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アメリカ大学陸上記⑧NCAA D1でスポーツをすること
こんにちは。樋口諒です。
アメリカのカンザス大学の陸上部で中長距離をしています。
今回はNCAA Division1でスポーツをすることというテーマで書いていきます。アメリカで学生アスリートとして活動するイメージをお届けできれば良いかなと思います。
NCAAとは?
NCAA(National Collegiate Athletic Association)は全米学生体育協会と呼ばれるもので、大学スポーツを運営管理する機関です。3つのディビジョン(I, II, III)に分かれていて、ディビジョン1はNCAAの中でも最高峰になります。D1、D2、D3の入れ替えは基本的にありませんが、たまに昇格があるようです。
アメリカの大学で部活に入ってスポーツをプレイする生徒はStudent-Athleteと呼ばれます。直訳すると学生アスリートです。部活をしていても学生の本分は勉強だという風潮は強いです。学生アスリートが勉強と両立できるようにさまざまなルールが設けられています。GPA 2.3以上を維持しないと試合や練習に参加できなかったり、週の練習時間が20時間までと決まっていたりします。
ちなみに僕が在籍するカンザス大学はNCAAのD1に入っています。またD1の中でも規模が大きく強豪校です。
アメリカの大学の部活に入るには?
アメリカの大学の部活には誰でも入れるわけではありません。大学に入学してから部活に入ろうと希望しても入部させてもらえないことがほとんどだと思います。部活に入るには、入学前にコーチと連絡を取って入部許可を出してもらい、その後入学する形です。駅伝強豪校に入るのと似たような形ですかね。
コーチと連絡を取ったり、入学手続きをしたりするのは1人ではできないようなことだったので、アスリートブランドジャパンという留学サポート会社にお願いをしました。僕がこの会社が高校に送ってくださったパンフレットのおかげでスポーツ留学について知りました。
NCAAのD1の学校(特にD1の中でも強い学校)に入る場合はそれなりの競技レベルが求められます。肌感ですが、陸上の場合、高校生でインターハイに出れるくらいの実力が欲しいです。(種目や県のレベル、入りたい大学によって勿論変わります)
学生アスリートの特権
誰もが部活に入れる訳ではない分、入部後はチームや学校から手厚いサポートが受けられるので、紹介していこうと思います。
用具の提供
チームから用具一式全ていただけます。スポーツメーカーが大学の部活全体のスポンサーになっていて、そのメーカーのギアをいただけます。カンザス大学の部活全体にアディダスがスポンサーとしてついています。
今までに、シューズ、スパイク、サンダル、ウェア、バック、スーツケース、防寒具をいただきました。シューズに関しては消耗品なので、一定の距離を走ったり、壊れてきたりすると古いものと交換してもらえます。カンザス大学の場合、ジョグシューズは500kmを超えたら交換です。スパイクはシーズンの初めにもらえます。
今年も新しくウェアやシューズをいただきました。こんな感じです。
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食事の提供
食事のサポートに関しては、学校ごとに大きく異なりますが、カンザス大のことを書いていきます。
ミールクーポン(Red Card)
Red Cardというミールクーポンがあり、毎日$27いただけて、学食やスーパーマーケット、提携しているレストランで使うことができます。そのクーポンでハンバーガー、メキシコ料理、中華料理、ステーキ、ピザ、など基本なんでも食べられます。とにかく十分に栄養を摂れるようにチームが食事をカバーしてくれています。
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軽食 (Fuel Station)
トレーニング施設にはFuel Stationという軽食をもらえる場所があります。バナナ、リンゴ、パイナップルなどのフルーツやプロテインバー、サンドイッチ、サラダなどが置いてあります。プロテインやスポーツドリンクもいつでも自由にもらえます。
また、チームに栄養士もいるので、アドバイスを貰うことも可能です。僕はカルシウムとビタミンDをサプリメントで摂るようにアドバイスをしてもらい、毎日その2種類だけは摂っています。
カレッジスポーツ観戦
大学スポーツはすごく人気で、アメフトやバスケットボールの試合になると何万人もの観客が入ります。アメフト、バスケ、バレー、野球を観ましたが、全てプロレベルですごく見応えがあります。アスリートはそのチケットを無料でもらえるので、休日にはチームメイトと一緒に応援に行ったりしました。
遠征
1年目はたくさん遠征に行かせてもらいました。トラックシーズンだけで、8回も行けました。遠征費(飛行機代、ホテル代、遠征先の食費)は全てチームが負担します。お金がもったいないから試合に出るのはやめよう、ということがなくてよかったです。移動はバスか飛行機です。バスで6時間くらいでいける範囲はバス、それ以上は飛行機です。飛行機は基本民間のものを使いますが、1度だけチャーター便に乗る機会がありました。貴重な経験をさせてもらえています。
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メディア
チームには専属のカメラマンがいて、練習風景や試合を撮ってもらえます。プロなのでかっこいい写真ばかりです。また、シーズンの初めにはプロフィール写真などを撮るMedia Dayという日があります。プロフィール写真だけでなく、自分の好きなポーズで写真を撮ってもらえます。
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奨学金(Scholarship)
競技レベルに応じてチームから返済不要の奨学金がもらえます。基本的に入学前にどれだけもらえるかが決まります。
学習について
一定のGPAを保たないと試合に出られないと前に書きましたが、成績をしっかり維持できるようなサポートがあります。例えば、アスリート専用のチューターが部活にたくさんいて、必要があればいつでもチューターに教えてもらうことができたり、アスリート専用のアカデミックアドバイザー(履修登録などのサポートをしてくれる方)がいて、履修登録を一緒にやってくれたりします。また、授業が練習時間に被らないようにするために、アスリートは一般の生徒よりも早く履修登録ができるシステムもあります。遠征とテストが被るときがありますが、その時はアカデミックアドバイザーが遠征についてきてくれて、遠征先のホテルでテストを受ける、なんていうこともあります。このように学習とスポーツを両立できるような仕組みがしっかりできています。
中長距離選手はぜひアメリカの大学へ!
最後に、中長距離選手はアメリカの大学に進学するのは結構良い選択肢なんじゃないかなと個人的に思います。まず、日本の高校生(特に男子)の中長距離のレベルは高いです。アメリカの強豪大に入って戦えるレベルの選手はたくさんいます。アメリカの高校生で800m1:50,5000m13分台で走れるような子はそう多くありません。
進学後は、800m, 1500mは層が厚くレベルの高い中で揉まれながら走ることができます。5000mもレベルは高いです。13分台はもちろんゴロゴロいるし、12分台も最近は出てきています。箱根駅伝のハーフマラソンに向けたトレーニングではなく5000mに向けたトレーニングに集中できるので、トラックを頑張りたいなら特におすすめです。また、秋は駅伝の代わりにクロスカントリーを走るので、それもトラックに生きてきます。駅伝よりトラックを頑張りたいな、と思っている選手にはめちゃくちゃおすすめな進路だと思います。
個人的には高校生の5000m13分台の選手がアメリカの大学で競技をする姿を見てみたいです。
さいごに
長い文章になりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
今はクロスカントリーシーズンの真っ只中です。800m1500m選手の自分にとっては8kmのクロカンはきついですが、芝生の上を本気で走るのは意外と楽しいです。
不定期ではありますがアメリカの大学の陸上競技について書いているので今後ともよろしくお願いします。