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他人の悪意にフリーライド


 手に入らないものに執着する必然性がないと思っている心の貧しい人間なので、あまり特定のアイドルや俳優を推すという経験はしてこなかったが、サンリオキャラクター大賞にはなぜか投票していた。推しはポ◯ポ◯プリン。ここ最近は化粧をするとき、「プリンとマフィンのポムポムビート☆」を毎日聴いていた。おしりをふりふりするポムがかわいい。

 ほかに好きなキャラはいないので、web投票はポムのみに投入。最寄りのサンリオショップでポムのグッズを買い、チップも全てポムに捧げた。

 ついこの間、今流行りのサーティワンのポップ10を同居人に持ち帰らせ、それを一緒に食べながらオンラインで結果発表のライブを見た。同居人もポム推しである。

 結果は芳しくなかった。昨年2位だったポムは4位に陥落。4位、の数字とともに表示されたポムの画面に、リアルにデカい悲鳴を上げた。その後ショックで寝込んだ。2時間ほど。気持ちの良い昼寝であった。

 さて、人間としていろいろと終わっているわたしは考えた。現在5連覇を達成しているシナ◯ン氏を、一体どの層が推しているのか。海外人気か。この耳垂れ白犬め。犬なら散歩でもしていろ。ちなみにポムもゴールデンレトリバーの耳垂れ犬である。

 さて、ここからが人間の、否、わたしの醜い本質が露呈する。変顔をしながらシナ◯ンの優勝コメントを面白おかしくモノマネをしてみせて同居人の笑いを誘い、Twitterおよびブラウザにて、シナモンもう良いだろ、殿堂入りで良いから投票から外せよ、という趣旨の書き込みを読んで心を落ち着かせた。度胸はないので見るにとどめる。断じて書き込んではいない。わたしはいつだって卑怯者である。他人の悪意にフリーライドしているのだ。

 そしてそんな醜い行為を終え、ほとぼりが冷めてからこれを書いている今、賢者の気持ちになっている。ああ、キャラは何も悪くないのに、自分はなんて愚かなんだ。他キャラを下げないと推しキャラを上げられないだなんて最低だ。ポムだって、みんなのおかげで4位になれたんだ、とうれしそうにしているのに、と。

 いつだって醜いのはキャラじゃなくて人間だ。ごめんよ、シナ◯ン、きみだってがんばっているのにな。

 自分の精神の醜さを感じることが多い。おやつを持っていないとこちらに寄ってこない猫カフェの猫に対して失望することもある。この間はコインランドリーで、前の人がお釣り排出口に忘れていった100円玉5枚をそのままランドリーの投入口に入れて、500円割引で洗濯をしてしまった。人間不信なのでUber eatsの配達員にお礼を言えないこともある。ここで懺悔しておこう。わたしは、深夜2時の交差点で、かんたんに信号無視をしてしまう類の人間だ。基本的に魂の格が低いし、流されながら生きていくタイプである。

 こんなふうに、自身の醜さを露呈しては日々反省を繰り返している。ポム、どうかわたしを許してくれないだろうか。


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