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[機材レビュー]NUX B-8 Wireless System

1st0、Shiver of Frontierでギターを弾くRyoです。今回は10年ぶりくらいに更新したギターワイヤレスの使用感について書きます。忖度なしです。


ギターワイヤレスとは

 エレキギターとは、金属製の弦が揺れることによってコイルに発生する電流 (電磁誘導というやつである) を出力する楽器です。エレキギターから出力された微弱な電流はシールドケーブルを介してアンプに到達し、そこで増幅された電流がスピーカーが振動させることで音が鳴ります。従って、エレキギターとアンプがシールドケーブルによって接続されることで初めて一つの楽器として成立します。

 私が生まれる前の大昔の偉人たちは、巨大なホールにおいても時には数十メートルに及ぶシールドケーブルを引き回して演奏しておりました。しかし、エレキギターの信号を無線で飛ばす、ワイヤレスシステムが開発されたことによって、ギタリストはステージ上での自由を得たのです。

 当初のワイヤレスは音質面の問題があり、音作りを変えたり、妥協が必要だったと聞いています。ですが、21世紀も20年が過ぎた今はアマチュアでも購入できる金額で、十分な音質を持つ機器が増えてきました。

 かく言う私も10年くらい前にSHUREのGLXD16を購入して、ずーっと使っていたのですが、音質面で気になったことは無く、何度も充電池を交換しながら今に至っています (GLXD16は今では新機種GLXD16+に置き換わっているロングセラー品です)。短いシールドを送信機に挿して使うタイプ、所謂ボディパック型のワイヤレスはSHURE、Line6、BOSS、オーディオテクニカ、ゼンハイザーなど、錚々たるメーカーがリリースしています。では、なぜこのタイミングでNUXに置き換えてみたかをご紹介したいと思います。

NUXについて

 中国のエフェクターメーカーです。創業は2006年とのことで、結構息の長い企業ですね。エフェクター に限らず、アンプや電子ドラムなど色々取り扱っていいます。今はフロアマルチだとフルデジタルのものがフラッグシップのようですが、以前はCerberosというアナログの歪みとデジタルの空間系が組み合わさったマニアックな仕様のものもラインナップしていました。売っちゃったので手元に無いのですが、いいコンセプトだったので再販して欲しい。

https://www.nuxefx.com/home.html

 もちろんギターワイヤレスも取り扱っていますが、Xviveみたいなギターに直接送信機を挿し込むタイプのものでした。B-8はようやく出て来た本格派、真打登場と言ったところでしょうか。正直に言って、最初はあまりいい印象は持っていなかったのですが、レイテンシー (ギターを弾いてからワイヤレスの受信機で音声信号が再生されるまでの時間)が最短2.5 msと、めちゃくちゃ反応が速いところが気になってウォッチしていました。ついに、先日の1st0のライブにてSHUREのワイヤレスの音切れが発生し、やはり一回試そうと思い、人柱覚悟で購入したのがここまでの流れとなります。以下はいいところと気になるところです。

NUX B-8のいいところ

音切れしない

 SHURE GLXD16は通信帯を2系統用意しておいて、片方が通信できない時はもう片方でカバーする仕組みになっています。こうすることで安定したシグナルの伝送を可能としていますが、数多のワイヤレスシステムがひしめきあい、なんだかよく分からない電波も飛び交っているライブハウスのステージでは時々音飛びすることがありました。自分の場合、ジャンプした時に顕著だったのですが、NUX B-8は全く問題ありませんでした。特に、個人的にワイヤレスのトラブルが多いと感じる吉祥寺クレッシェンドで問題なく使えたのはかなり好印象です。

ジャンクションボックスにもなる

 ジャンクションボックスとは、エフェクターのケーブルの抜き差しを一箇所にまとめるために用意するインターフェースです。この手のものは高いものは高いのと、ワイヤレスとは別に用意しないといけないので使って来なかったのですが、NUX B-8はシグナルのループを持っているので、ジャンクションボックスとしても使用できるのがGoodです。

