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Fractal Audio Systems Axe-FX III Firmware 23(FW23.05) アップデート 概要紹介&レビュー

先日、Fractal Audio Systems Axe-FX IIIのファームウェアバージョン23のアップデートが公開されました。
FW23.00の公開後、バグフィックス版のFW23.01とFW23.02、AMPブロックやDRIVEブロックに新たなモデリングが追加されたFW23.03、バグフィックス版のFW23.04と続々更新され、12/6(火)現在ではFW23.05が最新版となっています。
本記事ではFW23.00からFW23.05に至るまでの更新内容をまとめてみました。
更新内容が多岐に渡る為、記事自体もかなり長くなってしまい見辛いかもしれませんが、あらかじめご了承ください。


アップデート内容について

FW23.00から順にリリースノートの内容と要点についてご紹介します。


FW23.00

  • AMPブロックのTriodeアルゴリズムの改善

  • Spring Reverbアルゴリズムの改良

  • REVERBブロックのアーリーリフレクションの改善

  • REVERBブロックに"Pre-Delay Tap"パラメーターを追加

  • Plate Reverbに新アルゴリズムを追加

  • 多数のReverbモデリングをアップデート

  • TREMOLOブロックの改良

  • Tape Delayアルゴリズムの機能向上

  • Tape Chorusアルゴリズムの機能向上

  • Controller LFOのアップデート

  • JS410 Leadアンプモデルのアップデート、JS410 Greenモデルの追加

  • "2x12 USA C90 Open Back"スピーカーインピーダンスカーブの追加

  • REVERBブロックにPitch High Cutパラメーターを追加

  • DELAYブロックのHigh CutパラメーターがModifierに割り当て可能に改良

  • CABブロック(Dyna-Cabモード時)にSmoothingパラメーターを追加

  • Channel切り替え時のタイムラグを短縮

  • Preset、Scene、Channel切り替えがギャップレス化。(Set Up画面のGlobal Settings→Gapless Changesから機能のオンオフが可能)

  • Euro Uberモデルのバグ修正


FW23.00アップデートの要点

FW23.00アップデートでは、主にSpring Reverbの機能向上をはじめとした、Reverb周りの改良が目立ちます。

Spring Reverbについて詳細を追ってみると、内部的には2種類のリバーブタンクを再現しており、British SpringモデルとStudio SpringモデルにはAccutronics Type 8のような3本のバネを並列に接続したリバーブタンクが使用されているようです。
もう一つはAccutronics Type 4やType 9のようにType 8と同等の長さの2本のバネを直列に繋いだセットを、2本あるいは3本並列に接続したリバーブタンクを再現しているようです。

参考資料として、実物は以下のような形状になります。

写真はAmplified Partsのウェブサイトからお借りしました。
Copyright 2023 Amplified Parts. All rights reserved.

Amplified Partsのサイトでは、実際のスプリングリバーブについて詳しい解説が載っていますので、興味があれば読んでみてください。

直列に繋がれたバネ同士の接続の強度はScatteringパラメーターで調整することができ、ヴィンテージのリバーブタンクで得られる減衰の速いルーズな響きを再現することも可能です。

バネの響きの広がり方はDripパラメーターで調整できます。

新規追加されたTube SpringモデルはFenderの6G15 Tube Reverbを再現、Studio Springモデルは長い6本のスプリングを並列に接続したスプリングリバーブを再現しています。

なお、Reverbブロックのアーリーリフレクションの項目が変更され、旧来のModulationパラメーターは省かれました。

Pre-Delay Tapパラメーターはエコーヴァーブサウンドを狙う場合には使いやすいでしょう。

Plate Reverbアルゴリズムはステレオスプレッドの調整がしやすく、またStar Warsの''Pew-Pew"音のような効果音も作れるようです。
Dispersionパラメーターで跳ね返りの強さを調整でき、クラシックなプレートリバーブを狙う場合、25-50%あたりがオススメとのこと。
ステレオ感の広がりはPickup Spacingパラメーターから設定できます。

TREMOLOブロックの改良については、まずOptical Tremoloのアルゴリズムが刷新されているようです。
Optical Tremoloは3タイプが用意されており、Optical Trem 1はDepthがLEDの明滅強度を設定するタイプのコンパクトトレモロ、Optical Trem 2はTrem 1よりも息継ぎ感が生まれ易いDepthがMixerポットにかかるタイプのペダルトレモロ、Neon Tremはブラックフェイスアンプのトレモロ部を再現しています。

