BIAS FX 2 Acoustic Expansion テストとレビュー
先日BIAS FX 2のアップデートについて諸々のバグ報告を行ったところ、Positive Grid本国の担当から「Acoustic Expansion Packのライセンスを送るから、試してぜひ感想を教えてほしい」ということでAcoustic Expansion Packが送られてきましたので、今回はBIAS FX 2 Acoustic Expansion Packのテストとレビューをしていきます。
僕はあくまでホメるもケナすも自由という立場でこの記事を書いていますので、あらかじめご承知おきくださいね。
BIAS FX 2 Acoustic Expansion Packの概要
Acoustic Expansion Packで追加されるのは以下の6種のエフェクターです。
Acoustic Image
Acoustic Preamp
Acoustic Simulator
Acoustic EQ
Acoustic Chorus
Acoustic Reverb
定価では6個で79ドル。エフェクターひとつあたり13ドル、ですね。
ひとつひとつ見ていきましょう。
EQ帯域についてはアナライザーを通して確認しましたが、ピークポイントなどは目安程度とお考えください。
Acoustic Image
アコースティックギターのボディ鳴りを付加するエフェクトと思われます。
BLENDツマミでドライ音に対してエフェクト音を混ぜていくことができ、全閉=0でドライ音100%、12時位置=5でドライ:エフェクトの比率が1:1、全開=10でエフェクト音100%になります。
3バンドEQは12dBのブースト/カットが可能で、効果帯域はLOWは500Hz以下にかかるローシェルビングタイプ、MIDは200-2.4kHzに渡るベルカーブ(ピークは800Hz付近)、HIGHは3kHz以上にかかるハイシェルビングタイプです。
ConcertからJumboまではボディが大きくなるにつれて順当に低域が増えて高域が抑えられていく程度の変化ですが、Piezoではちょっと詰まったようなアタック感があり、Bluegrassではトップの共鳴のようなアタックと中域の盛り上がりが付加されて面白いです。
Acoustic Preamp
アコースティックギター向けのプリアンプと3バンドEQ、コンプレッサーが一台にまとまったエフェクターです。
GAIINを上げるとチューブプリアンプ的なドライブ感が足されてきてミッドの張り出しが強くなってきます。
3バンドEQは18dBのブースト/カットが可能で、それぞれの効果帯域はLOWは200Hz以下にかかるローシェルビングタイプ、MIDは125-1.5kHzに渡るベルカーブ(ピークは400-600Hz付近)、HIGHは1.5kHz以上にかかるハイシェルビングタイプです。
コンプレッサーはCOMPとSUSTAINのツマミのみで、COMPの数値が3.0を超えるとVCAコンプのように露骨にアタックを潰してくれます。
また3段階のLO-CUTスイッチがついており、一番下のFULLを選ぶと200Hz以下を大きくカットされ、真ん中のMIDを選ぶと200-300Hz辺りがブーストされ125Hz以下がカットされます。
FLATの場合は特に影響はありません。
VUメーターはともかく、-20dBのPADスイッチや位相切り替えスイッチは果たして必要だったのかどうか不明です。
Acoustic Simulator
6パターンのボディタイプのサウンドを再現するアコースティックシミュレーターです。
Dreadnought2はカッタウェイ付きエレアコの再現のようで低域が少し抑えられています。
効果帯域はMIDは300-1.5kHz(ピークは750Hz付近)、TOPは3.2-16kHzで12dBのブースト/カットができます。
STRING ENHANCEは4k-8kHzをブーストしてアタックや弦鳴りっぽさを強調し、BODYは180Hzをピークに3kHzまでの広域に渡ってブーストし、箱鳴り感が付加されます。
90年代っぽいEQベースのアコースティックシミュレーターのサウンドに寄るので、PCM音源のアコギの音のような敢えてニセモノっぽいB級感が出したい時にはアリだと思います。
Acoustic EQ
シンプルな4バンドパラメトリックEQ、ブースト/カット量は±18dBです。
BASSは100Hz以下にかかるローシェルビングタイプ、TREBLEは2kHz以上にかかるハイシェルビングタイプです。
LOW MID TUNEは100-500Hz(ツマミ12時位置で300Hz)の範囲で、HIGH MID TUNEは500-2.8kHz(ツマミ12時位置で1650Hz)の範囲で自由に設定できます。
ツマミを一切操作せず、Acoustic EQを通すだけでも4kHzから上の帯域が若干持ち上がり、キラキラした成分が足されます。
Acoustic Chorus
BOSS CE-5にCE-1のようなビブラートを追加したコーラスペダルです。
低域と高域のコーラスの掛かり具合をいじれるので、低域のピッチが変に揺れてコードの響きが気持ち悪くなるようなこともなく、高域の煌びやかさが生かしやすいです。
