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恋人との時間を失った今の僕<庵野モヨコ『監督不行届』(漫画)>

イマジナリーな恋人との時間を失ったのはいつからだろう。 僕はいつしか、霧島マナとの時間を過ごさなくなった。 シャルロット・デュノアとも、平沢唯とも恋人ではなくなっていた。 いざ意識的にそうしようと試みても、その*禁則事項です*は失敗する。 寂しいようで、*禁則事項です*のようで、なんとも整理できない感情がそこにはある。 *禁則事項です*が*禁則事項です*することによって、僕たちは無限の世界に*禁則事項です*することになるのだ。きっとそれは*禁則事項です*が与えてくれ

    • シンプルに求められているものを提供することが、許される時代 <セガ原作『ソニック・ザ・ムービー』>

      人気ゲームIPのハリウッド実写映画化。 過去何度となく企画が立ち上がっては途中で立ち消えたり、公開されては散々な惨状であったり……そんな歴史が繰り返されていた。 しかし、『名探偵ピカチュウ』などをはじめ、IP頼りの企画ではなくしっかりとした作品もぽつぽつ出てきたじめた昨今。本作=『ソニック・ザ・ムービー』は現れた。 シンプルな構造にキャラを落とし込む人間とマスコットの交流という作品は数多く存在し、そのプロットもあらかた決まったものがある。『名探偵ピカチュウ』はそのあたり

      • 【ネタバレ注意】あの日、14歳だった僕。<庵野秀明監督『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』>

        エヴァンゲリオンとは何か。 いくつか答えはあるだろうが、そのうちの一つは「呪い」だろう。 良くも悪くも、僕らは、庵野さんは、エヴァンゲリオンという呪いにかかっていた。 四半世紀の中。 個人としてそれぞれに様々な変化があったろう。その中で自らの力をもって呪いを打ち破った人も大いにいたと思う。 正直、僕もその一人だ。 僕は既に本質的にも概念的にも「14歳」ではなくなっていたし、さまざまなリアルとの関わりの中で個人として変容してきた。一定の答えを持つ「大人」になっていた

        • 正義と健康と野望の優先順位で苦しむ現代人は理性的と言えるのか <オリバー・ストーン監督『スノーデン』>

          学生時代にアニメーションスタジオ「WIT」の中武プロデューサーにお会いしたときに、 「早い、上手い、いい人。このうち2つあれば仕事は来ます」 と仰っていたことを今でも覚えている。 3つ揃っていれば最強ということではあるが、それはそうとして。すべてを同時に成立させることは難しい。 正義、健康、野望も同じくだと思う。 以下、僕の考える3つの言葉の定義。 正義:自身の価値観に於いて、自分を嫌いになるようなことをしないこと。 健康:自身の身体と心の状態を正常に保つこと。

        • 恋人との時間を失った今の僕<庵野モヨコ『監督不行届』(漫画)>

        • シンプルに求められているものを提供することが、許される時代 <セガ原作『ソニック・ザ・ムービー』>

        • 【ネタバレ注意】あの日、14歳だった僕。<庵野秀明監督『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』>

        • 正義と健康と野望の優先順位で苦しむ現代人は理性的と言えるのか <オリバー・ストーン監督『スノーデン』>

          成長を成長だと決めるのは誰なのか <東映『デジモンアドベンチャー』(1999年アニメ)>

          最近、フィクションにおける「親」の扱いについて考える機会が多々あった。 考え方は人それぞれだが、僕が最も嫌いなのは 「子供が親の愛情を理解していなかっただけで、親は正しかった」 という構図に落とし込まれているものだ。 この構図は僕が小さい頃には多用されてきたもので、 反発する子供 VS 自分のエゴを押し付ける親 子供の成長→「親は自分のことを思ってくれていたんだ!」 といって愛情に気づく的な三文芝居。 親のエゴについてはノータッチで子供側に問題があったかのような表現

          成長を成長だと決めるのは誰なのか <東映『デジモンアドベンチャー』(1999年アニメ)>

          ソリが合わない人間がいるように、ソリが合わない作品もある <高橋哲哉監督『ゼノギアス』>

          「捏造された信仰なんてものは、世界や、脆い人の心を補償するために出来たシステムなんだ。だがな、本当の神や信仰は、他人から与えられるもんじゃねぇだろ? 自分自身の中に見出すものだ。語らざるもの、表現されえざるもの、それが神じゃないのか? ”神は応えないもの”なんだ。俺が幼いお前に銃を教えたのは人を救うためだ。お前は、銃は人殺しの道具だと言うが違う。『銃』が人を殺すんじゃない。『人』が人を殺すんだ。」  ーージェシー 裏FF7とも評されるスクウェアのRPG。同監督が独立後に任天