JS410 Leadアンプモデルのアップデートについては、Marshall JVM410HJSの現行機種を元にした再モデリングを行い、JS410 Greenモデルが追加。
Crunchモデルについては実機と比較した際に特に大きな違いが感じられなかったようで、変更はなしとなっているようです。


FW23.01

  • CPU消費効率の改善

  • REVERBブロックでChannelを切り替えた際の不自然な音色変化、ギャップ発生を修正

  • LFOクオンタイゼーションの修正


FW23.02

  • ROTARYブロックのLFO動作不良バグを修正


FW23.03

  • CPU消費効率の改善

  • DRIVEブロックにNobels ODR-1をモデリングした"Nobelium OVD-1”、JHS Morning Gloryをモデリングした"Sunrise Splendor"、Mesa Boogie Flux Driveをモデリングした"Gauss Drive"の3モデルを追加

  • AMPブロックにBrit 800 2203、Brit 800 2204 Low、5153 100W Stealth、USA MKV Greenの4モデルを追加。(旧Brit 800モデルはBrit 800 2204 Highへ改称)

  • Speaker DriveとSpeaker Thumpの初期値を最適化

  • AMPブロックにNFB Compensationスイッチを追加

  • CHORUSブロック LFO 2の動作不良を修正

  • DRIVEブロック DS1 DistortionモデルのDistortionポットのテーパーを修正

  • AMPブロック Angle SevereのGainポットのテーパーを修正

  • AMPブロック USA JP IIC+ Greenのアウトプットパッドを修正

  • AMPブロック 1959SLP および Plexi 100W 1970の初期トーンスタックセッティングを修正

  • 各ブロックのEQグラフがチャンネルリセット後に正常に表示されないことがある症状の修正

  • Output Configuration項目がコピー操作時に上書きされてしまう不具合の修正


FW23.04

  • Brit 800 2203のNegative Feedbackパラメーターの修正

  • 5153 100W Stealth BlueのBrightスイッチ初期設定の修正


FW23.05

  • AMPブロックの全ての6160モデル、および5153モデルのPresenceコントロールのテーパーをより実機のレスポンスに近づけるように改良

  • FW23.00以降のTriodeアルゴリズムの改善に合わせた、既存プリセットのプリアンプバイアスポイントの更新

  • Gapless Switching機能の改良

  • Output 1 Configurationの設定がOutput2-4 Configurationの設定に上書きされてしまう不具合の修正

  • 5153 Stealthの設定ミスの修正

  • 本体フロントパネルでSceneを切り替えた際にScene MIDI GUIが正しく更新されない不具合の修正

  • その他いくつかの不具合修正および機能改善


FW23.03アップデート以降の要点

FW23.01/02アップデートはバグ修正が主でしたが、FW23.03ではオーバードライブモデル3種とアンプモデル4種の追加が行われました。
FW23.04、FW23.05はそれらに付随する不具合の修正が成されています。

オーバードライブモデルは、Nobels ODR-1、JHS Morning Glory、Mesa Boogie Flux Drive、と、ここ10年くらいの間に評価が上がってきた人気ペダルをモデリングしており、Nobels ODR-1については近年のリイシューモデルで追加されたBCスイッチの作用もBass Responseパラメーターで再現する凝り様です。
JHS Morning Gloryは元々Marshall Blues Breakerペダルのアレンジモデルですが、既に収録されているMarshall Blues Breakerモデルよりも派手目な印象です。
Mesa Boogie Flux DriveはKeith Urbanの使用でも有名なオーバードライブで、耳当たりの優しい非常に滑らかな歪みが得られます。

アンプモデルはJCM 800の100Wモデルである2203を新たに収録し、JCM 800の50Wモデルである2204はHighインプットとLowインプットのそれぞれが別個に収録されました。
さらにハイゲインアンプとして人気のEVH 5150 III 100W StealthとMesa Boogie MKVのGreenチャンネルも収録されています。


今回のアップデートで追加されたアンプやエフェクターのモデリングについては、少し時間を掛けて触った上でレビューを加筆していきたいと思います。
メインのアップデートが入って動作を確認している間に矢継ぎ早にアップデートが入り、それを触っている間にも次のアップデートが来て…という状態で、検証も自分なりの説明も至っておらず申し訳ない限りですが、それだけ仕事が早く、毎度目を剥くような新機能や改善を行ってくれるFractal Audio Systemsのエンジニアには頭が下がる思いです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
ご自身の音楽の役に立つ内容や、機材に対しての興味を持っていただける要素が何かしらあったなら幸いです。

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