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負けヒロインをお寿司かない!!

金村美玖は、幼稚園の頃から〇〇に片思いをしている。小さな頃、いじめにあっていた美玖を助けてくれたのが、〇〇だった。彼はいつも変わらず優しく、どんなときでも美玖を励まし、そばにいてくれた。小学校から高校、そして大学まで同じ学校に通い続け、家も隣にある。近い距離にいるはずなのに、その想いは一向に届かないままだ。

陽菜:美玖〜、また〇〇君のこと見てたでしょ?

親友の河田陽菜が、ふわっと笑いながら話しかけてくる。彼女はどこかふわふわした存在で、恋愛には疎い。それが逆に美玖にとっては心地よかった。

美玖:見てないよ…
陽菜:ほんとに?
美玖:ほんとに!

美玖は顔を赤らめて否定したが、実際には〇〇のことを考えずにはいられなかった。幼い頃からずっと側にいた彼が、いつか自分に振り向いてくれるのではないか。そんな淡い期待を胸に抱き続けていた。

一方で、〇〇と同じく、小学校からの友達である小坂菜緒は、美玖とは対照的にモテ続けていた。菜緒は物静かな性格だが、誰に対しても優しい。彼女が関西弁で話す姿には、周囲の男子も女子も癒されていた。

菜緒:美玖、あんたまた悩んでるん?〇〇のこと…

関西弁でふんわりと問いかけてくる菜緒は、〇〇に対してもずっと片思いをしていた。物静かな彼女が唯一心を開ける相手が〇〇だった。彼の優しさに触れるたびに、菜緒の心もまた、〇〇への想いを深めていく。

ただ、菜緒は告白したことがない。モテるということを分かっていても、自分から誰かに想いを伝えることがなかった。何度も告白されてきたが、すべて断り続けている。

菜緒:ほんま、あんたもそろそろ動かんとアカンで…

美玖:分かってる。でも、怖いんだよ

〇〇と美玖、そして菜緒。この三角関係が大学生活を通して続いていた。

ある日、大学のキャンパスで偶然〇〇と出会った美玖。今日は何かが違う。胸の鼓動がいつも以上に速くなっているのを感じた。

美玖:〇〇、ちょっと時間ある?

〇〇:うん、どうしたの?

久しぶりに二人きりで話す時間が訪れた。幼稚園からの幼なじみであるはずなのに、どこかぎこちなく感じるのは、美玖の気持ちが日に日に強くなっているからだ。

美玖:あのね、ずっと言いたかったことがあって…

〇〇:うん?

美玖の声は震えていた。彼に片思いしてから、ずっとこの瞬間を待っていたのだ。

美玖:私、〇〇のことが好き…ずっと前から、ずっと…

〇〇は一瞬驚いた表情を見せたが、その後に優しい微笑みを浮かべた。

〇〇:ありがとう。でも…ごめん、菜緒のことが好きなんだ

その言葉に美玖は立ち尽くした。〇〇の答えは、自分が一番怖れていたものだった。しかし、その一方で、どこか予感していた答えでもあった。〇〇はずっと菜緒を大事にしていたし、そのことを美玖も知っていた。

美玖:そっか…やっぱり

涙がこぼれそうになるのをこらえて、美玖は微笑んだ。

〇〇:ごめんね、でも美玖とはこれからも友達でいたい

美玖:うん、ありがとう。私も、友達でいい

その日は、夕方まで二人で静かに話を続けた。美玖の心の中にぽっかりと空いた穴は、時間が癒してくれるのだろうか。

その後、〇〇は菜緒に告白した。菜緒もまた、彼のことをずっと好きでいたが、なかなかその想いを伝えることができなかった。しかし、彼の真剣な告白に応え、二人は付き合い始めた。

美玖は、彼女自身の片思いが成就することはなかったが、〇〇と菜緒が幸せになる姿を見て、少しずつ心の整理がついていった。

「負けヒロインをお寿司かない!!」

美玖は、そんな自分の状況を軽口にして笑った。そして彼女の周りには、いつもの親友である菜緒と陽菜がいて、また新しい日常が始まろうとしていた。

その後、〇〇と菜緒の関係は順調に進んでいるように見えた。美玖も二人の仲を祝福しつつ、心の奥に押し込めた感情を抑え込む毎日を送っていた。彼女にとって〇〇は特別であり、これからも「大切な幼なじみ」として付き合っていく覚悟を決めた。

しかし、〇〇は少しずつ心の中に違和感を覚え始めていた。菜緒との時間は楽しい。彼女の優しさや包容力に惹かれているのは確かだ。それでも、ふとした瞬間に思い出すのは、美玖との時間だった。

菜緒:〇〇、何かあったん?

菜緒は、〇〇が自分との会話中に美玖のことを考えていることに気づいていた。いつも彼の心の中には、美玖がいる。それを分かっていながらも、菜緒はその事実を見て見ぬふりをしていた。

〇〇:ごめん、菜緒…俺、美玖のことが大切なんだ

そう言って、〇〇は菜緒に別れを告げた。菜緒は一瞬黙り込んだが、すぐに笑顔を見せた。

菜緒:そっか、やっぱりそうやったんやな…。あんたら、ほんまに幼なじみやしな。私も気づいとったで、〇〇の気持ち

菜緒は、〇〇の決断を受け入れた。彼女は強い女性だった。どんなに〇〇を想っていても、彼の幸せを考えれば、美玖のことを想う気持ちに勝てないことを理解していた。

菜緒:美玖のこと、ちゃんと幸せにしたってな

〇〇は、その足で美玖のもとに向かった。夕暮れ時のキャンパス、二人は静かな教室で向かい合っていた。

美玖:どうしたの、〇〇?菜緒とはどうだったの?

〇〇:美玖…俺、気づいたんだ。美玖が一番大切な存在だって。ずっと、ずっとお前のことが近くにいるのが当たり前だと思ってた。でも、それだけじゃなかった。俺は、美玖を失いたくないんだ

その言葉に、美玖の胸は高鳴った。長い間、心の奥に閉じ込めていた想いが一気に溢れ出す。

美玖:本当に、私でいいの?

〇〇:美玖じゃなきゃダメなんだ。これからもずっと一緒にいたい

美玖は涙を浮かべながら、〇〇の言葉を聞いていた。そして、ついに彼女の片思いは報われたのだった。

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