          ソリが合わない人間がいるように、ソリが合わない作品もある <高橋哲哉監督『ゼノギアス』>

          ダークでクールなビジュアルをもってピエロを演じると、シンプルにカッコよくて面白くなる <ルーベン・フライシャー監督『ヴェノム』>

          物語が複雑化し、単純摂取的娯楽が「幼稚なもの」とみなされる昨今。しかし、その中身を冷静に分析してみると『鬼滅の刃』しかり『半沢直樹』しかり、小難しいように見せている要素はただのアクセサリーに過ぎない。物語の構造は至ってシンプル。 悪い奴がいる いい奴がいる 倒す これだけだ。それを批判するものもあるが、僕はそうしようとは思わない。物語とは自由であり、それを阻害する行為よりも唾棄すべき内容など極めて限られてくると思うからだ。 ダークと見せかけて王道という気持ちよさ『ヴ

          ダークでクールなビジュアルをもってピエロを演じると、シンプルにカッコよくて面白くなる <ルーベン・フライシャー監督『ヴェノム』>

          細かい目配せにオキシトシンどばどばなオタクのSAGA < マイケル・ドハティ監督『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』>

          別段僕は特撮オタクではない。だが、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が界隈での評価が非常に高いことはすぐに納得した。 チラチラ見られてる感じ渡辺謙演じるキャラクターの父が芹沢英二と言う名前であることなどは、おそらく意識的だろう。初代『ゴジラ』に出てきた芹沢博士の苗字と、特撮の神様・円谷英二の名前から取られていることは明白だ。他にも、僕は全く気づかなかったが墓に刻まれた名前に初代『ゴジラ』のキャストがあったりするらしい。 一方でオキシジェンデストロイヤーが「米軍が開発し

          細かい目配せにオキシトシンどばどばなオタクのSAGA < マイケル・ドハティ監督『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』>

          どうでもいいことが大事とは言うが、大事じゃないどうでもいいことも普通に多い<消費増税反対botちゃん『マンガでわかる こんなに危ない!? 消費税』>

          最近「マンガでわかる」的なやつにハマっている。本を選ぶときに気を遣う必要はあるけれど、それさえクリアすれば内容の大筋をさらうのにちょうどいいからだ。 「一度も読んでないけど、私の中では読破したっぽいフンイキになっている!」 ーーバーナード嬢 このマインドを忘れてはいけない。原文を読んでいないと言う意味で一定謙虚になる必要はあると思うけど、必要以上に萎縮する必要はないと思う。 「どうでもいいこと」とは、「どうでもいいこと」のことだ情報は主観なしにありえない。なので「どうで

          どうでもいいことが大事とは言うが、大事じゃないどうでもいいことも普通に多い<消費増税反対botちゃん『マンガでわかる こんなに危ない!? 消費税』>

          親の方をちらちら見ながらじゃないと動けないことに腹が立つ<吾峠呼世晴原作『鬼滅の刃』(アニメ)>

          ここまで話題になると見ないわけにいかなくなる。そして見た。なんというか、これが流行っていることを理解できない自分に絶望してしまった。あまり長く書くとヒートアップして炎上しそうなことを書きそうなので一点だけ文句を言いたい。 なんでいちいち親にお伺いを立てるんだよ!見出しでオチてるんだけど、そういうこと。 ねずこが覚醒するときも。 たんじろうが決意を固めるときも。 ねずこが血の乾きに耐えるときも。 なんでいちいち親がフラッシュバックしてくるんだよと。お前ら二人のこされた

          親の方をちらちら見ながらじゃないと動けないことに腹が立つ<吾峠呼世晴原作『鬼滅の刃』(アニメ)>

          新一万円に渋沢栄一が選ばれたのって結構善良な理由なのかなって思ったりしたんです<近藤たかし漫画『漫画版 論語と算盤』>

          『論語と算盤』を原書で読んでないので、うすーい知識であるという前置きをしておく。そこから受け取ったメッセージも邪推です。 「徳川慶喜? ああ大政奉還した人ね」 みたいな知識がつくのが『漫画版 論語と算盤』かなと思った。渋沢栄一を「資本主義の父のえれー人」くらいしか知らない人間が最低限を知るにはちょうどいい入門だと思う。 資本主義なのに倫理を語るんか 現代の資本主義では、労働者は搾取され、人は富のために疲弊している。 というのがまあ問題点として最近叫ばれるわけだが、資本