わざとらしくないステレオの広がりと馴染みの良い揺らぎが作りやすいので割と好きです。
ただ、アコギ用エフェクトにビブラートスイッチが必要だったかはわかりません。
Acoustic Reverb
エフェクト内蔵型オンボードプリアンプやアコギ用練習アンプについていそうなシンプルなリバーブです。
REVERBツマミを回していくと特定のポイントでリバーブが掛からなくなり、次のモードに切り替わります。
ROOMはかなりデッドで、HALLもそれほど高さ方向の広がりは感じられませんが、AMBIENCEはモヤモヤした不思議な広がりを出してくれます。
TONEの効き方もクセはなく、おとなしい感じです。
OUTPUT LEVEL、となっている通りエフェクトレベルではなく全体のレベルを調整する形になるので、エフェクトオンでちょっと引っ込ませたり前に出したりがしやすいといえばしやすいです。
BIAS FX 2 Acoustic Expansion Packの総評
総評としては「あってもたぶん使わない。」というところでしょうか。
Standardライセンス以上であればGuitar Matchでアコースティックシミュレーターよりもリアルなサウンドを出せるようになってしまったので、DAWでのアイディア練りやレコーディング環境においてAcoustic ImageとAcoustic Simulatorを敢えて使う理由はほぼないと思います。
ただ現状Guitar MatchのオンオフはMIDI非対応なので、スタジオでのセッションやライブでBIAS FX 2を使っていて、曲中でエレキの音とアコギっぽい音を使い分けたくて仕方ない、という場合にはまだ出番はあります。
Acoustic PreampやAcoustic EQはエレキ用のブースターやEQをタンデムして音作りをするよりは手っ取り早いので、あればあったで便利な代物ではあると思います。
また、BIAS FX 2内のAcoustic Ampのヘッド部分をバイパスしてキャビ部分でアコースティックIRを読み込ませて音を作る場合、IRに入れる前にどうやって必要十分なゲインを得るかという点で結構手間を食うと思うので、この二つはそういった用途に際しては必須になるかもしれません。
Acoustic Chorusに関してはProfessionalライセンス以上に含まれるラックエフェクトのコーラス=Tri-Chorus HD Rackよりは薄口で、普通のChorusやChorus One、Rack Stereo Chorusよりはアコギに使いやすい自然な味があるという位置付けに感じたので僕は好きです。
Acoustic Reverbもチープさを良い具合に捉えられるならアリかなと思います。
Standardライセンスを使用するユーザーが上位ライセンスへのアップグレードよりも前にわざわざ有償エキスパンションに手を出すとは考えにくいですし、Professionalライセンス以上のユーザーなら他のエフェクターを駆使して代替えの音作り方法を幾らでも見つけられると思います。
定価79ドルの値段相応かと問われたら、内容に対して値段が高過ぎるとしか言えません。
セール価格で47ドルだとしてもAcoustic Preamp、Acoustic EQ、Acoustic Chorusは便利だからオススメですよ買いですよ、とは言い難いです。
モバイル版のBIAS FX 2にAcoustic Expansionを入れてあって、パッチのコンパチビリティがどうしても欲しい、という稀有なヘヴィユーザーでもない限りは必要のないエキスパンションパックだと思います。
ここまで読んでいただいた方は、タダで提供してもらったクセに偉そうに好き勝手言いやがってと思われたかもしれませんが、わざわざコレ使う?アコシミュいらなくない?というレベルのGuitar Matchを作り上げてしまったのは他ならぬPositive Grid自身なので、今となっては要らなくなってしまっただけ、としか言いようがありません。
2022年秋にこのエキスパンションパックが出たタイミングでは魅力的だったのだろうと思います。
僕は今までもモバイル版のBIAS FX 2をスタジオセッションなどに持ち込んでオーディオインターフェースとBluetooth MIDIコントローラーと組み合わせてバリバリ使っていたので、これはこれで使い道はありますが。
とは言っても身軽なセッション用や緊急事態用のサブ機材として、iPhoneやノートPCを使っているギタリストは少なくとも身の回りで自分と相棒以外見たことがないですから、あまり一般的とは言い難いですね。
iPhoneの処理能力も僕がASCII.jpで音楽系モバイルアプリの記事を担当していた頃に比べたら段違いに上がっているので、今後もっと広まっても良いんじゃないかな。
また別の記事で具体的な接続方法や設定のポイントなんかも紹介してみたいと思ってます。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
ご自身の音楽の役に立つ内容や、機材に対しての興味を持っていただける要素が何かしらあったなら幸いです。
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