シールドケーブルも挿せる

 弾く前から通信が切れると思うバカがいるかよ、という話ですが、どんなワイヤレスでも通信が切れたり、送信機が故障するリスクはあります。そんな時はシールドケーブルに挿し替えるのですが、普通は

  1. ギターの送信機を外してシールドケーブルを挿す

  2. 受信機と先頭のエフェクターに繋がっているパッチケーブルを外す

  3. ギターに繋がるシールドケーブルを先頭のエフェクターに挿す

の3工程が必要になります。NUX B-8はシールドケーブルを直接挿して使うこともできる仕様になっているので、上でいう2を省いた素早いリカバリーが可能です。この機能はSHURE GLXD16+にも実装されており、後発メーカーらしさが見えますね。

送信機の充電が簡単

 ワイヤレス送信機は電池駆動 (当たり前だ) で、最近は充電式のものが多いです。大体はMicro USBだったりUSB-Cで、モバイルバッテリーでも充電できるのですが、如何せん面倒臭いのと、現場で送信機を忘れたことに気づく場合があります。一方で、NUX B-8は受信機に充電用の電極があり、送信機を重ねることによって充電することができます (もちろん、普通にUSB-Cケーブルでも充電できます)。使ってみると分かりますが、これはかなり楽で、送信機が行方不明になるリスクも無い素晴らしいデザインでした。ただ、無線充電ではないので、何年も使っていった時に電極がダメになる気もするので、要検証です。

XLRアウトがある

 ジャンクションボックス機能にも繋がる部分ですが、受信機にXLRのアウトがあります。これはラインでミキサーに送る時に何かと便利です。まだ使っていないので、これから試します。

NUX B-8の気になるところ

送信機が小さすぎる

 SHUREや他のメーカーのワイヤレスと比べると送信機がかなり小さいです。ESPから販売されているギターストラップに取り付ける送信機のホルダーだとスペースをかなり持て余すことと、シールドの挿す向きが合わないので使いにくいです。送信機についているクリップはなかなか強力ですが、ライブで使ったときに落下したので、ガムテープなどで固定する必要があります。これはなかなかダサいので何とかしたいところ。充電機能の関係でこのサイズになったのだと思いますが、先行品と規格を合わせてもらえるともっと使いやすくなったなぁ、という印象です。

送信機に挿すシールドの端子が独特

 ワイヤレスの送信機に挿す端子はミニXLRだったり通常の6.3 mmフォンだったりがあるのですが、NUX B-8はまさかの3.5 mmフォンです。これはなかなかに独特で、既製品のワイヤレス用のケーブルに6.3 mm - 3.5 mmのものはないのでメーカーから取り寄せるか自作するかの2択になります。うっかり断線させてしまった時に楽器屋さんですぐに購入できないのはリスクが大きいです。あと、NUXさんにはL字プラグのケーブルも出して欲しい。

充電池を交換できない

 上述の通り、自分は今まで充電池を交換しながらSHUREワイヤレスで10年戦ってきました。基本的に物持ちが良いタイプの人間なのですが、NUX B-8の送信機は見た限りでは充電池の交換はできない作りなので、定期的に送信機を調達することになりそうです。

チューナーの反応が遅い

 SHUREワイヤレスと同じく、NUX B-8の受信機にはチューナーとブースターの機能が実装されています。ブースターは単純なレベルブーストなのでそんなに機能の差を感じなかったのですが、チューナーについてはSHUREの方が圧倒的に反応が早いです。精度の問題はなさそうなのですが、かなり遅いのでライブ中のチューニングで使おうとすると少しイライラしてしまう人もいるかも知れません。レイテンシーが短いので今後のソフトウェアアップデートで改善されることを期待しています。

まとめ

 今回はNUX B-8 Wireless Systemについていいと思ったところと、気になったところをまとめてみました。総合的にはしっかりした作りで、ワイヤレスを試してみたい方にはお勧めできる機材です。

 皆様のギターライフがさらに輝きますように!!

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