厳島にて。 鹿がいる。
久しぶりに「音」を聞いた気がする。
シャラシャラシャラ
波が走り、砂と擦れ合う音。
ザクッザクッ
鹿が波打ち際を砂を踏みしめ歩む音。
観光客などほぼいない夜の厳島神社。
皆が自然と波打ち際の石垣に腰掛けた。
静かに並ぶ灯篭の列に視線を導かれ、目をやった先には大鳥居。
荘厳さに皆しばし黙り込む。
音が聞こえる。
久しぶりの瀬戸内の声。
日本海のように荒れ狂い自然の威厳を示すでもなく、太平洋のようにただ遠くまでその雄大さを示すでもない。
と、鹿が一匹、砂を踏みしめ波打ち際をやってきた。
ちっぽけな人間どもを全く気にしない様子だ。悠々と本殿へと歩み寄っていき、時折何かを探すかのように頭を水面に寄せている。
脚を濡らしながら悠然と佇むその様は、神の使いたる者の誇りを静かに、しかし確かに伝えているかのようだ。
神様いる気がする。
素直にそう思った。
しばらくの沈黙の後、こんな話になった。
「神社には神様がいるような気がする。教会は祈る場所ではあるけど、特にそこだけに神様が宿っている気はしないんだ。」
ぼそぼそ考えを述べ合う。
こんな静かな楽しみ方をできる友を持って幸せだ。心からそう思える時間だった。
フェリーを降り、JRの駅へ向かう最中、話がまた広がった。
「お寺と神社、何が”感覚的”に違うんだろうね。」
寺巡り、神社巡りもいいかもな。
実はジジくさいもんでも無いんかも。
なんて思った如月の夜。
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