涼読
『「流れゆく時、佇んだ場所、忘れるは大罪」』 こんな言葉をどこかで見た。 退院から1年を過ぎ記憶から消えそうな時に同窓会の便りが届いた 印刷の他に、ボールペンで「バイクで来ないでね」 季節は梅雨、バイク移動なら確かにあの時の二の舞になりそうだった。 『でもなんでバイク乗ってるの知ってるんだろう?』 「まあ、いいか」口癖の一つ 幹事は当時一番人気の女性 変わってない、 「事故ったでしょ?去年?」 「はい?」 「救急車呼んだの私だもの」「驚いたわよ、まさかねって、猫抱えてる
その晩、いろいろな事を話した、俺はもうすぐ結婚を控えている事、 仕事の事、 「涼は、相変わらず忙しいのね、」「早死にするわよ」 「入院患者にそれはないんじゃない?」 「大丈夫よ、それぐらいじゃ死なないからw」 笑いごとじゃないんだがな・・・ 彼氏は?の問いに、「どっかの誰かのせいで車好きな男は候補から外したわよ」 「こう見えても彼氏の一人や二人います!」 『何人も、はまずくない?』 そんな感じで話してるものだから当然病院にあるまじき会話音量となり 婦長登場・・・・
「涼、私はここよ、いい加減に起きなさい!」と少し年齢が経過した天使が頭上を飛び回る夢で目が覚めた ぼやけた視界が徐々にクリアになり天井を見つめ「ん?病院か、そうか転んだんだ」めまいがするな・・・ ふと布団の上にメモが「起きたらナースコール!」をと書いてあったので ナースコールをしながら思った『なんで命令口調なんだろう?』 まだふらふらする身体で車いすに座り先生の所へ行く途中 「全く昔からケガ多いんだから、しかも雨の日?雨の日は走らないんじゃなかったの?」 『うん、確かにケガ
「降ってきたな」 相変わらず雨の日は嫌い、今日は二輪だから余計に憂鬱になる。 免許を取って転んだのが雨の日が最初なので尚更トラウマになってしまっている。 「滑らなきゃ良いけど」と考えながら交差点に差しかかった所で白いものが飛び出してきたのと同時に ブレーキをかけたけどやはり・・・ 派手な火花を散りながら何故か「子猫か・・・・」避けながらスローモーションのように冷静に捉えることが出来たが 同時に猫に向かってバイクが滑って行く事に気が付く まずいなこれだとぶつかると思い手を伸
序章 名前は涼、「夏の暑い日に生まれたから名前だけは涼しく」 理解するには程遠い由来だが気に入ってる。 「ネエ リョウ ワタシ アメノヒハ スキ」 「アナタガ ハシリニ イカナイカラ」 翌日の夜僕たちの関係は終わった、 道路に飛び散った火花と直前まで聞いていたロータリーエンジンの 咆哮、湾岸の海の匂いを記憶に残して