ギター周りの機材の話 -手間を掛けずに音を変えるいくつかの方法-
僕がギターの音作りをする時に気をつけていること、今回は"手間を掛けずに音を変えたい場合"について、いくつかの方法を紹介したいと思います。
アンプのツマミやエフェクター、プラグインの設定はなるべくイジりたくないけど少し違う音を出したい、という時に試してもらいたい小細工になります。
「コイツはまた当たり前のことを言ってるなぁ」と思うかもしれませんが、少しの間お付き合いいただければ嬉しいです。
1.ピッキングの角度を変えてみる
一番手っ取り早くできるのは、ピッキングの角度を変えてみることです。
普段から順アングル気味に弾いているなら並行気味にしたりするだけでも音の立ち上がりは変わりますし、逆アングルにまで変えればアタックは柔らかくふくよかなトーンになります。
もし意識的にピッキングの角度や位置を変えるのが難しいと思ったら、ストラップの長さを極端に短くしたり、逆に極端に長くしたりして構えてみてください。
座って弾いていてストラップをつけていない場合には、ギターを乗せる脚を変えるか、足の組み方を変えてギターの高さを変えてみましょう。
ピックが弦に当たる角度が勝手に変わって音も変わるはずです。
慣れないフォームで弾きづらくても、そのピッキング方法が求める音に必要なピッキングかそうでもなさそうかくらいはわかると思います。
僕は基本的に若干逆アングル気味にピックを持って、ネックピックアップの中心辺りで弦に当てています。
BPMがある程度以上に速い曲は並行気味、エッジの立った細かい刻みやフルピッキングのソロなどを入れる場合は極端な順アングルに都度変えて弾いています。
曲のテンポに対して余裕があればなるべく出したいと考えている音に合わせてピッキングの角度を変えるようにしていますが、余裕がない場合は並行気味にしてしまうことは多いです。
またティアドロップかジャズシェイプのピック使用時くらいしかできない手段ではありますが、ピックの持ち方を90度回転させてピックの尖った面ではなくサイド部分の丸まった面でピッキングする場合もあります。
U2のエッジや彼の影響を多分に受けたと公言しているジョン・シャンクスはグリップ部分にデコボコがついたピックのサイド部分を使い、敢えてデコボコ部分を弦に当てることでチキチキとしたアタックを出していたりします。
僕も何度か真似っこしてみましたが、弦に擦れるあのチキチキが音も感触もあまり好きではなかったので、デコボコ付きのピックではなくグリップの滑らかなピックで柔らかい音を出したくなった時に側面を使う程度で取り込んでいます。
2.ピックを替えてみる
ピッキングの角度を変えるよりも簡単に音を変えられるのは、ピックそのものを替えることです。
ただしお金が最低100円くらいはかかります。
ピックの形状は同じ形で、厚みだけ違うものや素材だけ異なるものを選べば、持ち替えた後でも違和感は少ないと思います。
薄いピックで力強く弾くのと、厚いピックを軽く当てるように弾くのではトーンは全く変わってきます。
普段使っている厚みよりも一段薄いものと一段厚いものを比べるだけでもかなり印象が変わると思うので「いつものピック」に固執せず、色々試して状況に応じて使い分けてみると音作りの幅も広がるはずです。
僕は自分が持っているそれぞれのギターに合わせて使うピックをあらかじめ決めてあって、汎用的に使っているピックの他に、だいたい10種類くらいを常に用意しています。
薄いピックの方が高音がクリアに、分厚いピックの方が低音がしっかり出せるという程度の大雑把な見方はしていますが、僕はピックのしなりで自分の腕からの出力が逃げるのがイヤなのと、弦のビビりが目立たない範囲で強めのピッキングでバチバチ弾いているので、エレキでもアコギでも変わらず1.14mmのピックから始めて必要に応じて替えるようにしています。
3.シールドケーブルを替えてみる
ピッキングよりもピックよりも大きく音質が変わります。
ケーブルを差し替えるだけなので即効性がありますし、フィジカル面での違和感も修正や変更の努力も一切なくて済みます。
その分お金がかかりますし、アコースティックギターのマイク録音などではそもそも使えません。
まともな品質のシールドで3m以上なら大抵3000-4000円程度はかかるでしょうか。
フラットな特性と銘打って市販されているケーブルの中でも違いはありますし、特定の帯域を強調するように作られたケーブルなども出ていますから、いくつかの種類を持って特長を把握しておくと手っ取り早く音を変えられて楽ができます。
僕は普段使っているケーブルとキャラクターの異なるケーブルを4,5本用意しています。
これもまたギターの特徴に合わせてあらかじめ決めてあるものと、汎用的に使い回しているものです。
近年はデジタルワイヤレスも随分安くなったので音質の変わらないデジタルワイヤレスを録音で使うのもいいですが、若干のレイテンシーの問題もありますし、僕は自分の音作りとして「アンプやデバイスに入る前にケーブルで変わってくれる要素」が大事だとも考えているので 、状況的に可能な限りはケーブルで接続します。
ライブでワイヤレスを使う場合には、ワイヤレスの後ろにTC 1140というラックプリアンプ/EQを入れて調整してからAxe FX IIIに入れています。
これはワイヤレスの音質について僕が硬いと感じてしまう部分を和らげる為に使っているものです。
レンジの広いクリアな音質を敢えて古い機材で劣化させるなんてバカらしいと思われるかもしれませんが、僕にとってはどうしても手応えや耳当たりが違ってしまうので仕方ないことなのです。
デジタルワイヤレス用にパッチを用意してAxe FX IIIのブロックでEQを組み込んで操作するよりも即効性があり、要らないと思えば1140のEQバイパススイッチを押すだけ済むので便利です。
「コイツはまた当たり前のことを言ってるなぁ…」と思っていただけましたか?
大事なのは「誰かが何をどうするとこうなると言ってた」で終わらせず、自分がやったらこうなったとか自分にとってはこういう効果が得られた、ということを実感し、自分なりに理解しておくことだと考えています。
特にギターという楽器は押さえ方や弾き方、エレキギターならギターそのものとその後に介在するものによる違いが出やすく、またそれが面白いところでもあるので、自分なりに速効性のある方法をいくつか持っておくとより楽しめるのではないかと思います。
僕は一度セッティングを決めたらあまり大きくはイジらない方なので、レコーディングでも上で紹介したような方法で音を変えることが多いです。
もちろんデジタル機材の環境であれば新しいパッチを追加してしまえばいいのですが「だいたいこれでいいんだけどなんかちょっと違う」を埋めるためにブースターやEQを選んで操作するのは考えている以上に時間がかかります。
ギターを持ち替えてチューニングを確認してレベルを取り直して、というだけでも数分はかかります。
マイクを動かそうとブースに入ってマイクを動かして卓でレベルを取り直して、などとしていたらもっと時間がかかります。
IRデータなどをひとつひとつ見ていったらキリがありません。
そこまでしてやっぱり違うね、となればまた元に戻す作業に時間がかかります。
作業においては時間をかけても良い場面とそうでない場面があるので、ピック一枚持ち替えたり、ケーブルを差し替えるだけで話が済むならその方が楽でしょう。
単に怠け者なワケではなく必要な違いがその程度のことでも出せているんだとみてやってください。
自分一人の作業ならどうとでもすればいいですが、一緒に作業をする誰かが待っている中で、ちょっとしたことにああでもないこうでもないとやっている時間は、その場にいる誰にとっても楽しいものではないですからね。
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