側は「箱館は元々政府の土地であったのものを、松前藩に預けていただけで、以前の状態に引き戻しただけであり、そこには何の障害もなかっただけのことだ」と説明しました。ハリスはさらに言います。日本海側の良港が、仮に諸藩の領地であっても、日本政府がアメリカ人民のために借り受ければ不都合なことはなくなるはずだとし、「西海岸(筆者注:日本海側)にて二港と申し上げ候処、一港に引き縮め候心底しんてい御推察下さる可く候」(徳富同書P427)と、こちらは譲歩しているのだから、それを汲んでほしいと主張しました。

日本側も負けてはいません。「此方にても、日本全国にて、三港と申す処、数港相開き候は、其方の都合を察し候事にてこれ有り候」(徳富同書P427)と返すのです。

これは結局、新潟港に差し支えがあった場合、両国政府評議の上代替港を決定すると当初通りに決着しました。

居留地での遊歩範囲

次いで、箱館・新潟・長崎における外国人居留者の遊歩範囲に議題が移りました。これがかなり紛糾します。

ハリスはそれぞれ10里四方を要求しました。それに対し日本側は、長崎でのそれは既に取り決めてあり、それに準じる範囲となると述べ、続けて遊歩範囲は日本政府領か否かの境がその範囲となるので、単なる里数では決められないと返答しました。

ハリスはこれに納得しませんでした(長崎に限っては地図を見せられ納得した)。箱館はペリーとの間で5里と決められていたものを、「一時的な滞留者のためのもので、居留者のものではない」とし、10年以上もいることもあり得る居留者へも5里とするのは禁錮に等しく、条約として甚だしく不体裁であると言うのです。

日本側は、いずれもその地の奉行らと取り決めなければ、どのような不都合がでてくるかわかりかねるので、ここでは決められない、現地の奉行ともいずれ引合わせるつもりであると述べます。

ハリスは、江戸と大坂の件は公使との評議によって決めるのはよいが、各開港地の境界も現地奉行と取り決めるのは納得できないとさらに述べました。

日本側は、長崎は示した通りであるし、箱館も以前同様にすることを考えているが、いずれ現地の奉行へ尋ねてみようと答えました。箱館・新潟・長崎についての遊歩範囲は、現地奉行と相談すべしを原則としたわけです。

続く


いいなと思ったら応援しよう!