不器用な告白
高校2年の夏。
〇〇はクラス替えで新しく同じクラスになっていた山崎天に目が留まった。
クールで無口な印象が強い彼女は、一見すると近寄りがたかった。
しかし、その無表情の奥に時折見せる少し抜けた表情や、不器用さが〇〇には妙に気になった。
文化祭の準備が本格化し始めた9月、𓏸𓏸と天は偶然同じ実行委員になった。
〇〇は彼女が頭が良さそうに見えるものの、少し手際が悪いのに気づき、そっとサポートすることが増えた。
〇〇:天さん、これ、ポスターのデザインやけど、ここちゃう?ちょっと字が読みにくいかも。
〇〇が声をかけると、天は少し眉をしかめた。
天:あ、ほんまや…。ありがと、〇〇くん。
〇〇:いや、別に。俺も手伝うし、一緒に頑張ろう。
天:うん、…助かるわ。
天は少し照れたように関西弁が出てしまったが、それを気にする様子はなかった。
一緒に作業するうちに、〇〇は天の意外な一面を知るようになった。
彼女は完璧主義に見えるが、意外とそそっかしく、計算ミスや段取りをよく忘れることが多かった。
〇〇はそんな天に惹かれていった。
文化祭当日、二人はクラスの企画で忙しく走り回っていた。
天がメインの司会を担当していたが、焦ると緊張して言葉が詰まることもあり、〇〇はそのたびにフォローしていた。
〇〇:天さん、落ち着いて。次は俺が行くから。
天:…ごめん、ほんまにありがとう。
彼女が小声でそう言ったとき、〇〇は心の中で彼女を守りたいという感情が強く湧き上がった。
そして、〇〇は自分の気持ちに気づいた。
――彼女が好きだと。
文化祭が終わった日の放課後、〇〇は天に声をかけた。〇〇:天さん、ちょっと話があるんだけど…。
天は少し驚いた顔をしたが、〇〇についてきた。
屋上に着くと、〇〇は少し緊張しながら彼女に向かって話し始めた。
〇〇:天さん、俺、ずっと君のことが気になってて…。最近、それが好きって気持ちだって気づいたんだ。だから、君に伝えたくて…。
その告白に天は驚いた表情を隠せなかった。
天:…え、私のこと?
〇〇:うん。君の不器用なところとか、頑張ってるところとか、全部好きなんだ。
天はしばらく黙っていたが、やがてぽつりと言った。
天:私、頭よくないし、どんくさいし…。そんな私のどこがいいん?
〇〇は笑った。
〇〇:そんなことないよ。天さんは、みんなをまとめようとしてるし、頑張ってる。それに、君のこと見てると、俺も頑張ろうって思えるんだ。
天は少し考え込むようにしてから、
天:…ほんまに?
と、彼の顔をじっと見た。
〇〇:うん、ほんまに。
天:…そっか。でも、ごめん。まだ自分の気持ちがわからへんねん。
天は申し訳なさそうに言った。
〇〇はその返答に少し戸惑ったが、すぐに微笑んで
〇〇:大丈夫。俺、待ってるから。
と答えた。
その後、二人の関係は特に変わらず、クラスメイトとして自然に接していたが、〇〇の中で天への想いは変わらなかった。
ある日、教室で天が守屋麗奈と藤吉夏鈴、田村保乃と一緒に話している場面に〇〇は出くわした。
保乃がいつも通り天をからかっていた。
保乃:なぁ天ちゃん、〇〇くんと最近なんかあるんちゃう?文化祭のときも、よう一緒におったし。
天:そ、そんなんちゃうし!ただ一緒に委員やってただけや。
天は焦りながら弁明するが、夏鈴がニヤリと笑う。
夏鈴:ほんま?〇〇くん、天に結構優しかったよな。
天:そんなん…普通やろ…
天は頬を赤くして、言い訳を続けた。
〇〇はそんなやり取りを遠くから聞いて、心の中で微笑んだ。
彼女がどう感じているのかはわからなかったが、少なくとも彼女の中でも自分の存在が何かしらの意味を持っているのではないかと期待した。
冬の寒さが少しずつ感じられるようになった頃、天は〇〇に突然連絡をくれた。
放課後、再び屋上に呼び出された〇〇は、天が真剣な表情で自分を待っているのを見て少し驚いた。
天:〇〇くん、前に言われたこと、ずっと考えててん。でも、私、どう言ったらいいか分からんくて…。
〇〇は天の言葉を静かに待った。
天:私も、〇〇くんと一緒にいると楽しい。だから…その…好き、やと思う。
天は言い終わると、顔を真っ赤にして視線を逸らした。
〇〇はその瞬間、心が跳ね上がるのを感じた。
〇〇:本当に?ありがとう、天さん。
天は頷きながら
天:うん…。
と答えた。
〇〇は思わず微笑み、彼女を安心させるように
〇〇:これからも、よろしくね。
と言った。
二人はその後、ゆっくりと歩き出し、冬の風が二人の間をそっと包んでいた。