          新一万円に渋沢栄一が選ばれたのって結構善良な理由なのかなって思ったりしたんです<近藤たかし漫画『漫画版 論語と算盤』>

          毒にも薬にもならない時間<福田雄一監督『50回目のファーストキス』(映画)>

          ただその時間を楽しむ。 そんな単純なことができなくなったのはいつからだろう。資本主義社会の中で競争に勝とうと躍起になればなるほど、エンタメもただの娯楽ではなく勉強になる。 時間に追われ。 成果に追われ。 今の自分に何があるのかを常に問い直す。 よく「現代人は考えることに疲れているから、考えなくていいエンタメが流行るんだ」などと批判的文脈で流れてくる。 まあ、言葉単体で言えば正しいんじゃないかと思う。 ただ、「現代人は常に考え、気を張っているからエンタメの時間は休み

          毒にも薬にもならない時間<福田雄一監督『50回目のファーストキス』(映画)>

          ハゲ。<大和田秀樹『「ガンダム」を創った男たち。 上下巻』(漫画)>

          尊敬するクリエイターの中で、何かの幸運に恵まれて仕事を一緒にできることになっても嬉しいとは言い難い人という方が何人もいる。富野由悠季監督もその一人だ。見聞きする情報だけでの判断だが、多分、つらい。 もはや存在そのものが尖ったアニメキャラな富野節どうしても噂などがベースの話になるので、気になった人はググったり、ニコニコ大百科でも見るといい。それだけでお昼休みが潰れている事だろう。とにかく痛快……というか、一貫して自身の価値観をブレさせず・歯に衣着せず発言する姿が清々しい。

          ハゲ。<大和田秀樹『「ガンダム」を創った男たち。 上下巻』(漫画)>

          運動嫌いのオタクが毎日運動できるようになったワケ。『筋肉体操』は最強の無料コンテンツ!<サンドロビッチ・ヤバ子原作『ダンベル何キロ持てる? 1』(漫画)>

          結論から言う、運動習慣がついた理由は『リングフィットアドベンチャー』だ。ただし、毎日運動している今の僕は『リングフィット〜』をやっていない。 行き着いた先は「1日10分のNHK『筋肉体操』」だ。 僕が毎日運動できるようになったプロセスすべてを省かずに書くので、少々長くなるが、テレワークで運動不足になり、健康維持の運動習慣をつけたいと思っている全ての人に読んで欲しい。 まずは毎日運動するサイクルをつける毎日運動をするサイクルをつけるのに、『リングフィット〜』は最適だった。

          運動嫌いのオタクが毎日運動できるようになったワケ。『筋肉体操』は最強の無料コンテンツ!<サンドロビッチ・ヤバ子原作『ダンベル何キロ持てる? 1』(漫画)>

          神をも冒涜する12番目の理論を用いて、僕はアトラクタフィールドの収束に抗ってきた<志倉千代丸原作『Steins;Gate 0』(アニメ)>

          僕はドクターペッパーを愛飲している。今となっては味がクセになっていて、一種の中毒的な嗜好となっている。しかし、飲み始めた当時は完全に無理をしていたことをここに白状する。正直コカコーラの方がウマくねと思っていた。が、毎日飲み続ける事数ヶ月。身体がドクぺを求めるようになっていた。ヤバい薬でも入っているんじゃなかろうか。 僕がドクぺを無理にでも飲み続けたモチベーションは無論本作の原点にあたる『Steins;Gate』だ。中二病バキバキの設定を、中二病バキバキと白状しながら展開し、

          神をも冒涜する12番目の理論を用いて、僕はアトラクタフィールドの収束に抗ってきた<志倉千代丸原作『Steins;Gate 0』(アニメ)>

          時代に適応させるべきか否か、という問題の是非。それはそうとして若いジジイはカッコイイ<すがやみつる作『ゲームセンターあらし 炎のベストセレクション 1』>

          時代とともに価値観は変わる。「笑えること」として許せていたものが「笑えないもの」となることもままある。いわゆる「古き良き」なんて枕言葉をつける類のものは大概一般的に「笑えないもの」になってしまったものであろう(雑にくくってる自覚はある。すまん)。 ***もうちょっとこの価値観に関する話が続くけど、最終言いたい内容には全然関係ないです。*** 作家が作品を「殺さない」自由人により是非もあろうし、その是非を断じることがしたいわけではない。 僕の意見としては、出版物におけるこの手

          時代に適応させるべきか否か、という問題の是非。それはそうとして若いジジイはカッコイイ<すがやみつる作『ゲームセンターあらし 炎のベストセレクション 1』>